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Summer visit  作者: スカフィ
25/50

024⇒琴美の決『断』

今日は日曜日。


せっかくの休みというのにわたしはいつもと同じ時間に起きた。

あまり体調も良くないが、眠れそうにないので起きるしかないのだ。

カーテンを開けると外は冬だというのに日差しが眩しく暖かかった。


「ふぅ。さて、今日は買い物でも行って気分転換しようかな?」


わたしは部屋を出て、朝食を食べ、出掛ける準備をした。


「普通だったら、デートとかしてる年頃なんだよね。何やってんだろ、わたし…」


わたしは独り言をブツブツ言いながら、タンスを開けた。



「外を出たのは、いいけど、何処に行けばいいんだろう?

何も考えてなかったや。とりあえず洋服でも見るか。」


わたしの住んでる住宅街のはずれには若者ばかりのストリートがあって、

そこにはたくさんの店が並んでいる。


この不景気の中どの店も繁盛していた。


「相変わらず人が多いなぁ」


あまりの人の多さに少しわたしはひいたが、逆に気が紛れて悪い気はしなかった。

色んな店を廻ってる時、ふと奥に見覚えのあるカップルがいた。



…そう、あかりとナオキくんだった。



「…あ。」


わたしは、ふと足を止めた。


向こうはわたしに気付かず、二人で仲良く寄り添いながら歩いていて洋服屋に入って行った。

わたしは声を掛けようと、二人の後を追ってその洋服屋を覗いた。


当たり前だけど、そこには理想のカップルがいた。


普通の男と女。


お互いを必要とする存在。


自分をさらけ出せる存在。


わたしには羨ましい存在だった。


二人に入ることの出来ないわたしは声を掛けるのを諦め、そのまま店を出た。



すると、



「ナツキちゃん!」


「………!?」


振り向くとナオキくんがこっちを見ながらゆっくりと近づいて来る。


わたしは何となく恥ずかしくなり


「めずらしいね。こんなトコで会うなんて。今、あかりも一緒なんだ。」


「うん。さっき二人でいるの見たよ。邪魔しちゃ悪いから声を掛けなかっただけ。」


「水くさいなぁ。そんなの気にしなくていいって!」


「うん。」


「…どう?一緒に遊ばない?」


「−え!?邪魔しちゃ悪いよ。」


「別にいいよ。いつも二人でいるし、たまには。」


「ううん。いい!」


わたしは思いっきり拒否した。


「あれ?ナツキ?」


あかりが店から出て来た。


「なあ、あかり。ナツキちゃんと一緒に何処か行こうや。」


「うん。いいよ。」


あかりはあさっさりとOKを出した。


「ありがと。でも今日はこれから用事あるからさ。二人で楽しんでよ。」


「そうなんだ。じゃあ仕方ないな。」


あっさりと引き下がるナオキくんに少し寂しさを感じながらも


「うん。ごめんね。じゃあね…」


わたしは二人が見えなくなるまで急いで歩いて行った。



タッタッタッタッ…


「絶対、嫌だ…やだ……」


わたしは二人の間に入る事は絶対避けたかった。


今のわたしには二人には眩し過ぎるからだ。


しばらく歩いていると、ある家族を見掛けた。


それは琴美の不倫相手、村山先生と奥さん、その子供の三人だった。



「……あ。」




村山先生は学校とは違う父親の顔をしていた。


わたしは父親がいない。


誰かわからない。


もし、あんな父親がいたら理想だろう。そんな感じがした。


…不倫さえしなければ…。


どうして…男の人は一人の女性じゃ満足できないんだろう。


あんな綺麗な奥さんがいて子供もいるのに。


何が不満なのだろう。



わたしはただ突っ立って先生を見ていたら、先生はわたしに気付き、


「ナツキじゃないか」


わたしに近づいて来た。


「買い物か?」


「あ・はい…」


「はは。私服は初めてみるな。」


「そうですね。今日は暖かいし…」


「はは…暑いよな?」


わたしはいつもより薄着だったせいか、先生はわたしの体を舐めるように凝視していた。


…すごい嫌な感じがした…


「後ろにいるのは、先生の家族ですか?」


わたしの一言に先生はハッと言うような顔して我に返り、


「…ん。今から家族で飯食いに行くつもりなんだ。」


「ホラ、早く行ってあげて下さい。待ってますよ。」


「ああ。また学校でな。」


先生はまた、わたしの体を見ては笑顔で家族の元へ走って行った。


奥さんと子供はわたしに軽く会釈して三人で奥へと行った。


「……………。」



その光景を琴美は見た事があるのだろうか?


今となっては子供は出来てしまった。


そんな状況の中 村山先生が平気で家族と仲良く出来る神経にムカついたわたしは何だか街をウロつく気も失せ、家に帰りたくなった。


外は外で居心地悪かった。


家に帰ろうと路地裏を通ってたら、そこに小さな産婦人科があってその横をわたしは歩いていた。


「ナツキ…!」


その声の方を向くと、病院の前に琴美が立っていて、今にも入ろうとしてた所だった。


「…琴美…。」


琴美はわたしに近づくなり泣き出した。



「嫌だ!嫌だよ!ナツキ!私…堕ろしたくない!どうしたらいいの!?」


琴美は今から病院で子供を堕ろすつもりだったらしい。


「琴美…残酷な事言うようだけど…わたしは堕ろした方がいいと思う。

だってさっき見たの。先生が家族と仲良く街歩いてるところ…。

琴美の事を全然気にしてないよ!わたし今日見てはっきりわかったよ!」


「…………。」


「琴美…。わたしも一緒に病院付き合うから…。ね?そうしよ?」


「………うん。」


わたしは琴美の手を引っ張り、病院の中へ入って行く。



病院の待合室でわたしと琴美は手を握りあっていた。


琴美の手はかすかに震えていて、わたしにも緊張が伝わってきた。


「琴美さん…」


看護婦さんが名を呼ぶ。


琴美はそれに反応する様に立ち上がり、歩き出す。


そして、わたしの方を見た。

わたしは静かに首を縦に振ると、琴美も同じ様に応えた。


そして、姿は見えなくなった。





「琴美…気分はどう?」


「どうって…最悪よ…」


全ての作業が終わってからの会話だった。


「あ・ねえ!来週はクリスマスじゃない!?私達でパーティしようよ!ね?」


「……うん。」


「じゃあ決まり!場所はわたしの家でどう?あかり達は…邪魔しちゃ悪いから何も言わない方がいいかな〜」


「……私、夢だったの。好きな人とクリスマス過ごすの…。

いつか好きな人がいて子供がいて…家族で過ごすの。

…でも、もう子供もいない…好きな人には振り向いてもらえない…」


「琴美…今はツライと思うけど…がんばってよ!わたし応援してるから!」


「だったらどうして応援してくれなかったの!?子供産む事に!

もういないのよ!?せっかく授かったのに!!」


「………。」


「ごめん。ナツキは私の事考えて言ってくれたんだよね?」


「…いいの。わたし…琴美に本気で人を好きになった事ないの?

って聞かれた時、何も言え無かった。

だって人を好きになる気持ちがわからないから…。

だから平気で子供堕ろせって言えたのかも知れない。

でもね!あの先生は琴美の事を大事にしてないの確かなのよ!今日だって…」


わたしはさっき、舐めるようにわたしの体を見てた村山先生の顔を思い出した。


「ナツキ…もう、ここでいい一人で帰れるから。今日はありがと。」


「え?うん。」


「また明日ね。」


「うん。明日」


わたしと琴美はここで別れた。


気がつけば、少し北風が強まり寒くなっていた。


「さむっ…!」


わたしは急いで家へ向かった。


翌日、昨日とは変わって朝から雪が降っていた。


あまりの寒さに学校までの道のりがしんどかったかったが、無事にいつもの時間に着いた。


だが、琴美の姿はなかった。


何だか切ないですなぁ〜…

よろしければ、感想下さいな〜!

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