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Summer visit  作者: スカフィ
23/50

022⇒久『し』ぶりの会話

「ごめんなさい。急にこんな事を話して

もしかするとあんたの母さん…近い内あなたに話するつもりだったのかも知れないわね。

…だけど…言えなかった…だから思い余って…

アルコールが検出されたから、酒の力を貸りて…」


「………。」


わたしはただボッ〜としていた。

叔母は吸っていたタバコを消すと立ち上がる。


「じゃあ私は帰るけど、あなたは大丈夫なの?」


「…うん。」


叔母をわたしに近づき額にキスをした。


「うふふ…」


叔母は少し照れ臭そうに笑ってた。


「うふふ…思い出しちゃった。」


「なにを?」


わたしは問いかける。


「あなたの母さんの顔よ…すごく驚いてたわ…すごく青ざめてた。」


「……?」


わたしは妙な胸騒ぎがした。


「だってそうでしょ?

ナツキの口からそんな言葉が出るなんて…必死に隠してたのに…」


「……え!?」


叔母はくすくすと小さく笑い出した。


(−違う!叔母じゃない…!? )


わたしがそう思った瞬間、叔母は言った。


「やっと気付いた?そうよ奈津子よ!アンタと直接話すのは久しぶりかしら?」


「ねぇまさか…母が自殺した理由ってあなたがわたしの中に入って母に言ったの!?」


「ピンポーン♪言ったわ!あなたの口から!

あなたのお母さんの心の奥底にしまっていた思いでをこじ開けちゃった!きゃはは…」


「……!」


「あんたも可哀相よね〜!レイプされて出来た子供なんて…どう?真実を知った気分は?」


奈津子は笑ってた。


心から…。


「奈津子さんあなた…本当はあの日…死ぬつもりだったんでしょ?

わたしがあなたをまちがえて押してしまったのは悪かったと思ってる!

わたしを憎むのは仕方ないわ…。

でも…関係ない人まで巻き込むのだけはやめてよ!お願いだから…」


わたしは膝をつくと泣きながら奈津子さんにお願いした。


「………あの日…わたしは死ぬ事をやめたのよ…

だって私のお腹の中にはあの人との子供が…私はその子と二人で生きて行こうと決めたのよ!

あんたにわかる!?わかるわけないよね!?本気で人を愛した事ないあんたにね…!」


奈津子はわたしが今までに見た事のない顔をしていた。

わたしはあまりの恐ろしさにただ泣くしかない。


「じゃあじゃあどうしたら許してくれるの?」


「うふふ…さあ〜?」


そう言って奈津子は家から出て行った。


     次の日


わたしはいつもの駅で電車を待っていた。


正直、今でもこの場にいるのが恐い。


いつ奈津子さんが現れるか…あのチカンおじさんだって……。


それでもこの駅に来る理由というのはきっと今のわたしにはそこまで生きる気力がないからだろう…。


どこかで『死ぬ覚悟』をしてる自分がいる…。


わたしはレイプされて出来た子供…母にとってわたしは必要とされてなかったんじゃないかと…


そして母はわたしのせいで死んだ。


あまり眠ってないせいか頭がボッーとしていて悪い考えしか浮かんで来ない。


“わたしは何のために生まれたんだろう。”


その言葉が頭の中でグルグルしてる。


電車の音が聞こえてきた。


…ああ…早く学校に行かなきゃ。


行けば友達がいてひとときでも嫌な事忘れられる。


早く…はやく行かなきゃ…。

行かなきゃ…行かなきゃ… 行かなきゃ…行かなきゃ…

 行かなきゃ…行かなきゃ… 行かなきゃ…行かなきゃ…

    行かなきゃ…行かなきゃ… 行かなきゃ…行かなきゃ…



「ナツキちゃん!」


わたしはその声にハッとした。


ナオキくんはびっくりした様な顔でわたしを見ていた。


わたしは笑顔で挨拶をした。


「おはよ。」


「おはようじゃないよ!何やってんだよ!」


スタスタと直樹くんはわたしのトコへやって来て腕を掴んだ。


「どうしたの?恐い顔して…」


「どうしたのこうしたのじゃないよ!君こそ恐いじゃないか!」


「え……!?」


よく見るとわたしは、あと数センチで下の線路に落ちる場所に立っていた。


「…うそ…!?」


びっくりしたわたしは思いっきり後退りをした。


「−ったく何やってんだよ!このまま君までいなくなったら最悪じゃないか!」


「でも、わたし電車の音がしたから ちょっと前に行っただけなのに…」


「電車はまだ来てないよ!…考え事してるからだよ。頼むから気をつけてくれよ!」


「…ごめん…」


「…ん!…ほらっ…今度はホンモノの電車が来たゾ!」


そう言って直樹くんは笑ってた。



ガタン…ガタン…


「ね?あかりとはうまく行ってるの?」


「うん。たぶんね。あかりからは何て聞いてる?」


「うまく行ってる事は言うけど…あまりノロケないわね。

−っていうか最近、わたし達バラバラな時多いからさ。」


「なんでまた?マンネリ?」


「…マンネリって…恋人同志じゃあるまいし大げさだよ。

でも互いに自分の事でいっぱいってのは確かだね。」


揺れる朝の電車でわたし達は話に夢中になった。


そして−…


「あ!わたしはここで降りなきゃ。」


「うん!また今度。」


「あ・そういえば…最近あまり不思議な力の事いわないね。」


「……うん…あまり感じなくなった。でも君は気をつけてよ!油断はしないように」


「うん。いつも心配してくれてありがと。」


「はは…君のカレシになる人は大変だな。」


「それ、どういう意味よぉー!失礼しちゃうわねー!」


「ははは…」


そうやってわたし達は別れた。

朝からなぁんかいい気分だった。たまにはこんな気分もいいね。



「ナツキ!おはよー」


学校に着くなりあかりが声を掛けてきた。


気分の良いわたしは元気な声で言い返す。


「おはよー!」


「おっ!今日はいつもと違って明るいナツキですな!」


「…え!?いつも通りだよ。」


「違うばい!なんか昔のナツキだよ!表情が違う。なんか良いことあった?」


「え!?」


わたしはしばらく考え…


「別に。」


ニコリと笑う。



「…ふぅ〜ん。じゃあ、たまたまか…」


「そっ!たまたまってかわたしが普段元気ないみたいじゃん〜!」


「あははははは…」


わたしは何故かナオキくんに会った事を言わなかった。


別に言うほどの事じゃないと思ったのか…


よくわからなかった。




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