021⇒叔母の『告』白
「ナツキ!」
わたしは琴美に呼ばれた。
「…どうだった?」
「ちょっと屋上へ」
わたし達はまた屋上へ上がった。
「あれから病院行って来たんだ。」
「−で?結果は?」
「うん。妊娠してた。」
琴美はあっけらかんとして言った。
「…あ…村山先生はなんて?」
「…堕ろせって…」
「……!」
「…はあ。どうしよう〜」
「琴美はどうしたいの?」
「…産みたい。」
「でも、それで苦労するのは琴美だよ!」
「でも産みたいよ!この子を殺すなんてわたしにはできない!」
「……!」
その時、わたしの頭の中にある光景が浮かんだ。
「三ヶ月…?」
「…はあ…私にはこの子を殺す事は出来ない…!」
「よし!あの人が断っても私ひとりでこの子を育てる!」
映画のようにひとつひとつ場面が流れ、光景の中のわたしは独り言を言っていた。
「…ナツキ?」
…はっ!…
「アレッ!?」
わたしは我に返った。琴美が不思議そうにこっちを見てた。
「大丈夫?」
「あ・うん。ごめん…ボッ〜としてた。」
「やっぱり産む事は許されないかな?
世間でいう不倫だし…この子も幸せになれないだろうし…」
「でも好きなんでしょ?先生の事…」
「うん。」
琴美は少し涙を浮かべて言った。
「つらいなぁ…」
その村山先生というのは顔立ちが元々良い為、女子にはかなり人気があった。
政治・経済の先生だが話しもわかりやすく親しみやすいカンジがした…。
(あんな…愛妻家みたいなイメージしてるのにな…)
正直、琴美とそういう関係になったなんて信じられなかった…。
まあ、わたしは恋をした事はないが、男と女なんてのは理屈じゃないんだろうな〜…なんて思ったりもした。
家に帰ると母の姉である叔母が中でわたしを待っていた。
「…おかえり。」
「叔母さん、どうしたの?」
「あなたが心配だから見に来たのよ」
言い忘れたが、今のわたしの生活費を出してくれてるのは叔母なのである。
いつも叔母はキラキラした服を着てる。それが彼女のこだわりなのだろう。
だから見た目はかなり性格がキツそうに見えるが、面倒見がよく、わたしが母の次に心を許してる親戚の一人なのだ。
「とりあえずは元気そうね?妹が死んだ時のあなたったら普通じゃなかったから」
「…何とか落ち着きました。あまり考えないようにしてます。」
「そう…。それがいいわ。」
そう言って叔母はタバコを取り出して吸った。
「叔母さん…わたしに何か話したい事があったんじゃないの?」
「………うん」
叔母は吸っていたタバコを消しながら言った。
「…もう少し時間が経ってから言った方がいいかな〜?って思ってたんだけど…」
「…うん。」
少し間をあけ叔母は続けた。
「ナツキと父さんの事なんだけど…」
「うん。」
「父さんの顔みた事ある?」
「うん。写真でしか見た事ないけど」
「……その写真の父さんはナツキのホントの父さんじゃないの」
「え?うそ!?」
「ナツキのホントの父さんは誰かわからないの。」
「どういう事?」
「…はっきり言えばね。あんたの母さんは若い頃、レイプされたのよ。
その時出来た子があなたで、その写真の父さんはあなたを承知で後から結婚した人なの…。」
「そのレイプした人は誰なの?」
「……それは誰かわからない。顔は覆面を被ってたらしいわ。もしかすると、知り合いだったかもしれないわね。」
「………!」
わたしはあまりのショックで言葉が出なかった。
しかし、何で突然そんな事を?
わたしは不安で仕方なった。