020⇒琴美の『秘』密
「ナツキ、話があるんだけど…。」
めずらしく、琴美がお昼休みに私に声を掛けて来た。
「…うん」
わたしはキョトンとしながら返事ひとつした。
そして、私達は人が少ない屋上に場所を変えた。
「…どうしたの?こんなトコまで…」
「………。」
「…琴美?」
「あのね−…」
琴美は言いにくそうに口を開いく
「わたしね。好きな人がいるの…」
「−え?誰?」
わたしはシンプルに問う。
「………。」
「わたしの知ってる人なの?」
「うん。」
「まさか…直樹くんじゃ…」
「違うわよ。あかりの彼氏だよ?」
「だって言いにくそうな人って言ったら直樹くんぐらいでしょ?」
わたしは内心すごいドキドキしていた。
自分でもよくわからないが。
「実は7組の副担任の村山先生なの。」
「あ・そうなんだ。」
一瞬ホッとする。
「…ただ好きなだけじゃないの。」
「−というと?」
「…うん。親しい仲なの。」
「まさか…それは体の関係はあるって事!?」
「うん、そう。」
琴美は顔を赤くして俯いた。
「何だかスゴイね。ドラマみたいな話だね?」
「−で、問題っていうか心配事があって…」
「うん。」
「…来ないのよ。アレが…」
「アレって…生理の事?」
「うん。」
一瞬、風が吹く。わたしは続けた。
「それって…つまり、赤ちゃんの可能性があるって事?」
「…うん。そういう事になるかなぁ〜。」
琴美はガクッとその場に座り込んだ。
「…え…−で、その事は村山先生には言ったの?」
琴美は髪を押さえながら首を横に振る。
「ん〜ん、まだ。ちゃんと病院行って確認してないし。」
「早く言わないきゃ!」
「でも、まだ問題が…」
「なによ。」
わたしはもったいぶって言う琴美にイライラしていた。
「村山先生には家庭があるの。奥さんも子供もいるし…」
「えぇ〜?じゃあ不倫なのぉ〜?」
わたしはかなり驚いたので、思わず大声を上げてしまった。
「…しっ!そういう事になるかなぁ。」
「あ、ごめん…いつから、そういう関係になったの?」
「夏休みからかな?それ以前から、私は先生に魅かれてたけど、きっかけは夏かな?」
「…そうなんだ。全然気がつかなかった。」
溜息をつきながら琴美は
「やっぱり堕ろさなきゃいけないかな?」
そう言った。
わたしには理解できない。
奥さんや子供がいる人の子供を産みたいという気持ちを。
「…そりゃあ、先生がそばにいてくれるなら必要ないけど、
家族を捨ててまで一緒にいてくれる人なんて、中々いないわよ。」
だからあてつけっぽく言った。
「でも私、先生の事好きだし産みたいって思ってるの。」
「琴美!それで苦労するのはアンタだよ!」
少し怒鳴る様に言い返すと琴美は黙り込み
「そうね。」
そう言って彼女は立ち上がる。
「とりあえず、先生に話して病院行ってみる。
ごめんね、変な事言って…教室戻ろっか。」
「ううん。わたしで良ければいつでも相談にのるよ。」
わたし達はこうして教室に戻ろうとした時、
「あ!先生−!!」
琴美は奥にいる村山先生に声をかけた。
「おぅ…」
「話したい事があるんですが…」
こうして二人はどこかへ消えて行った。
わたし達三人の中で大人しい琴美が学校の先生と不倫するなんて思ってもみなかったので
わたしはボッ〜と、しばらくその場にいた。
「ねえ、ナツキ。琴美見なかった?」
教室に入るなりあかりが言った。
「ああ、さっきまで一緒だったよ。」
わたしは自分の席に座りながら返事する。
「あ・そうなんだ…。何か琴美も最近、変なんだよね。
何かに悩んでるカンジ。アンタもだけど…。」
あかりはわたしの顔を見つめながら言った。
「あはは…」
わたしは軽く笑った。
きっとあかりは、ホントにわたしの事を心配してくれてるのだろう。
でもわたしが悩みを打明けないから、
自分に心を開いてくれないから面白くないんだろうなぁ。
だから、少し当てつけっぽい言い方するのだろう。
「…ごめんね、あかり。」
「だったら早く言いなさいよ〜」
あかりは笑いながらわたしの頭をなでた。
その手は温かく、やさしかった…。
ここから琴美編へ突入でございます。
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