019⇒『恋』
━翌日━
わたしは学校へ行く為に身支度をした。
このまま家にいても色んな考えが頭をよぎり、独りの世界でおかしくなりそうだったから…。
わたしは軽く食事を済ませ家をあとにした…。
「はぁ〜キモチいい…☆何日ぶりだろう…こんな早くから外に出たのは…。」
わたしは独り言を言いながら学校へ向かった。
久しぶりの学校は少し緊張する…。
わたしは勇気を出して教室に入った…。
「…ナツキ…!」
あかりがわたしの名を言った途端、みんなの視線が一気にわたしに集中した…。
「おはよ…」
…わたしは自分の席に着き、カバンを置いた…。
何人かの人がわたしに声を掛けては励ましてくれた…。
それが逆に疲れたりもしたが、素直に嬉しかったりもした。
休み時間、ふと気付くと琴美が独りで窓際にポツンとしていた…。
「どうしたの?琴美…元気ないね…。」
「…ううん。そんな事ないよ…。良かったよ、ナツキが元気そうで…」
「ありがと。家にいても沈んじゃうだけだからさ。気持ち切り替えなきゃと思って…」
「…そうだよねぇー」
琴美は何か悩んでるようだったが、わたしは敢えて聞かなかった…。
時間はあっという間に過ぎて放課後になった…。
気付けば琴美の姿もなく、あかりもいない。
「あれぇ?みんな帰ったのかな」
あかりはナオキくんとデートって想像できるけど、
琴美までもすぐにいなくなるなんて…。
わたしがしばらく来ないうちに環境も変わったもんだ。
わたしはそのまま歩いていたら、校門にナオキくんの姿が見えた。
「よっ!久しぶり…」
「最近、会ったばかりだよ。」
「そうだっけ?良かった…学校行く気になったんだね。」
「うん。少しでも変わらなきゃと思って…」
「じゃあ…みんなに話す気になった?」
「…それはまだ…また今度ね…」
ガシッ!
「え!?」
直樹くんの前を通り過ぎようとしたら、ナオキくんはわたしの腕を掴んだ…。
「心配なんだよ…君はいつも独りだし…なんでもっと心を開かない!?もっと信用してくれよ!」
「…ナオキくん…」
…ナオキくんはいつもより真剣な顔つきだった…。
「ナオキくん…」
「…なあ…もっと信じてくれよ…」
ナオキくんはわたしの腕をよりいっそう強く掴んだ…。
少し痛いけど…暖かい感じがする。
「なにしてるの…?」
向こうから声がした…あかりだった…。
「…あ。」
わたしは直樹くんの腕を素早く振り払った。
「なにしてるの…?」
あかりがゆっくり近づいてくる…。
少し雰囲気に…刺がある…
ナオキくんは頭をポリポリ掻きながら笑っている。
「何でもない…ホント何でもないんだ…」
「ふ〜ん」
あかりは笑いもせず返事ひとつだけした。
「…あ・ごめんね…わたし帰るね…」
わたしはそのまま二人から遠ざかった…。
「……。」
……ドックン…
「…はっ」
ドックン…ドックン…
「…はっ…はっ…」
わたしは歩きながら自分の心臓が高鳴るのがよくわかる…。
それはナオキくんの手があまりにも力強かったから…目が…本気だったから…。
男の人のそんな事をされた事ないわたしは正直ドキッとしてしまった…。
翌日
わたしはあまりの気分の悪さに目が覚めた。
「ううっ…」
わたしはトイレに駆け込み、嘔吐してた。
「はあ、はあ…」
わたしは鏡を見た。
起きたばかりなのにすごい疲れきった顔をしている。
「…やな顔」
わたしは重い体を起こしてはすぐに学校へ行く支度をした。
「おはよう」
学校に着くなり、あかりが挨拶してきた。
「…おはよ。」
「……うん。」
…多分、わたしが来るのを待っていたんだろう。
あかりは何か言いたそうにうずうずしていたが、我慢できなかったのか口を開いた。
「昨日の事なんだけどさ…」
「…ん。」
わたしは普通に返事した…。
「…ナオキ…変じゃなかった?」
「…変って…?」
わたしは何も知らないフリをして聞き返す…。
「…だからぁー……」
しばらく間があった。
「ぶっちゃけ言えばね、ナオキ…すごくナツキの事気にするの…」
「…え!?」
わたしはあかりの言葉に思い切り反応した。
「…あ!もちろん、今のナツキが大変だから気にするのはわかるけど…。
なんて言うのかな……えっと…
ナオキの事知れば知るほど…ナオキはあたしの事…好きじゃないような気がして…」
「あかり?」
いつも明るいあかりがすごく切ない表情をしていて、今にも泣き出しそうだった…。
…これが恋する女のコの姿なのだろうか…?
「…ごめん…あたしナツキに八つ当たりしてるみたいね…」
「…ううん…いいよ。気にしないで…」
「…あたし…昨日もそれが気になってほとんど眠れなかったの…あはは…ばかだよね?」
「…そんな事ないよ…あたし…あかりが羨ましいよ…
こんなに人を好きになれるなんて
…わたし…今…何を信じて生きていいのかわからないもの…」
「…ナツキ…」
あかりはわたしを見て更に口を開いた。
「ナツキは何に苦しんでるの…?」
「……え!?」
「…まだ言えない?あんた…夏休みからずっとおかしかったじゃない…
あたし…いつか、ナツキから言ってくれると信じて待ってたんだけど…」
「………!」
正直、わたしは今なら全て話せると思った…。
これ以上隠していてもあかりやみんなに心配されるだけだし、
更にいろいろな誤解が生じてしまうんではないかと思ったから。
わたしは勇気を出して言おうとした。
「…あのね…」
…オジョウチャン…
その時、目の前にあのチカン親父の顔が浮かんで来た。
…オジョウチャン…
その顔はすごく醜くて恐ろしい顔…。
…オジョウチャン…
そしてわたしをすごく憎んでる…それは奈津子さんも一緒。
…オジョウチャン…
全てを話せば彼等に関わる事になる。
…オジョウチャン…
わたしは我に返り首を横に振った。
「………。」
「…ナツキ?」
「…ごめん…今は言えない…」
わたしは、ただそう言うしかなかった。