016⇒訪『問』者
母が死んだ…。
先が真っ暗になった。
でも、正直悲しさよりもまた誰かを巻き添えにするんじゃないかと恐かった。
だからわたしは母の葬式が終っても家から出ようとしなかった。
誰にも会いたくなったからだ。
勿論、学校にも…。
ピンポーン。
その音にわたしはベッドから顔を上げた。
だけどすぐ、顔を下ろした。
まだ誰にも会いたくないし…。
ピンポーン
…………。
ピンポーン
ああー!もうしつこい!う〜ん…。
わたしは重い体を起こし、起き上がる。
ピンポーン
…はいはい…。
ガチャッ。
ドアを開けると、先日来ていた精神科の先生が立っていた…。
先生はわたしの顔を見ると軽く頭を下げた。
「お久しぶりです。」
わたしもつられておじきをした。
「…どうも…」
「お母様が亡くなったと聞いて…線香をあげても良いかな?」
「あ・はい…。わざわざすいません…。」
先生は仏壇の前に座り母にあいさつをしていた…。
仏壇に線香をあげ終わったのを見計らってわたしは、先生に質問をした。
「先生、母から聞いていたんでしょ?わたしが母に暴力を振るっていた事…」
「…はい。だが、君は覚えてないんだってね?わたしはそう聞いたが…」
「…ええ。わたしが寝た後、行動に出るらしいんです。これは一種の夢遊病なのでしょうか?」
「…さあ…調べてみないと何とも言えないが…。色々考えられる…例えば、多重人格とか…ね?」
「…はあ…。」
「ま・一度、わたしのトコに来なさい。いつでも構わないよ」
「…はい…。あの…母はわたしの事をどう言ってました?」
「…全て私が悪いと言ってたな。私が原因でこうなったと…。」
「…父の事も?…。」
「…うむ。君にはツライ事だな。両親が自殺するとは…」
「…原因はきっと…わたしが母にひどい事を言ったと思うんです。
わたしには記憶がないんですけど…。
…あの…催眠療法でわたしの中にある何かを呼び出す事は可能ですか?」
「…まあ…可能性としては有りかもな…」
「…じゃあ、わたしが母に言った言葉とかわかる可能性もあるんですよね?」
「…正直試してみないとわからないが…」
「…近いうち伺います…。その時ヨロシクお願いします…。」
「待っとるよ。」
そう言って先生は立ち上がり玄関へ向かった…。
だが、急に立ち止まりわたしを見つめる。
「…先生?」
「……はあ…はあ…」
「? どうしたんですか…?」
「はあ…はあ…」
息が荒くなった先生はゆっくりわたしに近づいて来た…。
「ちょっ…先生!?」
ガッ…!
先生はいきなりわたしに飛び掛かった!
わたしは思わず叫んだ。
「きゃあああぁー」
ドスン…!
覆い被せる様に廊下にそのまま倒れた。
「はあ…かわいいな……ああ!お前はなんて可愛いんだあぁー!」
先生は大声でそう言い、キスをしようとした…!
「やめてぇー!何でこんな事するのぉ!!!」
「…私は感じるんだよ!君との運命を…!
君といつかはこうなるんじゃないか…ってね!なあ…お嬢ちゃん!」
「まさか…!」
その声はまさしくあのチカンおじさんの声だった…。
「気づいたか?そうだ!おじさんだよ!覚えててくれて嬉しいなぁ…!あははは…」
「いやっ!やめてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜っ!!」
「おじさんはね!君が許せないんだよ!あの事件は君がやったんじゃないか!
なのに、君より先におじさんが死ぬのは何か矛盾してないか…?
なあ!君も思うだろ?だから私が道づれにしてあげようと思ってな!」
「いやあぁぁぁっ!」
そして先生の…いや、おじさんの手がわたしの首を締めつけた…。
「やめて…う…げ」
「ははは…このまま死んだ方がいい!」
先生の腕の力は更に力強くわたしの首を締めた。