014⇒わた『し』の過去
「…じゃあ…今まで…母さんは黙ってたの…?」
「……そうよ」
「…わたしが…わたしが寝てる時に…?
…あの女…わたしが寝てる時にわたしの体を……そして母さんに…」
「…ナツキ…?」
母は不思議な顔をしていた。
「…そうか…だから最近出ないんだ…」
「ナツキ…あの女って誰の事を指してるの?
あんたは心当たりあるのかい?」
「…母さん…ごめんね…
今まで気付いてあげられなくって…わたしが悪いんだよね?」
「……ナツキ…私は別にお前を責める気はないよ…。
だけど…お前の精神が少しおかしいとか…そういう意味で不安だったんだ…」
「ごめんなさい…母さん…ごめんなさい…」
「…今日…学校終わったら…昨日の先生に診てもらおう…ナツキ…そうしよ…?」
「…うん…でも…きっと先生に診てもらっても何の解決にもならないかも…
…うぅ…!…急に頭が…!」
「ナツキ…!」
「…うぅぅ!」
わたしは突然の痛みに耐え切れず頭を押さえては座り込んだ。
「ナツキ大丈夫!?」
「ああぁぁあ!」
「ナツキ…!」
わたしの頭はカナヅチにでも殴られように激痛が走った…。
そしてその激痛が増すと共に自分という存在が薄れて行くカンジがした。
母さんの声が明らかに小さくなっていく…
「ナツキ!
ナ
ツ
キ
!」
「ナツキ…!」
「………ひどいよ…母さん…」
「ナツキ?」
わたしはゆっくりと立ち上がりながら言う。
「ホントはわたしなんていらなかったクセに…!」
「何を…言ってるの…?」
「…だってそうじゃない!?わたしは…母さんが22の時
…レイプされて出来た子供だもの…!」
「…ナツキ…」
母はわたしの発言に驚いていた。
「母さん…父さんは…ずっとそれに気付かないで死んだと思ってる?」
「…ナツキ…?」
「気付いていたのよ…!父さんは大人になってハシカにかかり、
子供が出来ない体質だったから…種無しだったんだから!」
「…やめなさい!」
「…でも…父さんはそれを受けいれた…
子供ができない父さんにとっては子供はありがたかった…」
「やめなさい…!」
「…でも…やはりムリがあったのよ…母さんをどんなに愛してても…
どこの男の子供かわからない…父さんもわたしを愛そうと必死だった!
……でもある日…父さんは自殺した……。
どんなに努力してもわたしを愛せなかった…!
心のどこかで母さんに対しても憎しみがあった…!
その気持ちに気付いてしまったから…!」
「やめなさいって言ってるでしょう!?」
バシッ…!
わたしの頬をぶつ母の目から大量の涙が溢れていた。
それでもわたしは続ける。
「…母さんだってそうよ…。わたしを100%愛せない!
だって自分を犯したオトコの子供だもの…!
ホントは…ホントはわたしが憎いのよ!
わたしなんかいらないって思ってるクセに…!」
「そんな事思ってないわ!あんたは父さんとの間に出来た子よ!
父さんは会社の経営に苦しんで自殺したの…!
あんたが言ってる事全部まちがってるわ!」
「…嘘よ…わたしはちゃんと知っている!わたしをバカにしないで!」
「……あんた…ナツキの言う…あの女かい?…ナツキを返して!」
「きゃははは…!心にもない事を…!
あんたの旦那が死んだ時あんたはこの子を怨んだクセに…!
この子を殺して自分も死のうとしたクセに!だったら死ねば?
アンタなんか生きる価値なんてないのよ!
この娘がいなけりゃあたしだって死ななかった!
早く死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!
ナツキを返して!返して!」
「きゃはははっはははははははは!」
「ナツキィィィ!目を覚ますんだよ!ナツキ!」
「きゃははははははははははははははははは!」