013⇒泣き『叫』ぶ母
「…もしもし…」
「あ…ナツキちゃん?俺だけど…」
「ナオキくん?…うぅ…うぅぅ」
わたしはナオキくんの声を聞いて思わず泣いてしまった…。
「どうした?大丈夫?…何かあった?」
わたしは上ずる声を押さえ何とか答える。
「…ううん。ごめん…なんか…あたまがおかしくなりそう…」
「…イヤな予感がして電話したんだがやはり何かあったんだ?」
「…今…窓の外に…あのおじさんが…今日…ホームで飛び込んだのよ…
…ひっく…それなのに…なんでいるの…?ねぇ!なんでぇ…」
わたしはナオキくんに八つ当たりしていた。
それでもナオキくんは冷静に、
「落ち着いて!ナツキちゃん…今から…会うか?会って話そう…」
「………ぅぅ。」
「ナツキちゃん?」
「………。」
「ナツキちゃん?」
「…あ…ごめんね…大丈夫だから…
ちょっとびっくりしただけだから…また…今度ね…」
「━あ・ちょっと…」
“ピッ…”
「……ふぅ…」
わたしは切った携帯を見つめる。
…あまり…ナオキくんに頼ってはいけない…。
だって直樹くんは…あかりと付き合ってるんだもの…勝手に二人で会うのはよくない…。
そう感じたわたしはそのまま布団に潜り込んだまま朝が来るのを待った…。
勿論、なかなか窓を叩く音はやまなかった。
━翌日━
目を覚ますと母が立っていた…。
「母さん…おはよ。どうしたの?」
「………。」
「母さん…?」
「…………。」
…バタン…
母は黙って部屋を出ていった…。
「…母さん…」
「ナツキ、どうしたの?ボッーとして…」
あかりの声が聞こえる。気づけば学校にいた。
「あ…うん…色々と考え事して…」
「…なんかあったらあたしに相談してよ」
「…ありがと。それより…昨日のデート楽しかった?」
「…うん!でもね〜ナオキったら色々聞いてくるのよ〜
ナツキや琴美の事とかも。」
「へぇ〜。そうなんだ…」
わたしは妙にドキッとした。
「うん…まあ…別にいいんだけどねぇ〜。それより、ナツキ痩せたんじゃない?」
「え?ホント?それは嬉しいかも…」
「あたしは心配だよ。ねぇ…マジでなにか悩みはないの?」
「…うん。大丈夫。」
ガララ…
「ねぇ…ナツキ…」
琴美が昼食の買い物から戻って来た…。
「ん?」
「ナツキの母さんが廊下にいたよ…」
「…え!ウソ!?」
「ホントよ…すぐそこの廊下に…」
ガラッ。
わたしはすぐに席を立って廊下へ走った…!
…しかし…なんで…?なんで学校に…
…タッタッタッタッ…
「…はあ…はあ…」
わたしは必死に母を探した…。
「ナツキ…」
うしろで声がした。振り向いたら母が立っていた…。
「母さん…なんで学校に…?」
「うん…あんたに話したい事があって…」
「……なに?…」
「………うん。」
「……?」
「 勇気を出して…言うわね…」
「………。」
「最近、母さんの顔にアザがあるの…わかるよね?」
「…うん…誰かに殴られてるんでしょ?」
「……そうね…」
「誰に…?」
「……あなたよ…」
「え?」
「あなたが…夜中にわたしの部屋に来て殴るのよ…!
毎日…それも毎日よ?それなのに…なんで?なんで覚えてないの?ナツキ…!」
母はわたしの肩を掴みながら言った…。
「え…?」
「突然よ!あなたは…まるで何かにとり憑かれたように…
わたしを殴るのよ…!でもあなたは覚えてない!何故なの!?」
「わたしが?」
わたしはただ呆然としていた…。
「ナツキ…どうして…」
母はその場で崩れ落ちるように座り込み泣いていた…。
「どうして!どうしてぇぇぇぇぇ〜!!」