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Summer visit  作者: スカフィ
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プロローグ

「別れよう…」


彼は冷たくそう言った。

私は突然そういわれた事に納得出来ず、問い詰めた。



「…なんで?…私の事嫌いになったの…?」



「ごめん…君とは合わないみたいだ…。

悪いけど俺と別れてくれ…急な話ですまないが…」


「いっ…いやよっ!絶対別れたくないっ!」


私は何度も彼に「別れたくない!」と言い続けたが、

最後の最後まで彼には伝わらなかった。



私と彼の関係はその日終止苻を打った。







…あれから何日が経つだろう…。

私は真夏日の続く街へと飛び出した。

ここ数日私は家の中にいた。


それは彼と別れたショックからか…


それだけじゃなく本当に体調も良くなくて…。



ふぅ…来ない…もう、そろそろなのに…。


…まだ来ない…もう二週間……今までこんな事なかったわ…

…まさか…ううん、そんな事あるワケがない…

そんな事…あったら…どうなってしまうの…?





「おめでとうございます。三ヵ月ですねー。

…うん、順調ですね…はい、これが母子手帳。

…これからは一人の身体じゃないんで

くれぐれも体調には気をつけて下さいね…。

あ、そうそう。今度はお父様と来て下さいねー…」






…ミーン…ミーン…




ホントにこんな事になるなんて…。



…ミーン…ミーン…



…まさか妊娠…!?



…私…どうすれば…なんで別れた後気づくのよ…!


…なんで…でも…これで…彼をつなぎ止める事できるかな…?


…とりあえず…電話だけしとくかな?




…ミーン ミーン…





プルルルルル…



出てくれるかな?やっぱり出ないかな?



プルルルルル…ガチャッ



「 あっ もしもし?」



『ただいま留守にしています。

…30秒以内にお名前と用件をお願いします…ピィィィ…』



…………。



「…私…奈津子……ごめんね…急に電話したりして…

あ・あの……急にこんな事言って驚くかも知れないけど…

…赤ちゃんが出来たの…あなたと…私の…赤ちゃんが今、私のお腹に…」


ピイィィ−ッ…プッ……


…ツー・ツーツー・ツー。




…やっぱり電話に出ないね…


…仕方ないか…ふぅ…

それにしても暑い…今年の夏は異常なくらい…


…ミーン…ミーン…



いくらなんでも私一人じゃ子供なんて育てられない…

でも…堕ろすなんて…殺人だもの……あの人との子供だし…

…見てみたいな…。私とあの人との子供か…ふふふ…

どんな顔してんだろ…男の子かな?それとも女の子かな?…


…ミーン…ミーン…


…いつの間にか駅に…


…え〜と…○×から□◎までは250円か…何番のホームだっけ?




……もし、彼が認知しなかったとしても私にはこの子を殺すなんて無理よ…


……産むしかない…!


…そうよ!これからの私を全てこの子に懸けるのよ…だってあの人の子供だもの…



『間もなく電車が到着します。危ないですから白い線から後ろに下がって下さい…』




…ガタンガタン…





…これからよ…私の人生は……



…プアアアアァァァァ〜ン



…ガタンガタン…



…この子と一緒に…!!



 トンッ。



 きゃっ…!




…やだ…私…誰かに押されたみたい…



…ガタンガタン…



…このままじゃ下の線路に落ちちゃう…!


…やだ…今落ちたら死ぬ…


…し…ぬ?…



…なんでよ!やっと決心したのに死ぬのよ!嫌よ!


お腹の赤ちゃんはどうなるの?


わ…誰よ…誰なの?

私を押したのは…

ホームを…

位置からしてあの女だわ…

やだ…みんな見てる

…やだ…見ないで嫌よ!

死ぬのだけは…

この子だって…




許せない!


…あの女…


いやあぁぁーっ!!



ガタンガタンガタンガタン

ガタンガタンガタンガタン

ガタンガタンガタンガタン

ガタンガタンガタンガタン



こうして私の視界は暗闇に墜ちた…。


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