魔王さまと非力な人間
きゅう~
なにか動物の鳴き声が聞こえた。
それも近くから......。
きゅうぅぅ
いやこいつから聞こえる。
「......」
赤い目は俺をじっと見てくる。
「......」
「は~わかったよ」
「!!」
「朝食作るからそこ座っとけ」
俺はしょうがなく魔王さまの朝食を作ることになった。
「我は人間領の食事は初めてだ」
魔王さまは嬉しそうに椅子に座った。
まぁあんな顔されたら嫌とはいえねぇな。
「魔王さま、なにか食べれないものとかありますか?」
「......」
「...どしたの?」
さっきまでニコニコだったのになんだそのムスッとした顔は。
勢いで "ボンッ!!" とかそうじゃないか。
俺はもう吹き飛ぶ気はないぞ。
「...我の事はリアと呼べ。それに敬語は無用だ」
「でも仮にも魔王さまでしょ?」
恐れ多い魔王さまを呼び捨てでいいのだろうか...。
しかもタメ語だ。
「よい。我は今日から人間を学ぶのだ。魔王などと言ったら騒ぎになる」
「あ~なるほど」
一応納得した。
......だが、まさかこんなガキが魔王なんて誰もが思わないだろう。
別の意味で騒ぎになる。
「まぁ、魔王さまがそれでいいなら」
「リアだ!!ソナタは覚えが悪いのう」
「......」
俺は一言も話さずキッチンに向かった。
ガキに付き合った俺がバカだった。
「ほら。食えよ」
俺は魔王さま...イヤ、リアの前に皿を置いた。
リアは目をキラキラさせて皿の上を見た。
「おおぉ!!」
今日のメニューはホットケーキ。
たっぷりのバターにメイプルシロップをかけたとてつもなく甘いものだ。
ガキならたいては喜ぶだろう。
ってか俺は人生初!!人(魔族だが)に料理を作った。
何を作ればいいのかわからないからガキが喜びそうなのを作った。
「人間領の食べ物はキラキラ光ってるのか?」
リアはとても嬉しそうに言ってきた。
たしかにメイプルシロップでキラキラ光ってるがお前の目もキラキラに光ってる。
「温かいうちに早く食べろよ」
「食べるのがもったいない!!」
リアはちょっと皿を押してホットケーキを見ている。
きゅぅぅぅ。
「ほら、はら減ってんならさっさと食えよ」
俺はちょっと苦笑しながらリアの近くに皿を寄せた。
「......」
ちょっと困った顔で俺を見た。
「また作ってやるから」
それを聞いたリアはフォークを勢いよくホットケーキに刺した。
「...もぎゅ、もぎゅ」
リアはホットケーキを口に入れ目を見開いた。
それから無言で食べていく。
「あ~あ、そんなにベトベトにしやがって」
「むぎゅ!!」
「そんなに詰め込んでると喉に詰まるぞ」
言ってるそばから詰まらせてる。
俺はモウギュウのミルクをグラスに注ぎリアの前に置いた。
「ゆっくり食べろ」
「...ぷは~。助かったぞ」
リアは少しペースを落としホットケーキを黙々と食べていった。
「ごちそう様でした」
「はい、お粗末さまでした」
リアは丁寧にごちそう様をして完食した。
挨拶や礼儀はランバートがきちっと教えているらしい。
俺は何を教えればいいんだ。
まぁこの危ない魔王さまに世の中の人間がいかに非力か教えてあげないといけないな。
でなきゃこいつはまだ手加減を知らない。
一緒に住んでいる俺の命に関わる。
俺はまだ死にたくない。
更新が遅くなってすみませんでした。