魔王さまと苦労人
遅くなりました。
「嫌だ!!そんな怪しい物はつけたくない」
ルイトがニヤニヤしながら魔王に迫った。
手にはあのチョーカー。
「これしないとこの依頼はなかったことになるぞ」
もちろん俺はそれで大満足。
それでなくてもこのチョーカーで魔王の魔力も怖くもない。
願ったり叶ったりだ。
いつのまにか形勢逆転。
「むぅ」
むくれた魔王だったがしぶしぶルイトに近づいてきた。
そして大人しく小さな首にチョーカーをつけた。
「我は我慢をする、そなたもちゃんと依頼は受けろ」
魔王はルイトを下から睨んだ。
一瞬たじろいだがまぁこれで魔力は使えないんだ。
「ああ、じゃあこれで依頼承諾ってことで」
これでこいつも普通の子供になったわけだし俺の命は保障されのだ。
ド――――――――ン
俺がそんなことを考えていると大きな音がした。
...屋根がない。
「...」
魔王さまは俺を見て笑いながら言った。
「我はこれで人並みになったのか?」
パラパラと天井から木くずが落ちてきた。
大きく開いた穴から日の光が魔王さまの顔を照らす。
俺は声も出さずにその顔を見てるだけしかできなかった。
「いつからだ?」
俺は部屋の掃除をしながらランバートに話しかけた。
脅し...じゃなくて依頼だからしょうがない。
「今日からでも構いませんよ」
今日から...急だな。
そう思いながらルイトは魔王をみる。
掃除を手伝おうとしているのか落ちている木片を集めている。
「魔王さま、では私はこれで失礼しますね」
ランバートはそんな魔王を目をほそめながらいう。
魔王は拾った木片を下に落とし近寄っていく。
「うむ、太陽がでているので気を付けて帰るのだぞ」
「はい、魔王さまもお元気で」
「城のことは頼むぞ」
「ええ」
「た、たまには我に会いに来ておくれ」
「はい」
「我は......」
「もうホームシックですか?」
彼の服を掴み一生懸命に言葉を紡ぐ。
行ってほしくはないが昼間の時間を歩かせるのは魔族には危険だ。
ランバートは俯く魔王さまの頭を撫で立ち上がった。
「ではルイト様、よろしくお願いしますね」
「お、おう」
ランバートは俺に頭を下げた。
その後、もう一回魔王さまの頭を撫でて出て行った。
「...」
ランバートが出て行った扉をしばらく見ていた魔王だがくるりとルイトへ向いた。
「我の名はレリウーリアだ。これから頼むぞ」
こうして人間と魔族の共同生活が始まる。