魔王さまとアラゴリア
「...というわけです。」
そいつは一方的に、俺に発言権もなく話し終えた。
話はわかりやすかったが体が理解するのを拒んでいる。
俺は体をプルプルと震えさせていた。
「ふふ、そんなに体を震わせてるとアラゴリアの子供みたいだぞ」
アラゴリアとは毛むくじゃらの魔獣だ。
子供は寒がりで常にプルプル震えている。
俺は子供に子供のようだと言われたがそんなことを気にする余裕はない。
「わかりやすくお話しましたが理解はされましたでしょうか?」
ランバートは俺の行動を見て眉をひそめながら聞いてきた。
「理解されてないようですのでもう一度お話しいたしますので今度はちゃんとお聞きくださいね」
そいつはニッコリと笑みを浮かべたが言葉が強制的に聞こえているのは俺だけだろうか。
それもそのはずそいつは俺の震えてる右肩をガシッと掴み強制的に震えを止めた。
「まず、あなた様にお願いがあり私たちは参りました」
そいつはゆっくり話してきた。
「それは依頼でいいのか?」
俺は雇われ者だ。
依頼があればどこだって行くし、どんな事もする。
でも殺人、盗みはしないのが俺のモットーだ。
「そうですね、依頼です。報酬も払いますし楽な仕事だと思いますよ」
「っていうかさっき話した内容とは違うんじゃないのか?」
そうアイツが初めに話した内容とは全然違う。
アイツは俺を×××××にしてほしいと、そのためには×××で××しなければならない。
俺には無理だ!!
「先ほどは、簡潔に話した内容ですので」
そっかそっか。
道理でわかりやすくダメージが来たわけだ。
って!!内容は一緒ってことか!?
「断るのはありでしょうか?」
ささやかな希望を持って言ってみた。
「ええ、もちろん断ることはできます。」
「え!?断っていいの?」
そいつは予想外の事を言ってきた。
絶対に力を行使し、ねじ伏せて従わせようとすると思っていた。
「いいですけど、この先おちおち寝ていられませんよ」
「は!?」
「ここへ来る前に私の知り合いに頼んだのです」
「な、なにをしたんだよ」
「いえ、ただ世間話をしただけですが」
「・・・」
「私達のお願い聞いてくれますか?」
「もうそれは脅しなんじゃないですか?」
「いえ、脅しじゃなくてお願いです」
「はー、もうわかったよ。で!?なにをすればいいんだ?」
俺はもう諦めた。
これ以上良くもならないしそれよかもっと悪くなる一方だ。
それに、楽な仕事で報酬がもらえるなんていい仕事かもしれない。
「お願いはこのお方に人間の暮らしを教えていただきたいのです」
「は!?教えるてなんだよ?」
「一緒に暮らして頂いて、人間の生態を教えてください」
そいつはガキを見ながら言った。
何言ってんだ。
俺が人に何かを教える事なんてできるわけない。
「魔族が人間の暮らしなんて必要ないだろう」
そうだ、魔族が人間の暮らしを学んで何になる。
人間に関わらないで過ごせばいい。
「数千・数万の魔族を治める主なら人間に対する知識も必要となりましょう」
ん?
「ちょっ、ちょっと待て!!」
あれ?なんか引っかかる事言わなかったか?
「主ってまさか...」
「人間との調和を望むか、ダメな人間をみて滅びの道に行くかはあなた様次第ですよ」
そいつは片方の口の端を上げながら言った。
俺はもしかして命を張った面倒な仕事を引き受けてしまったのではと思った。
「もしかしてこの子供って...」
俺はもう確信をもっていたが聞かずにはいられなかった。
自分の予想が外れてくれと思いながら。
「我ら魔族の父であり母である」
俺の背中から汗が伝う。
ゆっくりとその魔族の子供に目を向ける。
真っ赤な小さな口が開き圧倒的な魔力が部屋を満たす。
「我は魔族の始まりで終わりの存在、魔族は我から生まれ我の前で朽ち果てる」
俺はそいつから目が離せないでいた。
その小さな体から湧き出す圧倒的で禍々しい魔力。
全てを包み込み従わす。
「我は魔族のすべて、人間と相対する存在だ」
「この方は我らが魔族の主であります」