魔王さまと臆病者
「はぁ~」
ルイトは仕事から帰って来たままベットに横になった。
ルイトの家はこの国の魔族領に一番近い場所に建っている。
あたりにはルイト以外の家はなく明かりもない。
あの日の後、俺はしばらく呆然と立っていた。
気づいたら家に帰ってきてた。
あの魔族が笑った瞬間、心臓を握られたように俺は動けなかった。
それから俺は3日間寝込んだ・・・・・・。
悪夢にうなされながら俺はこれまでの行動を、いや人生を呪った。
そしてそろそろ働かなくては生活に困ると思いすぐに仕事をはじめた。
そう、あの日から5ヶ月も経っている。
左手の甲にある模様をみるが特になんの変化もない。
最初はビクビクしていたが1ヶ月が経ち2ヶ月も過ぎたときにバカバカしくなった。
このままなにもなければいい。
ルイトは仕事の疲れかそのまま眠りについた。
「そろそろ起きたらどうだ?」
澄んだ声が部屋に響いた。
「あぅ!?」
ルイトは勢いよく起き上がった。
周りを見たが特に変わったところはない。
気のせいだと思いまたベットに潜り込んだ。
「もう日は昇っておるぞ」
「は!?」
また勢いよく起き上がった。
今度は目の前にあの子供がいた。
ベットに上り立ち上がって俺を見下ろしていた。
な、なんでここにいるんだ!?
そいつは朝日の光が部屋に射す中にいるせいか顔がはっきりとわかる。
整った顔に透けるような白い肌、赤い目が爛々と輝いている。
そうか!!これは夢だ。
寝る前に考えていたから・・・。
ルイトはその小さな侵入者を見る。
「・・・」
「寝ぼけておるのか?」
首をかしげながら言う。
かしげた時に流れるサラサラの銀の髪に子供の特有の大きな瞳。
そして圧迫されるこの魔力。
「・・・」
「どうしたのだ?」
「・・・」
これは夢だ!!夢で返事をしたら目の前の魔族に魂食べられるってどこかのエセ魔術師が言っていた。
ルイトは体を震わせながらブツブツ言いだした。
「どうしたのだ?そなたは目を開けたまま寝ておるのか?」
「これは夢だ!!夢だ夢だ夢だ!!」
「そ、そなた大丈夫か?」
「出ていけ!!俺はもう寝るんだ!!」
ルイトは青筋を立てながら小さな侵入者に怒鳴った。
「...」
「いきなり来てお前はなんだ!!俺に何かあるのか?礼はいらないって言ったぞ、もうそれでいいだろう。あんな捨て台詞が気になってこの5ヶ月俺はちゃんとした睡眠ができてないんだ。俺の安眠を返せ」
この5ヶ月ずっと考えてたのだろう息を切らせながらルイトは言い放った。
そして肝心の本人はルイトが勢いよく立ち上がったせいで子供の体がベットから転げ落ちた。