魔王さまと飲んだくれ
ゾクッ!!
なんか寒気がする。
背中からゾワゾワと撫でられるような感覚で鳥肌がしてきた。
冷えたかな・・・・・?
さっき魔族の血を落とすために川で軽く洗い流した。
そのせいで体が冷えたのかもしれない。
あんな恰好では街には行けないと思ったからだ。
さっさと一杯やって温まろう。
そんな事を考えながらルイトは歩いていく。
......。
その後ろを追いかける小さな影があるのも知らずルイトの頭の中は酒と食い物で占められていた。
もう外は暗くルイトの姿を見失わないように慎重に動く。
「あ~!!やっぱりこの店の酒は相変わらずうめぇ!!」
ルイトは大きなカップを傾けながら呟いた。
周りは繁盛しているためそんなルイトの呟きは喧騒の中へ消されていった。
この酒屋の名前は「ロンカリアの親父」
ここの経営者のロンカリアの店だ。
・・・・・・・・・・・。
「やっぱりボロクてもここの酒の味が一番うめぇよ」
ルイトはもう一度この酒の美味さをここの経営者に叫んだ。
ケナしてんだかわからないが一応ホメてんだろうルイトは上機嫌だった。
「やだ~、ルイトちゃんったら嬉しいわ」
ロンカリアは綺麗な波打つ金髪の髪がなびかせながら振り向いた。
可愛いらしい名前のロンカリア。
言葉も仕草も女らしい。
「おい!!おい!!止めろよ!!」
ロンカリアはルイトの顔に熱いキスをしようとたくましい手を伸ばした。
ルイトを誘うかのように伸びた指をルイトは避けた。
そんなルイトを逃がさないかのように掴まれたもう片方の手がルイトの頭を掴んだ。
「もう、ルイトちゃんたら逃げないで」
「お、おい!!ホントにやめろよ」
ルイトは最初は冗談だと思ったがロンカリアが本気で迫ってくるのに気づき必死で避けた。
そのルイトを初めから冗談ではないロンカリアが掴みかかろうと手を伸ばす。
そんな二人の攻防を周りの連中ははやし立てる。
連中は自分に害が及ばないと思い楽しくしている。
誰もロンカリアに迫られて羨ましいなどと一切思わなかった。
そう、誰もだ......。
「逃げないで、私の熱いキッスを受け取って」
「いいぞー!!」
「そのままヤッちまえー」
周りから野次が飛ぶ。
「っ!!」
ルイトは顔を真っ青にして力いっぱいロンカリアを吹っ飛ばした。
ロンカリアがその野次馬のテーブルに勢いよく飛んで行った。
「もう冗談はよせよ!!」
ルイトは若干キレながら叫んだ。
「あん、ひどいわ」
ロンカリアは吹っ飛ばされても全然平気な顔をしながら起き上がった。
「冗談でもお前は迫るな」
ルイトはまだ顔を青くしながらロンカリアに言った。
ロンカリアはちょっと落ち込みながら仕事に戻っていった。
ルイトはちょっと言い過ぎたかと思い口直しに自分のカップを煽った。
ロンカリアの店の味は最高だ。
客も破落戸ばかりだが楽しく飲んでいる。
ケンカなんかしたらロンカリアの小部屋に強制連行だ。
その部屋から無事に出てきたやつはいない。
......なんと恐ろしいロンカリアの小部屋。
ロンカリアの謎は永遠に解き明かさないほうがいいだろう。
さぁそろそろ帰ろうかと思い席を立った。
「ロンカリア!!ごちそうさん、また来るよ」
ちょっと落ち込み気味のロンカリアにルイトは明るく言った。
ロンカリアはそんなルイトの声を聞き笑いながら見送った。
「今度は私の熱いキッスを受け取ってね」
ちょっと調子に乗ってるが。
「黙れダガスコス!!」
「もう!!ルイトちゃんそんな名前で呼ばないで!!」
"ダガスコス・ロンカリア・フェルベルト"
そう自称乙女のロンカリアの名前だ。
金髪のムキムキマッチョだ。
クネクネしながら身をよじるムキムキマッチョ。
性別はもちろん男。
だけど心と仕草は女。
そんなヤツに迫られたら食べた物を出しそうだ。
もうささっと帰ろうと思いロンカリアの親父を出た。
ゾクッ!!
また背中からゾワゾワとした。
風邪ひいたかな。
ルイトは前を合わせながら日が落ちて少し肌寒くなった道を早々と帰って行った。
修正中です。
ごめんなさい。