魔王さまと勇者
遅くて短くてすみません。
勇者が現れたか。
勇者はここ数年は現れなかった。
このタイミングで出るとはな。
リアは泉から出て考える。
勇者は誰でもなれるわけではない。
勇者は神に選ばれた人間の魂が宿るものが勇者なのだ。
勇者は死んでは転生の繰り返し、しかも記憶も魂に刻まれている。
だから魔王に殺された勇者の記憶が代を重ねるごとに憎しみが増えていく。
神は我よりも残酷なのだ。
神もまたこの世界にいるとは思うが会ったことがない。
会いたくもないがな。
さて、まずはルイトに状況の簡単な説明と一旦城に帰らなくてはな。
リアは足早にルイトの家に向った。
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リアが暴れたせいで部屋がめちゃくちゃだ。
俺は倒れた怪しげな花瓶をもとに戻す。
「はぁ~、もう疲れた」
コンコン
ドアをノックする音が聞こえた。
リアはノックなんてしないし、ましてやここに訪問客なんて滅多にこない。
「すみません」
聞き違いと思ったが声がした。
「はいはい、どちら様で?」
ドアの前には小奇麗な顔の男が立っていた。
服装はいかにも旅人だ。
道に迷ったのか?
「どうかしました?」
一応問いかける。
「僕はサライエと申します。少しお尋ねしたいことがありまして」
「はい、なんでしょう」
「実はここらで落し物をしてしまいまして、拾ったりとかしてませんか?」
綺麗な顔をしてるがちょっと抜けている感じがする。
落としたんじゃなくてスリにでもあったんじゃないか?
「いや、見てねえけど」
「命よりも大切なものなんです」
「そんな大切なもんをなんでもっと大事に持ってなかったんだ?」
「お恥ずかしいのですが、先日、とても暑くてここの近くの泉で涼んでいたところ、目を離した隙にいたずらな小鳥にかすめられてしまいまして」
「へー鳥がね」
「はい、親鳥を見つけてお仕置きはしたのですが、もうすでにそこにはなくて」
災難だな。
「そうか、けど俺は拾ってないしここにも届けられていないな」
「そ、そうですか」
サライエは肩を落とした。
「お世話になりました」
サライエは深々とお辞儀をし森の方に向かって行った。
「まぁ、もし拾ったりしたら預かっておいてやるよ」
可愛そうな感じだったので思わず言ってしまった。
「有難うございます」
サライエはまた頭を下げて行ってしまった。
しばらくして重要なことを思い出した。
「何を落としたか聞くの忘れた...」
まぁいいか。
拾うかわかんねぇしな。
さぁ、さっさと部屋を片付けねえと。