魔王さまとこれからを考える
バタンッ!!
勢いよく扉を開いたせいで扉がバウンドしてきた。
それにも拘わらず俺はカウンターに座っている人物に歩み寄る。
若干速足なのはここまで全力で走ってきたからだ。
「は~...。」
息が整うまでひとまずそいつの後ろで立ち止まった。
「は~。おい!!こっちを向け!!」
少し落ち着いてそいつに呼びかける。
だがそいつは聞いていないかのように何も反応しない。
「おい!!リア!!」
さっきより大きく声を張って呼びかける。
「我は何も聞こえんのだ」
反応したかと思ったらこの態度だ。
俺はイライラしてきたがここで切れたら大人げない。
「リア、ここは人間がたくさんいる。帰るぞ」
「嫌だ」
「おい、このままじゃ魔族だってばれるぞ」
「大丈夫だ。そなた以外は変幻魔術で人間に見えている」
「大丈夫じゃねえだろ。ばれたらどんな目にあうかわかってんのか?」
この国は魔族との国境に近くにあるせいか魔族が頻繁に出没する。
そのせいで国が魔族討伐隊を作った。
国民は発見したら国へ要請し、すぐに討伐隊が魔物を殺しにやってくる。
「大丈夫だ、この国の魔術師程度など我の魔術は見破れぬ」
「...それでも帰るんだ」
「嫌だと言うておろうに」
リアは全くこっちを見ずに背を向けて話してくる。
「おい、こっちを向けよ」
そろそろ限界になりリアの肩に手をかけこっちに向かせる。
「触るな!!我は今食事中なのだ!!」
「...」
リアは手にスプーンを持って振り返った。
「そなたは腹を空かせている我をずっと無視をしていたのだぞ。だから我は食料を自分で確保に出たのだ。我は悪くないのだ。そして今は食事中なので話しかけるな」
リアはまたカウンターに向き食事をはじめた。
俺は一気に力が抜けた。
なんか怒っている俺がバカバカしくなった。
確かに俺は無視し続けた。
単にリアが構ってほしくて起こしに来たと思ったからだ。
確かに空腹はつらい。
俺も傭兵として他国に行った時は空腹でとてもつらい思いをした。
空腹だととても自分がみじめにみえた。
俺はリアを見ながら考える。
「悪かったな。俺が今回は悪かった」
リアの頭を撫でて隣に座った。
こんな小さな子供にあんな思いをさせていたなんて。
俺が悪いな。
「うむ」
リアはうなずいただけで今食べているものに夢中だ。
よほどお腹がすいてたのだろう。
「ってかよくここに来れたな?」
「うむ、以前そなたを追っているときに来たことがある」
「あーそうね。たしかそんなことあったわ」
そう、ここは酒屋の≪ロンカリアの親父≫だ。
昼間はランチもやっていると店主に聞いたが来たことがなかった。
リアが一生懸命食べているのがここの一番人気料理のパニュパニュのスープだ。
パニュパニュの身と一緒に野菜を煮込んだ塩味のスープだ。
パニュパニュは中型の耳が長い動物だ。
臭みがなく柔らかい。
「まぁルイトちゃんいつの間にこんなかわいい子生んだの?」
笑いながら奥から出てきたのはこここの店主のロンカリアだ。
ここの料理はすべてこの店主のお手製だ。
「生んでない。俺にもマジシロチューの煮込みをくれ」
「わかったわ、少し待ってね」
店主は奥の厨房に戻った。
「ゆっくり食べろ」
リアはお腹がすいて懸命に食べようと思うが熱くてうまく食べれていない。
「...すまなかった」
リアはスプーンを置き俺に向き謝ってきた。
「ん?」
「勝手に出て行ってしまった」
「いや、俺が悪かった。確かに一言言ってほしかったがな」
「うむ、今度からそうしよう」
「...今度は俺も一緒に行くから一人で人間の集まるところには行くな」
「うむ」
これからリアの監視もちゃんとしなきゃな。
俺が心配してるのはこのちっこい魔王さまじゃなくこの国の討伐隊だ。
こんな小さくても魔王さまだ。
討伐隊じゃ一瞬でやられてしまう。
そんなになったら魔王領と人間領の戦争になっちまう。
それは一番避けたい。
俺がこいつをまともな魔王に育てなきゃこの国に住んでる人間は全滅だ。
はー...俺って人一倍ついてないと思う。
こんな俺にできんのかね。
「こぼしてる」
リアの口についているのをぬぐってやる。
「すまぬな」
まぁなんとかなるでしょ。
更新遅くて短くてすみません。