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昼食はファミレスで食べることにした。
「俺、この特大パフェが食べたい」
「食べきれます?」
「無理。なのでデザートではなく主食にします」
「お昼ご飯パフェってことですか?」
毎食なら心配になるが、たまには楽しそうだ。もっとも、今更一ノ瀬さんに健康について説いたところで無意味だろうが。
「俺はこのハンバーグにしようかな。......あ、ライス大盛り無料だ」
「まだ数回しか一緒にご飯食べてないけど、貴也くんってよく食べるよね」
「え、そ、そうですか?」
確かに少食の一ノ瀬さんよりは食べるが、そんなによく食べるだろうか。
「よくわかんないけど、いっぱい食べてるように見える。ワイルドでかっこいい」
「そうですか!?」
いっぱい食べてて良かった! 俺は顔に熱が集まるのを感じるが、やはり一ノ瀬さんは平然として、そのあと俺のことを見てニヤニヤと笑った。
「貴也くんは素直でかわいいな~」
「か、揶揄わないでくださいよ」
嘘だ。一ノ瀬さんにならいくら揶揄われてもいい。むしろ揶揄ってほしい。
「おまたせ致しました。特大パフェでございます」
「あ、はーい」
思わず「デカ!!!」と叫びそうになった。想像の一・五倍くらいある。生クリームの量は見ているだけで胃がもたれそうだ。
一ノ瀬さんはウキウキとスプーンを入れているが、食べきれるのだろうか。
しばらくすると案の定、「もうお腹いっぱい」と言い出した。
「交換しない?」
「え、ええ......」
やっぱり食べきれないじゃんとも思ったが、それ以上に一ノ瀬さんと食べかけを交換するという事実に戸惑った。嫌だったのではない。その逆だ。
「食べかけ、駄目なタイプ?」
「いえ......」
元からそういうのは気にしないタイプだし、一ノ瀬さんのならむしろいいんですか? 状態である。
「ならいいじゃん。おいしいよ? 俺、食べ物シェアとか一回やってみたかったんだよね」
シェアじゃなくて食べきれなかったから押し付けてるだけだろ、というツッコミは一旦置いておいて。いいのだろうか。俺なんかが一ノ瀬さんの食べかけなどという神聖なものを頂いてしまって。しかもこのパフェはかなり大きいから、付属のスプーンでないと食べられない。つまり、一ノ瀬さんが使ったスプーンを、俺が......!? そんなの許されるのだろうか。もしかしてこのあと隕石がピンポイントに俺の頭に落ちてくるのではないだろうか。
しかし一ノ瀬さんの頼みを断るなどというのも恐れ多い。いや、本音を言うと俺は完全なる下心から一ノ瀬さんの食べかけのパフェが食べたい。例えこのあと隕石がピンポイントに俺の頭に落ちてくるのだとしても。しかし大丈夫なのだろうか。無邪気にパフェとスプーンを差し出してくる一ノ瀬さんは、俺の下心に気が付いているのだろうか。あ、いや、俺が一ノ瀬さんをそういう意味で好きってことは知っているから、全く想定外ということはないか。なら大丈夫か。大丈夫か?
「貴也くん? 大丈夫?」
「あ、はい」
「パフェ苦手? それともやっぱり回し食いとか苦手だった? なら......」
「い、いえ! いただきます!」
回収されそうになったパフェを引き寄せ、スプーンを手に取る。無意識にゴク、と喉が鳴っていた。我ながら気持ち悪い。
できるだけスプーンに口を付けないようにパフェを食べた。最初から残す気満々だったのか均等にアイスやフルーツが残っている。味を楽しむ余裕など無いが。
一ノ瀬さんはもりもりと俺の食べかけのハンバーグとご飯を食べている。よく甘いものの後に脂っこいものを食べる気になるなと思うが、味が違うから案外いけるものなのだろうか。
なるべく雑念を消してパフェを完食した。そのせいで味は正直よくわからなかったのだが、胃にはもたれた。




