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星も見えぬほどに眩く  作者: 星川過世


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 好きな人、それも画面越しの存在だった人に恋人になってくれと頼まれた。疑似恋人に近いようなきもするけれど、俺なら好きになれそうとまで言われた。

 いくらなんでも都合が良すぎる。全部夢だったのではないかと思ってしまう。しかし連絡先一覧に新しく加わった連絡先が、紛れもなく現実であったことの証拠だ。

 いや、まだなんらかの詐欺やドッキリに引っかかった可能性は拭いきれないが。もしかしてものすごく似てる他人だったとか。でも俺がカズを見間違えるはずがない。

 などと考えていたら一ノ瀬さんからメッセージが来て飛び上がった。おそらく受信した瞬間に既読マークがついたことだろう。気持ち悪がられたらどうしよう。

 『今度、デートしたいな。映画はどう? そのあとお茶でも』

 「デート!」

 デート! 思わず叫んだ。隣の部屋から壁を叩かれ慌てて謝った。

 『ぜひ!』

 一ノ瀬さんは今在宅で裏方仕事をしているらしく、俺の予定に合わせてくれる。

 デート、一ノ瀬さんとデート......! というか昨日は色々ありすぎてそこまで頭が回らなかったけれど、本名を知ってしまった。

 一ノ瀬和紀、かぁ。かっこよすぎる。名前までかっこいいなんて......。

 

 「おまたせ」

 「いえ、全然待っていませんっ!」

 緊張しすぎて一時間前に着いていたが、そんなの待った内に入らない。コンサート会場にはいつも一時間前に着くし!

 それにしても、今日の一ノ瀬さんもかっこいい。長く伸びた髪は綺麗に結ばれていて、黒とグレーを中心としたファッションはシンプルでありながらオシャレなのがわかる。腕時計や帽子、鞄といった小物のチョイスにもセンスを感じた。

 「貴也くん?」

 「あ、すみません! 見惚れていました!」

 ちょっと照れたような顔で笑われ、叫びそうになった。が、往来なのでなんとか堪える。

 映画は事前のチャットによる打ち合わせで今流行っているヒューマンドラマを見ることになっていた。

 「原作読んだことありますか?」

 「いや、ない。映画見て面白かったら読もうかな」

 買っておいてくれたという前売り券を受け取って財布を出すと「奢るよ」と言われた。

 「えっ!? いえ、払いますよ!」

 「俺のわがままに付き合ってくれるんだからこれくらい奢らないと」

 「いやいや! むしろ『デートしてくださる代』を俺が払わないと!」

 なんなら俺に話し掛けてくれる言葉一つ一つに料金が発生してもおかしくないと思う。

 結局「いいから」と押し切られてしまった。ならお昼ご飯は俺が奢ろう。「さっき出してもらいましたから」と払えばスマートだろう。

 

 映画は、多分面白かった。隣に一ノ瀬さんが居て、集中できるはずもなかったのだが。

 映画館とは隣の人間とあれほど距離の近いものだっただろうか。一挙手一投足を気配で追ってしまって、制作陣及び関係者の方々には大変申し訳ないが映画の内容がまったく頭に入ってこなかった。

 「おもしろかったね」

 「そ、ですね」

 一ノ瀬さんは普通に見れていたらしい。それはそうだ。一ノ瀬さん側には緊張する理由がない。

 「どうしたの? あんまり好みじゃなかった?」

 「いえ、面白かったです!」

 多分!

 面白くなかった? ではなく好みじゃなかった? と聞いてくるところが好きだなと思いながら並んで歩く。

 俺は今、一ノ瀬さんと並んで歩いている!

 「お昼ご飯にちょうどいい時間だね。何が食べたい?」

 「一ノ瀬さんの好きなものでいいですよ!」

 本心だったが、言ったあとでちょっと後悔した。丸投げした感じになってしまったかもしれない。

 しかし一ノ瀬さんは気にした風もなくスマホでいくつか候補先を見せてくれた。事前に色々調べておいてくれていたらしい。なんてスマートで大人なんだ。

 「それじゃあこの、パスタの店がいいです」

 「いいね、行こうか」

 パスタも味がしないのではないだろうか。横顔を盗み見ながら思う。

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