第5章:gifted学園名物・サバイバル戦争《ウォーフィールド》
第5章:前書き「ようこそ、《ウォーフィールド》へ」
ようやく、来たんだ。
年に一度のgifted学園名物――《ウォーフィールド》。
俺たち一年生にとっては、最初の“本気の戦場”。
ここでは年齢も、肩書きも、科目の違いすら意味をなさない。
試されるのは、自分の“素”の力。そして、仲間との「絆」。
この章では、
・俺たち1年生チームが上級生を相手にどこまでやれるのか
・ドローン越しに映し出される、生のバトルと観客の熱狂
・そして、後に“伝説”と呼ばれるあのチームの始まり
が描かれている。
たぶんこの時の俺たちは、まだ知らなかったんだ。
この一戦が、俺たちの未来を決定づける“始まり”になるってことを。
けど、確かにここからすべてが動き出した。
能力でも、成績でも測れない、戦術と信頼の物語――
さあ、行こうか。
これは、俺たちの最初の《伝説》の記録。
第5章「gifted学園名物・サバイバル戦争」
gifted学園の朝は、いつもどこか騒がしいけど――今日は格別だった。
「いよいよ始まるぞぉぉおお!!」
「一年生が出るとかマジ!?伝説の予感!」
そんな叫び声が講堂横のスタジアムに響いてた。空にはドローンが100機、空撮映像をスクリーンに中継してる。実況は放送部のアヤノとレンジ。朝からハイテンションだ。
「実況はわたくし、アヤノと!」
「分析担当のレンジでお送りします。今年の注目は、天才一年生オリバー・ジョーンズ率いる新星チーム――」
「ちょっと。マハラジャ・ウォーカー様の間違いでしょ!」
訂正された瞬間、スタジアムに笑いと拍手。親衛隊が騒ぎ出す。
俺の親衛隊なんてのも、できてたらしい。知らなかった。というか、気づかなかった。
その中に、静かにモニターを見つめる一人の少女がいた。リリカ。クラスメイトで、たぶん俺のこと……うん、気の所為かな?
あんな綺麗な子が、俺なんか。
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舞台は、裏山を改造したバーチャル対応型サバイバルフィールド。
可視と不可視の地形が入り混じり、頭脳と連携力が試されるリアルバトル空間。
俺たちはスタート地点で、最終チェック中だった。
「弾はペイント弾。センサー直撃で退場。範囲攻撃でも反応するから注意して。ペイントの色はチームによって違っててウチはブルーよ」
ラファエラが冷静に全体を把握してた。
フェイ太郎が小刻みに跳ねてる。戦闘モード突入。
「作戦名:鉢掘りの復讐、いくわよ!」
ケイティが「やめて」と呟く。何度目のやりとりだろうか。でも、妙に頼もしかった。
号砲が鳴った。
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「さあ、戦闘開始です!中央ポイントに強豪が集結!」
アヤノの実況が空を割るように響く。
だが、そこに現れたのは――マハラジャだった。
馬型ロボ「エスカール」にまたがり、アーチェリー型ペイント弾を一射。
「罠の音源、逆探知済み」
マハラジャの矢が、音響罠を撃ち抜いて沈黙させる。絵になる男だ、ほんと。
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その頃、俺は裏へ回り込んでいた。
(このルートは死角、罠なしの確率87%)
ハチ公が足元の磁場をスキャン。OKのサイン。
一瞬のスキを狙って、敵の司令塔に狙撃を決めた。
「ジョーンズの精密射撃、決まったぁぁぁあ!!」
レンジの声が届いていたのかはわからない。でも、手応えはあった。
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休憩時間、タレンテッド科の催しが華を添えてた。
巨大筆をふるって空中に山水画を描く子。ヴァイオリンを奏でる6歳の天才少女。カノン・マエダ。
gifted学園って、やっぱり“何か”が違う。俺たちもその一部なんだ。
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後半。
ケイティは一度追い詰められたけど、鷲型ロボ「グラフィア」を上空に飛ばして陽動。
その間に、フェイ太郎が奇襲。
「クックックッ」
「うわっ!?ネズミ!?……違う、フェレットぉおお!?」
その隙を逃さず、ラファエラが仕留める。連携の美。
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そして終盤。残ったのは俺たちと、3年の強敵“爆雷のクラウス”。
クラウスは俺に向かって、笑いながら言った。
「一年坊主が、ここまで来るとはな」
「悪いけど、俺たちはここからだ」
エミールとクロスショット、マハラジャの突撃、ラファエラの包囲網、ケイティの上空妨害――
俺は最後の引き金を引いた。
勝負あり。
だが、ケイティに当たった、クラウスの放った最後の一撃で、彼は8位に落ちた。
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「勝者――“マハラジャ・ウォーカー”チーム!!」
スタジアムが歓声に包まれた。
俺たちは、確かに勝った。
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結果発表:
1位:オリバー・ジョーンズ
2位:エミール・モナーク
2位:マハラジャ・ウォーカー
4位:ラファエラ・バード
8位:ケイティ・バード
「くっそぉ……次はもっと上狙うからな!!」とケイティが叫んだ。
でも、その声には、誇りが混じっていた。
誰もまだ知らなかった。
この勝利が、“伝説の1年生編成”として語り継がれることを――
——第5章・完。
編集者、チャットさんからの一言
この章は、読者の皆さんにgifted学園の魅力を一気に伝えるための“中間決戦”です。
キャラクターたちの個性、チームワーク、そしてペットロボットたちの活躍を通して、オリバーたちの世界の広さと熱を少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
ちなみに、作者がこの章で一番好きなシーンは、ケイティの悔しがるラストシーンです。8位なのに、彼の目はすごく光っている。負けて強くなる人間が一番強いんじゃないかなと、書いていて思いました。
次の章では、また日常に戻ります。でも、彼らはすでに「ただの一年生」ではありません。
パンダからの一言、チャットさんはケイティが大好きです。
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キャラクター紹介3(第4.5章時点)
オリバー・ジョーンズ(1年生)
天才的な戦術眼を持つ少年。冷静な分析力と精密射撃でチームを陰から支える。ペットロボはロボット犬「ハチ公」。
マハラジャ・ウォーカー(1年生)
アラビアの王族にして自信満々の戦闘スタイルを貫くリーダー。騎馬戦型の戦法が得意。ペットロボは馬型「エスカール」。
エミール・モナーク(1年生)
直感型の戦士。高い反射神経と身体能力を持つが、黒豹ロボがやや暴走気味。オリバーとのクロスショットは必見。
ラファエラ・バード(1年生)
冷静沈着な司令塔。作戦立案と中距離支援が得意。フェレット型ロボ「フェイ太郎」の活躍を密かに支える。
ケイティ・バード(1年生)
戦略家だが、やや計算が狂いがち。空中戦の操作は得意。鷲型ロボ「グラフィア」を使って陽動作戦を展開。最終戦では惜しくも脱落するが、強い意志を持つ。
クラウス(3年生)
“爆雷のクラウス”の異名を持つ戦術特化型プレイヤー。最後まで1年生チームを追い詰めるも、オリバーの狙撃で敗れる。