第3章:「ギフテッド学園・最初の課題」
gifted学園の課題授業ってやつは、ただの「お勉強」じゃなかった。
そこには毎回、俺たちを試す“何か”が仕込まれてる。
それも、ただの罠じゃない。俺たちの「関係性」そのものを揺さぶるような、いやらしいやつだ。
この章では――
・俺たち5人が、初めて“仲間”として行動する
・エミールやケイティ、マハラジャ、ラファエラ、それぞれの得意分野がどう組み合わさるのか
・そして、母さんを殺したあの男――寮監督官の裏の顔に、俺が気づき始める
って内容になる。
才能ってやつは、ひとりじゃ動かない。
誰かと響き合って、初めて“力”になるんだって、この時少しだけわかりかけた。
チーム。仲間。信頼。
……そして、疑惑。
ここから俺たちの本当の冒険が始まる。
第3章:「gifted学園・最初の課題」
gifted学園に、“年齢順”なんてルールは存在しない。
あるのは、実力と適性。
評価は「観察・判断・創造」の三段階で、日々アップデートされる。
俺は10歳、マハラジャは12歳。ラファエラは俺より3ヶ月だけ年下の10歳で、ケイティはマハラジャと同い年。エミールは見た目9歳。でも、あいつの中身は……まあ複雑だ。
年齢がバラバラでも、俺たちは同じクラスになった。
どうやら、相当クセのある面子で編成されたらしい。
ちなみに噂じゃ、タレンテッド科には6歳で入ってるやつもいるとか。
どんだけチートなんだよ。
──
入学初日。教室のドアを開けた瞬間、全員の視線がこちらに突き刺さった。
静寂。空気が異様に冷たい。
(うわ、歓迎ムードゼロかよ)
そんな空気を切り裂いたのは、やっぱり彼女だった。
「おはよう。ラファエラ・バードです。今日からよろしく」
どこかで鈴が鳴ったような声。
一瞬で場が緩む。
するとすかさずマハラジャが前に出て、あの王子様スマイルで言いやがった。
「王族の名にかけて保証しよう。こいつらは信用できる」
「なに言ってんのよ、あんたが一番胡散臭いわよ」
ラファエラの返しに笑いが起きる。
……やるじゃん。
──
先生は来なかった。代わりに天井からドローンが降りてきて、教室にホログラムが浮かび上がる。
《初級フィールド訓練》
《目的:自己判断・協調性の測定》
《内容:グループで「隠された記号」を旧庭園から回収せよ》
(いきなりこれかよ……)
「俺、こういうの苦手なんだけどな」ってケイティが弱音を吐いた。
あいつ、植物以外はほんと無関心だからな。
「任せろ。俺は最初の課題は全勝だ」ってマハラジャが胸を張る。
「……毎回“最初”しか勝ってないんじゃ?」とエミールが刺す。
ナイスツッコミ。
──
旧庭園は、今じゃ立ち入り制限がかかってる場所だった。
ガラスの温室塔は半分崩れてて、あちこちにツタが這ってる。
「まるで廃墟だな」ってつぶやいた俺の足元で、ハチコウが急に地面を嗅ぎ始めた。
「ハチ?何かあるのか?」
「ワフッ!」
掘り出されたのは、金属の箱。中には一枚のカード――
“記号”って呼ばれる、ギフテッド学園での初期バッジだ。
けど、何かがおかしい。
端に「R-0」って刻まれてる。
意味は確か 裏切り者の道化師
「……誰かが先に触った跡だな」
「僕らを試してるのか?」とエミール。
「いや、もしかして排除しようとしてるのかも」ってケイティが珍しく低い声で言った。
(この学園、裏がある)
確信に近い何かが、喉の奥に引っかかった。
──
そのとき、崩れた温室塔の上から物音がした。
「誰かいるの?」
ラファエラが呼びかけたけど、返事はなかった。
俺が足音を忍ばせて近づくと、見えたのはあの男の後ろ姿――
寮監督官、バクスター。
けど、次の瞬間には、煙のように姿を消してた。
(やっぱり……この学園の裏には、何かがある)
──
その日、俺たちは“記号”を提出しなかった。
ただ持ち帰っただけ。
「このまま出したら、何かが始まる」って俺は思った。
「違うよ、仕掛けられるんだよ」ってケイティが、鉢植えの土をいじりながら言った。
──
数日後、学園に噂が流れた。
「1年A組の新入り、記号を握り潰したらしいぞ」
「王族にクローンに遺跡の子供って、何なんだよあいつら」
「犬連れてるやつとか、マジで謎」
聞こえないふりをしたけど――
俺たちは、確かに“見られて”いた。
「これで、敵がはっきりしたな」とマハラジャが低く言った。
(戦うんじゃない。記録しろ。証拠を残し、それを力に変えろ)
ダンの教えが、また心の中で熱くなった。
これはきっと、ただの“課題”じゃない。
誰かが俺たちを試してる。
……あるいは、狙ってる。
第3章:完
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【おまけコラム:gifted学園ペット図鑑 No.001】
フェレット型ロボット:フェイ太郎(FAY-TARO)
種別:家庭用多機能小動物型ロボット
製造元:HONDA生物模倣部門・実験系列
全長:42cm(ジャンプ時は+20cm)
鳴き声:「クックックッ」「ピピッ」「(鉢に飛び込む音)」
主な機能:
・学内監視カメラとの連携による移動制御
・匂いセンサー(ただし興味対象は“植物の根”)
・鉢植え掘削モード搭載(ケイティに即禁止された)
特記事項:
gifted学園の生徒ラファエラ・バードが所有する“家族型ロボット”。
一応、室内巡回・モニタリング用として設計されたはずが、
本人の「小動物っぽくして!」という希望によりフェレットの形状になった。
その結果、想定以上に“本能的”に近い挙動を取るようになり、
・鉢植えを掘る
・ケーブルをかじる
・人の寝床に潜り込む
など、日々「進化」している。
制作者も「そこまで学習させてない」と頭を抱えているらしい。
学園内での主なあだ名:
・“鉢泥棒”
・“地中スナイパー”
・“悪魔”
・“可愛いけど処分一歩手前”
飼い主の兄ケイティの一言:
「可愛いから許すけど、今度“ダ・ヴィンチ四号”掘ったら本当に売る」
次回も【金・土の夜】に更新予定です!
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