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8話 乙女のヒミツと極道の秘密

第8話 乙女のヒミツと極道の秘密


 夜――。

「いよいよ、叩き潰せそうですよ。冬枝んとこの麻雀小町」

 キャバレー『ザナドゥー』の薄暗い照明の下で、朽木の手にしたグラスの中のウォッカが揺れた。

 白虎組若頭補佐、霜田がソファから身を乗り出した。

「でかしました、朽木。これで、若頭の顔に泥を塗ってやれる」

 榊原は、白虎組次期組長の座を争う霜田のライバルだ。冬枝が大敗を喫せば、その兄貴分である榊原の名にも傷が付く。

「冬枝と、勝負の約束を取り付けました。賭ける金は3千万」

「冬枝に、そんな金があるんですか?」

 冬枝が平の組員に過ぎず、朽木から金を脅し取られていることは、霜田も把握している。

 朽木はタバコの煙を吐いた。

「ありゃしませんよ、3千万なんて。だから、金は勘弁してやる代わりに、あの女をうちのデリヘルでこき使ってやります」

「そりゃいい。代打ちなんかより稼げるでしょうよ」

 霜田が手を叩いて喜んだ。

「そんな勝負、よく受けさせましたね」

「天狗になってる冬枝と女の足をすくうぐらい、朝飯前ですよ」

「ですが、麻雀小町は強いのでしょう?勝てますか」

 裏カジノでさやかに負けたことが頭をよぎり、一瞬、朽木の顔が不快げに歪んだが――兄貴分の手前、すぐに笑みを取り繕う。

「安心してください。東京で、面白い打ち手を見つけました」

 ――お高く止まってる小娘に、冬枝の前で恥をかかせてやる。

 朽木は部下に命じると、店の奥に控えていた男を霜田に紹介した。



 朽木との対決の舞台は、白虎組の後援者が経営するリゾートホテルである。

 ホテルのレストランで、冬枝とさやか、そして無理矢理ついて来た嵐が、夕食の席を囲んだ。

「まさか、俺が飲んでる間に朽木と一悶着あったとはな」

 冬枝が憮然としてワインを飲むと、さやかが「すみません」と言った。

 先日、裏カジノでの麻雀が終わった後、さやかは朽木がマキという少女に絡んでいるところに出くわした。マキを助けるためにさやかは朽木と勝負し、勝利したものの、朽木は根に持ったらしい。全ては、冬枝の目がないところでの出来事だった。

「なんで、わざわざ面倒事に首を突っ込むんだ」

「…すみません」

 さやかが、しゅんとして肩を落とす。横から、嵐が茶々を入れた。

「おーい、ダンディ冬枝。今のさやかを叱ってると、ダンディ冬枝がケガの犯人みたいに見えますよ」

 さやかの額と頬には、ガーゼが貼られている。先日、朽木に殴られた傷だ。

 嵐は肩をすくめた。

「ま、朽木は冬枝さんと同じ白虎組の組員なんだから、ダンディ冬枝がケガの犯人、って言っても間違ってねえか」

「間違ってますよ。僕を殴ったのは朽木です。冬枝さんと一緒にしないでください」

 それに、このケガはいわば、さやかと朽木のケンカによるものだ。冬枝に非はない。

 しかし、冬枝に対する嵐の不満は収まらない。

「冬枝さん、あんた、さやかをこんな顔にするために代打ちにしたのか」

「てめえには関係ねえだろ。元おまわりに説教されるいわれはねえ」

 冬枝とて、さやかが朽木から殴られたことに責任を感じていないわけではない。ただ、嵐に責められる筋合いはなかった。

「元おまわりだから言ってんですよ。俺は、ヤクザに泣かされた女を何人も見てきた。ヤクザと関わって、人生を狂わされた女だって山ほどいる。さやかには、そうなって欲しくねえんだ」

 派手なピンクの革ジャンに似合わぬ、嵐の真剣な言葉に、さやかは胸を衝かれた。

 ――嵐さん、僕のためにそこまで……。

「見てくださいよ、さやかの面!胸はペッタンコなのに、顔はパンパンに腫れ上がっちまって!ただでさえ麻雀狂いで嫁の貰い手がいないってのに、これじゃ、嫁き遅れ確定だ!」

「…そんなに腫れてません」

 嵐を一瞬でも見直しかけたことを、さやかは後悔した。

 冬枝は、苦々しい気持ちでタバコに火をつけた。

「さやかはただの代打ちなんだから、波風立てるなっていうんだ」

「…自分でも、バカなことしたなって思ってますよ」

 さやかは、素直に認めた。

「麻雀では勝てても、腕っぷしでは朽木に敵いっこない。分かってはいたんですけど、譲れなかったんです」

 冬枝から平気で金をむしり取る朽木を、見過ごすことなどできなかった。あの時は、後先なんて二の次だったのだ。

 ふと、さやかの脳裏に朽木の言葉が蘇った。

「あいつは俺の女を取った。だから、俺に金を渡してるのさ」

 殴られたことより、その言葉のほうがさやかの胸に刺さっていた。

 冬枝の過去に何があったとしても、関係ない。さやかは、冬枝の下で麻雀が打てれば十分だ。

 それなのに、不安が心に押し寄せる。その不安の正体が、さやかには掴めなかった。

 さやかが胸をもやもやさせていると、冬枝が顔を覗き込んできた。

「さやか」

「へっ?な、なんですか」

 いつの間にか冬枝の顔が至近距離にあったので、さやかはうろたえた。

「痛むのか、傷」

 どうやら、さやかがずっと押し黙っているので、冬枝は心配したらしい。

 ――冬枝さん…。

 優しいことを言われると、ますます胸がよじれる。冬枝を信じたいのに、朽木の言葉が本当だったら、という恐れがさやかを惑わせる。

「…平気です。かすり傷ですから」

「かすり傷じゃねえだろ。強がるなよ」

 冬枝にポンポンと肩を叩かれて、さやかは何も言えなくなった。

「にしても、さやか、今日はずいぶん気合入ってるな」

 嵐が言ったのは、さやかが着ている真っ赤なスカジャンのことだろう。

 このスカジャンは、出発する直前、マキがさやかに託してくれたものだ。

「ごめんね。あたしもついていきたかったんだけど、北高の奴らにケンカ売られちゃって」

 マキは聖天高校のお嬢様姿から、ルージュを決めた不良少女姿に変身していた。

 マキはスカジャンを脱ぐと、さやかに羽織らせてくれた。

「これ着てって。あたしの代わりに連れて行ってちょうだい」

「いいんですか?」

「それ着てれば、朽木なんかに負けないわ。ぶちかましてきな」

 そう言って、マキは口紅をさやかの唇に引いた。

 ――マキさんのためにも、負けられない。

 この勝負に勝ったら、さやかを殴った落とし前をつけさせる、と冬枝は息巻いていた。だが、さやかは別の条件を考えていた。

 レストランを出ると、冬枝は傍らにいる嵐に告げた。

「嵐。てめえは帰れ」

「ええっ。今夜の麻雀、プロレスみたいに観戦チケット必要だっていうんですか?」

 嵐が「おじさん、当日券はなんぼ?」とふざけて差し出した手を、冬枝はペシッと払い除けた。

「そうじゃねえ。今夜は大金を賭けた勝負だ。元おまわりにうろつかれちゃ敵わねえ」

「何ですか?俺が『もしもし、おまわりさん!ヤクザがホテルでバクチやってます!』って110番するとでも?」

「そうだ。てめえは信用できねえ」

 冬枝が正面から睨み据えても、嵐は脱力した笑みで受け流す。

「そんなこと言うなよ、俺とダンディ冬枝の仲じゃないっスかぁ」

「どの口が言ってんだ。とにかく、部外者は立ち入り禁止だ。大人しく家に帰りな」

「お断りですね」

 嵐はポケットに突っ込んでいた手を出すと、さやかの肩を引き寄せた。

「今夜は朽木との勝負なんでしょう?さやかがまた、朽木に殴られるようなことになったら、ワイルド嵐の名折れです。俺もガッチリ、そばにつけさせてもらいますよ」

「迷惑です」

 腕の中のさやかから心底、嫌そうな声で言われ、嵐が目を丸くした。

「嵐さんの気持ちはありがたいですが…、今夜の勝負は、若頭も見に来るんです。無関係の人を連れて来たら、冬枝さんが叱られちゃいます。最悪、僕たちが反則負けってことにもなりかねません。だから嵐さん、今夜は遠慮してもらえませんか」

 顔に傷のあるさやかから、至って冷静に諭された。流石の嵐も、ここでごり押しするのはさやかのためにならない、と考えたようだ。

「分かったよ。でも俺、帰らねえからな」

「えっ?」

「張り込みは刑事の十八番なの。ヤーさんたちに気取られないよう、その辺をぶらついてますよ。何かあったら、すぐにでも駆けつけるからな、さやか」

 さりげなく胸にぺたりと触られ、さやかは「ぎゃっ!」と叫んで飛び退いた。

「チカン、変態、変質者!帰れ!」

「言われてますよ、ダンディ冬枝」

「俺じゃねえ、てめえだ!嵐!」

 さやかと冬枝の両方から、蹴られるようにして嵐はホテルのラウンジへと去った。



「僕が勝ったら、冬枝さんからお金をむしるのをやめてください」

 ホテルの遊技室で朽木と対面したさやかは、開口一番そう切り出した。

「さやか」

 朽木に金を無心されていたことを、いつの間に知られていたのか。驚くと同時に、冬枝は頭を抱えたくなった。

 ――どこまでお人好しなんだ、お前は。

 冬枝の窮状を知ったさやかは「代打ちの報酬はいらない」と言っていた。その上、今度は冬枝のために朽木に挑んだのだ。

「ハハハ。こんな小娘に金の面倒見させて、極道が廃るってもんだぜ」

 朽木の冷笑を、冬枝は「うるせえ」と撥ね返した。

「てめえこそ、女の顔に傷付けて恥ずかしくねえのか」

「女を好きに扱っていいのが極道の特権だろ?」

「そんな特権、誰にもねえ」

 一触即発となった冬枝と朽木に、「よせ」という冷静な声がかかった。

「仲間内でケンカするんじゃねえ。やるなら麻雀でケリつけろ」

 緑のスーツに身を包んだ、白虎組若頭・榊原である。

 今夜は組員同士の対決であり、賭けられている金も高額だ。立会人として、冬枝側は榊原、朽木側は霜田、と双方の兄貴分を呼んでいた。

 多忙な幹部2人がわざわざ駆けつけたのは、これが双方の代理戦争であると、暗黙の了解があるからだろう。

 朽木は、背後に40がらみの男を連れていた。

「紹介するぜ。東京から呼んだ代打ちだ」

「猿竹です。よろしくお願いします」

 慇懃に頭を下げた猿竹は、代打ちにしては小ざっぱりとした容貌をしていた。清潔感のある白いジャケットは、病院を連想させる。

 と、その猿竹が、冬枝の隣にいるさやかをちらりと見た。

「夏目さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」

「えっ?」

「ほら。僕ですよ」

 猿竹の顔をじっと見たさやかの顔が、サーッと青くなった。

「さやか。知り合いか」

「……」

 絶句するさやかに代わって、猿竹がニコニコと答えた。

「僕、東京で医者やってましてね。その時に、こちらの夏目さんを診察したことがあって」

「は、早く始めましょう」

 さやかは猿竹を遮ると、逃げるように麻雀卓へと向かった。

 朽木と猿竹は、顔を見合わせてニヤニヤしている。冬枝はきな臭いものを感じた。

 ――あの医者、さやかの弱味でも握ってるのか。

 卓には、さやかと猿竹、そして冬枝と朽木がついた。形としてはさやかと猿竹のサシ馬勝負だが、朽木がどんな反則を使ってくるか分かったものではない。

 ――俺がいりゃ、さやかを守ってやれる。

 幹部2人が見守る中、3千万を賭けた半荘勝負が開始した。



 組の最高幹部2人が揃っていることもあり、麻雀中に恫喝やイカサマの類が行なわれる様子はなかった。

 猿竹の出現に青ざめていたさやかも、対局が始まると、いつもの冷静さを取り戻した。いかつい男3人に囲まれているとは思えないぐらい、順調に手を作っている。

 ――流石、麻雀バカだな。

 冬枝が安心しかけたのも束の間、東一局をさやかが制した後のことだった。

「それにしても、夏目さんがお元気そうで安心しましたよ」

 さも世間話のように始めたのは、例の医者――猿竹である。

 理牌していたさやかの手が、ぴくりと動きを止める。

「なにせ、再発しやすい病気ですからねえ。もう大丈夫ですか?」

「………ええ」

 さやかは努めて平静を装っているが、顔がこわばっている。

「夏目さんのことはね、特に覚えていたんですよ。若い女性の患者さんなんて、珍しいですから」

「恥ずかしいよな、女がアレにかかるのは」

 朽木にまで嘲られ、さやかの顔が真っ赤になった。

「てめえら、いい加減にしやがれ」

 見かねた冬枝が卓を叩くと、朽木が「おー、怖」とおどけて両手を広げた。

「おいおい、冬枝。うちの猿竹は見ての通り、か弱いお医者様なんだ。脅されちゃ困るぜ」

「脅しだぁ?」

「いいんです、冬枝さん。気にしないでください」

 幹部2人がいる手前、猿竹を殴って黙らせることも出来ない。朽木と猿竹は表面上、雑談しているだけだからだ。

 ――だが、これじゃさやかが嬲りものだ。

 冬枝は、黙って猿竹と朽木を睨み付けることしか出来なかった。

 不意に、猿竹がそばにいた若い組員に声をかけた。

「すみません。水、もらってもいいですか」

「!」

 その瞬間、さやかが大きくビクッと震えて、手牌を倒してしまった。

「さやか!」

「す、すみません」

 さやかは慌てて牌をまとめたが、手牌の大半を朽木たちに見られてしまった。朽木と猿竹が、にやにやと視線を交わし合った。

 その後も、さやかのペースは乱れていた。明らかに、猿竹に翻弄されている。

 ――よっぽど、病気のことを知られたくねえみたいだな。

 こんなに苦しそうなさやかは初めて見た、と冬枝は思った。

 結局、さやかはいいとこなしで東二局を終えた。

「ちょっと、お手洗いに行ってきます」

 さやかは、よろめくような足取りで席を立った。

 冬枝も卓を離れ、外のテラスで夜風を浴びた。

 冬枝がタバコに火をつけると、さりげなく嵐が寄ってきた。

「ダンディ冬枝。勝負、さやかが負けてるみたいですね」

「てめえ、なんで知ってんだ」

 今夜の勝負は、麻雀卓のある遊技室を貸し切りにして行なわれている。その間、嵐は外でうろついていたはずだ。

「さっき、トイレに行くさやかとすれ違ったんですよ。さやか、ボロボロじゃないっスか」

「ちょっと、厄介なことになっててな」

 冬枝は、さやかと猿竹という医者のことを簡単に説明した。

「よいでねことになりましたね。相手にいつ弱味をバラされるか、ってビクついてたんじゃ、流石の麻雀小町も勝てませんよ」

「ああ」

 ――もう、さやかが苦しんでる姿は見たくねえ。

 冬枝はもうこの際、勝負なんて放り出して、朽木と猿竹をぶん殴ってしまいたいという衝動を押さえるのに精一杯だった。

 大好きな麻雀を打っているのに、あんなに辛そうな顔になるぐらいだ。さやかは相当、猿竹の脅しが堪えているに違いない。

 ――畜生。これじゃ、俺がいても何にもならねえじゃねえか。

 そばにいても、さやかを守ってやれない。口惜しいが、何も出来ないのだろうか。

 冬枝の葛藤とは真逆に、嵐はどうでもいいことを言い出した。

「にしても、さやかがそのヘボ医者に診てもらった病気って、何なんでしょうね」

「知るかよ。詮索するな」

「若い女子が知られて恥ずかしいってことはー…妊娠?」

「てめえ、まだ言うか」

 さやかが高校の同級生である小池と再会した際も、嵐は同じことを言った。冗談にもほどがある、と冬枝は顔をしかめる。

「じゃあ、女の体の病気じゃないスか。大事なところを見せた相手が目の前にいるってのは、女子にはしったげきちいでしょうねえ」

 嵐は「知ってますか?ダンディ冬枝。婦人科ってのは台に乗って、こう、股をカパーッと開いて…」と身振り手振りで説明した。

 冬枝は、手を振って嵐を制した。

「うるせえ。てめえ、本っ当にはんかくせえことしか言わねえな」

「あーでも、若い女子には珍しい、とも言ってたんでしたっけ。うーん…」

 嵐は腕を組んで考えると、「分かった!」と声を上げた。

「痔だ!」

「あぁ?」

「痔ですよ、ケツが痛くなるほうの痔」

「それぐらい知ってる。でけえ声で何度も言うんじゃねえ」

 さやかが聞いてやいないか、と冬枝はテラスの窓をちらちらと窺ってしまう。

「麻雀やってると、長時間座ってることもザラっスからねえ。まして、さやかのあの性格だと、麻雀に没頭したらトイレなんか二の次でしょ。結果、めでたく痔主の仲間入り」

「お前、よくそうポンポン出てくるな」

 嵐の軽口に呆れつつも、確かに、痔なら恥ずかしいかもしれない、と冬枝も納得しなくもない。

「いっそ、あの医者に聞いちゃったらどうですか?せんせーは、何科のお医者さんですかー?って」

「ダメだ。さやかが動揺する」

「冬枝さんは気にならないんですか?さやかが何の病気だったのか」

 嵐に聞かれて、冬枝は「どうでもいい」と答えた。

「さやかは、俺の代打ちとして文句のない腕前を持ってる。それで十分だ」

 それは、冬枝の偽りない心情だった。

 冬枝は、これまで何度もさやかに助けられてきた。さやかを代打ちにして恥ずかしいと思ったことなど一度もない。

 世間が何と言おうと、さやかは立派な雀士だ。過去のことなど、あれこれ掘り下げるつもりはない。

 嵐は「知っておいたほうがいいんじゃないっスか?」とニヤニヤした。

「さやかの病気によっては、ダンディ冬枝にうつっちまうかもしれませんよー?」

「てめえ、しつけえな!俺とさやかは、病気がうつるようなことにはならねえ!」

「あれー?ダンディ冬枝、ナンの病気想像してるんですかー?スケベ、スケベ」

「黙れってんだ!朽木の前にてめえをぶん殴るぞ、この野郎」

「ハッハッハ、抑えてくださいよ、ダンディ冬枝。まだ勝負は途中なんでしょ?その手は、牌を握るのに使ってください」

 でも、と嵐は不意に真面目な目付きになった。

「冬枝さんたちが勝ったら、朽木をぶん殴ってやってくださいよ。さやかを殴ったうえ、恥までかかせようなんて輩、許しちゃおけません」

 さっきまで軽口ばかり叩いていたくせに、その言葉は真っ直ぐで清々しかった。

 ――この男、嘘はつかねえ。

 恐らく、くだらない冗談も、時折見せる真剣な様子も、全てが嵐の本心なのだろう。アケスケだが、己をさらけ出しても構わないという強さでもある。

 ――さやかも、このぐらい図太ければ良かったのかもしれねえな。

 同級生だった小池と対決した時も、さやかは無意識に自分を強く見せようとして、己のペースを見失った。極道相手にも怯まない女子だが、脆いところはある。

 そんなさやかを守るのが、冬枝の役目だ。嵐の背中が、そう語っているようだった。



 さやかは一人、女子トイレで重い息を吐いた。

「はぁ……」

 大きな鏡に映る自分は、見るからに憔悴している。弱り切った顔が情けなくて、さやかは自分の頬を両手で叩いた。

 パーン!

「いったぁ…!」

 自分が朽木に殴られた後だというのを、すっかり忘れていた。頬と鼻がジンジン痛んで、さやかの目に涙が滲んだ。

 ――何やってるんだ、僕は。

 今夜の勝負は、絶対に勝ちたい。勝って、冬枝を朽木の呪縛から解放したい。

 さやかの燃え上がる闘志は、猿竹の登場で水を浴びせられてしまった。

 ――あの病気のことが、冬枝さんに知られてしまったら……。

 あの病気にかかって、家族から散々白い目で見られたのだ。冬枝にも軽蔑されたら、と考えると、麻雀どころではなくなってしまう。

 ――ダメだ。牌に集中しないと…!

 さやかは、縋るようにマキが貸してくれたスカジャンの裾を握り締めた。真っ赤なスカジャンは、さっさと勝てと急かしているかのようだ。

 さやかが勝たなければ、冬枝はいつまでも朽木にたかられる。2人の間にどんな事情があるにせよ、さやかの力で冬枝を助けられるなら、さやかは戦う。

「あいつは俺の女を取った。だから、俺に金を渡してるのさ」

 タバコの幻臭と共に、朽木の言葉がさやかの中に蘇る。

 ――冬枝さんが……朽木の女を……。

 冬枝が知らない女性といる様を想像しかけて、さやかは首を横に振った。

 もう、何度同じ妄想にとらわれたか分からない。考えたところで、さやかには知りようのないことなのに、心が同じところを行ったり来たりする。

 ――今はとにかく、勝つんだ!

 洗面台の蛇口をひねると、さやかはバシャバシャと顔を洗った。傷に染みたが、さやかは冷たい水を何度も自分に叩きつけた。



 冬枝が嵐と別れて遊技室に戻ると、卓のほうが騒がしくなっていた。

 何だと思って冬枝が向かうと、幹部2人がスーツ姿の男を引き連れてきたところだった。

 日に灼けた肌に精悍な体格、サングラスの向こうの眼に底知れない暗さを湛えた男――白虎組組長・熊谷雷蔵である。

「親分!」

「よう、冬枝、朽木。面白そうな勝負してるっていうから、見に来てあげたよ」

 流石の朽木も起立して、神妙に頭を下げている。

 さやかもちょうど戻っていたため、組長にお辞儀をした。

「久しぶりだね、お嬢ちゃん。活躍は聞いてるよ」

「はい…ありがとうございます」

 力なく頷くさやかの顔を見て、組長が怪訝そうにした。

「ん?何これ。ケガしてるじゃん」

「あ…これは」

「不良とケンカでもしたんでしょう。最近じゃここらも、スケバンまがいのガキがうろついてますから」

 さやかを殴った張本人である朽木がぬけぬけとそう言ったので、冬枝は頭に血が上った。

 ――この野郎、親分の前で抜かしやがって。

 握り締めた拳に、痛いほど爪がめり込む。そんな冬枝を嘲笑うように、朽木がニヤリと口角を上げた。

「ここからは、親分も同席する。双方、親分に恥ずかしくないよう、正々堂々打つように」

 朽木への牽制でもないだろうが、榊原がそう言って、場の空気を引き締めた。



 南一局になっても、さやかは精彩を欠いていた。かろうじて2位をキープしているが、トップである猿竹との点差を埋められずにいる。

 一方、朽木側も余裕とは言えなかった。さやかと猿竹の雀力に差があり過ぎて、さやかを脅すぐらいでは決め手にならないことが分かってきたからだ。

 ――このままじゃ、勝負をいつ引っ繰り返されてもおかしくない。

「なあ、冬枝」

 現在、最下位にある朽木が、内心の焦りを押し隠したような笑みで話しかけてきた。

「何だ」

「てめえはこの女が東京で変な病気にかかってたこと、知ってるか?」

 ぶしつけに親指で顔を指され、さやかの目が泳いだ。

「知るか。興味もねえ」

 冬枝は吐き捨てるように言ったが、朽木はしつこい。

「知っておいたほうがいいと思うぜ。何せ、人にうつるからな。なぁ、猿竹」

 猿竹も「はい」としたり顔で頷く。

「品行方正なお嬢さんだったら、絶対にかかったりしない病気ですよ。一体、どこでうつされたものやら」

「それ見ろ。清純そうな面して、東京じゃどんないかがわしい生活してたんだか、分かったもんじゃねえ」

 朽木に愚弄され、さやかが恥ずかしそうに俯いた。

 それを見て、冬枝が声を荒らげた。

「朽木。それ以上言うと、二度と喋れねえようにしてやるぞ」

「組長の前ですよ。慎みなさい、冬枝」

 横にいた若頭補佐・霜田が、甲高い声で制した。露骨に朽木の肩を持っている。

 さやかはもはや、牌を打つ手も弱々しい。点差を取り戻そうと躍起になっては先走り、今度は慎重になり過ぎて出遅れるなど、空回りが続いた。

 南二局の後、冬枝は休憩を宣言した。

「さやか。ちょっといいか」

「……はい」

 バルコニーに出ると、頭上に星空が広がっていた。

 夜風になびく枯れ葉色のスーツの背に、さやかは頭を下げた。

「すみません。次の局で、必ず勝ちます」

「謝るな。それに今のお前じゃ、あいつらに勝てねえ」

 冬枝に断言されても、さやかは食い下がった。

「絶対に勝ちます。マキさんのためにも、冬枝さんのためにも、勝たなきゃいけないんです」

 さやかは、マキからもらったスカジャンの裾をぎゅっと握り締めた。

 3千万という高額、マキへの義理――それらがプレッシャーとなって、余計に猿竹相手に過剰反応してしまうのだろう。

 ――真面目な奴だな。

 受験に落ちるぐらい麻雀が好きなくせに、さやかは人のために打つことを厭わない。そんなさやかだからこそ、冬枝は代打ちに選んだのかもしれなかった。

「…さやか」

 冬枝はさやかの両肩を掴むと、屈んで目と目を合わせた。

 不安げに揺れるさやかの瞳を、冬枝は真っ直ぐに見つめる。

「負けるな、さやか。クソ医者や朽木のことなんか、考えなくたっていい。俺のことも忘れろ。自分自身のために闘え」

 ――負けるな、さやか。

 心の中で、冬枝はもう一度言った。

 勝負の結果など、どうなろうと構わない。あんな卑劣な連中に、屈して欲しくなかった。

 さやかの目が、大きく見開かれた。

「冬枝さん…」

「俺には、お前の勝つ姿しか見えねえ。それ以外はどうでもいい」

 さやかの肩を強く握り、冬枝はさやかを励ました。

「俺に、お前の解とやらを見せてみろ」

「…はい!」

 さやかの眼差しに、力が戻っていた。冬枝は、よし、と言って微笑んだ。



 冬枝とさやかが卓に戻ると、朽木が「作戦会議は終わったか?」と皮肉っぽく言った。

「そんな汚え女とよく一緒にいられるな、冬枝」

「てめえの面見てるよりマシだ」

 冬枝はちらりとさやかを見たが、さやかはもう雀士の顔になっていた。朽木の言葉など、聞こえていない。

 ――いける。

 実際、そこからは早送りのようだった。そもそも、さやかと猿竹たちでは腕が違うのだ。冬枝が援護するまでもなく、完全に場はさやかに支配された。

「ツモです」

 猿竹たちに付け入る隙を与えないまま、さやかは勝負を制した。

「くそっ…」

「………」

 朽木は打ちひしがれ、猿竹も顔色を失っている。

 さやかの微笑みに、冬枝も黙って頷いた。

 ――よくやった、さやか。

 幹部2人と共にソファで見ていた組長が、パチパチと手を叩いた。

「凄いねえ、お嬢ちゃん。圧勝じゃん」

「ありがとうございます」

 冬枝が頭を下げ、榊原が朽木に迫った。

「朽木。金は用意してあるんだろうな」

「…勿論です」

 悔しそうに言う朽木を、さやかが呼び止めた。

「朽木さん。僕が勝ったんですから、約束通り、冬枝さんからお金を強請るのはもう金輪際、なしにしてください」

「………」

 すると、組長が「あ?」と聞き咎めた。

「なに、朽木。お前まだ、冬枝から金もらってたの?」

「いや、その…」

「もう済んだ話じゃないの。仲間の銭にたかるなんて、つまんねえことしなさんな」

 呆れたように嘆息すると、組長は「お前には、女で稼いだ小遣いがあんだろ」とぼそりと言った。

「………!」

 デリヘルは、朽木が組に無断で経営している。その金で朽木と霜田が私腹を肥やしていることも、見透かしているような口ぶりだった。

 朽木は部下たちが持ってきたアタッシュケースをひったくると、冬枝に突き付けた。

「ほれ、冬枝。貧乏人には破格の金だ。受け取れ」

「いらねえよ、そんなもん」

 それより、と言って、冬枝は朽木に頭突きを食らわせた。

 目にも止まらぬ速さの頭突きに、朽木は避ける余裕もなかった。

「ぐっ!」

 朽木が額を押さえてよろけたが、冬枝はすかさずその胸倉を引っ掴む。

「これでおあいこだ」

 冬枝の拳が、勢い良く朽木の鼻っ面に叩き込まれた。

「げぇっ」

「く、朽木さん」

 朽木が鼻血を噴いて倒れ、そばにいた猿竹が、目を白黒させた。

「俺の代打ちに手出しやがって。次やったら、こんなもんじゃ済まねえぞ」

 朽木の恨みがましい視線を感じたが、冬枝は振り返らず、さやかを連れてその場を去った。



 帰りの車中で、冬枝は軽く額を押さえた。

「いってぇ…」

「冬枝さん、大丈夫ですか?」

 あそこまでしなくても良かったのに、とさやかが言うと、冬枝が首を振った。

「俺の気が済まねえだけだ。朽木をぶん殴るために受けた勝負だからな」

 朽木は、さやかを殴って血だらけにしたのだ。本当はもっと痛めつけてやりたかった、と冬枝は悔しがる。

「でも、組長さんたちの前でやっちゃって良かったんでしょうか」

「それはまあその、うん、あれだ」

 榊原は分かってくれるだろうが、朽木の兄貴分である霜田はカンカンだろう。組長に至っては、どう思われたのか、あまり考えたくない。

「さやか、お前も大変だったんだなぁ」

 助手席に座っている嵐が、同情するように目を細めた。

「は?」

「東京には悪い男がたくさんいるからなぁ。知らず知らずのうちに、うつされちまうこともあるよなぁ」

 芝居がかった調子でヨヨヨと泣くと、嵐は「痛いよなあ、クラミジアは」と言った。

 さやかは顔を真っ赤にすると、後部座席から猛然と身を乗り出した。

「誰がっ…!僕はただの水虫です!」

「水虫ぃ?」

 冬枝が素っ頓狂な声を上げると、さやかがしまったという風に口を押さえた。

 嵐が助手席から首をひねった。

「何?お前、水虫だったの?」

「………」

 さやかは力なく肩を落とすと、渋々「……はい」と認めた。

「東京の雀荘で共用のスリッパを使ってたら、うつされたんです」

「それで、あの猿竹って医者に診てもらったのか」

「せんせー、皮膚科医だったのね」

 嵐が言い、冬枝も納得した。確かにうつるし、若い女子には珍しい病気ではある。

「大丈夫っスか?ダンディ冬枝。さやかに水虫、うつされちゃったんじゃありませんか?」

 嵐はニヤニヤ笑うと、「麻雀小町ならぬ、水虫小町」と言って口元を覆った。

 さやかが、怒って拳を振り上げた。

「水虫小町って言うな!」

「ダンディ冬枝、水虫小町はクビにして、俺を代打ちにしましょうよ!ダンディ冬枝だって、水虫冬枝になりたくないでしょ?」

「てめえ、うるせえんだよ。頭に響く」

 冬枝は、助手席から身を乗り出す嵐の顔を押し戻した。

「冬枝さん、僕、クビになっちゃうんですか?」

 さやかが不安げに見上げてきたので、冬枝は手をひらひらと振った。

「んなことでクビにするかよ」

「ホントですか?冬枝さん、僕と一緒にいるの、嫌じゃないですか?」

 さやかは、いつになく弱気だ。猿竹たちの前でも必死で隠そうとしていたし、よほど水虫だったことが恥ずかしいらしい。

 冬枝は「おい」と嵐に向かって声を上げた。

「てめえがうるせえから、さやかが気にしてるじゃねえか。なんか言うことねえのか、嵐」

 すると、嵐は助手席から横顔だけ覗かせた。

「さやか。ドスケベ冬枝は、水虫女子とは一緒にお風呂に入れないから、代打ちはクビだってよ」

「誰がドスケベ冬枝だ!ただの悪口じゃねえか、この野郎!」

 嵐を殴ろうとした冬枝は、シートから腰を浮かせた拍子に天井に頭をぶつけた。

「ってえ…」

「大丈夫ですか、冬枝さん」

「おや、ドスケベ冬枝に天罰が下ったとみえる」

「嵐、うるさい!だまれ!」

 さやかがぴしゃりと言うと、嵐が「おお、怖」と肩をすくめた。

「さやか、嵐の言うことは気にすんな。水虫ぐらい、誰だってなるもんだ」

 冬枝は慰めるつもりで言ったのだが、さやかは「冬枝さん!」と眉を吊り上げた。

「僕はもう治りましたから!」

 さやかが必死で力説するので、冬枝は「お、おう」と頷いた。

 さやかは気にしているが、冬枝は水虫ぐらいで良かった、とむしろホッとしている。

「良かったよ。お前があの医者に見られたのが、足ぐらいで」

「えっ?」

「いや、何でもねえ」

 嵐がニヤニヤ笑っているのを、冬枝はバックミラー越しに睨み付けた。



 嵐と別れ、マンションに帰ると、冬枝は深々とソファに腰かけた。

「ふー…。疲れた」

「冬枝さん、おでこ冷やしたほうがいいですよ」

 頭突きなんて久しぶりにしたものだから、昔のように綺麗には決まらなかったようだ。赤くなってますよ、とさやかに言われ、冬枝は額を押さえた。

 さやかは氷のうを持って来ると、冬枝の隣にちょこんと座った。

「冬枝さん」

「ん?」

「僕は、秘密を教えました。今度は、冬枝さんの番です」

 さやかは真っ直ぐな瞳で、「朽木と何があったのか、教えてください」と言った。

「………」

 さやかは、冬枝が朽木から金を無心されていたことを、いつの間にか知っていたようだ。

 朽木に殴られたのも、その件絡みだろう。朽木に立ち向かい、勝利をもぎ取ったさやかに、事情を打ち明けないのは不義理だと冬枝は思った。

「つまんねえ話だよ」

 タバコに火をつけると、冬枝は訥々と語った。

 それはまだ、冬枝が東京の組事務所にいた頃の話だ。

 その頃から、朽木は女癖が悪かった。部下の女にすら手を出すような有様で、その魔の手は、冬枝の弟分の一人にも及んだ。

 恋人を奪われた弟分は、怒りに任せて朽木に襲いかかった。朽木はナイフで刺されて重傷を負い、弟分は破門処分、冬枝も責任を問われて、東京を出ることになった。

 朽木の怒りは収まらず、冬枝に慰謝料と称して金をせびるようになった。自分の弟分がしでかした不始末である以上、冬枝は朽木の求めるがまま、金を渡し続けていた。

「…ってわけだ。しょうもねえだろ?」

 冬枝がタバコの火を吐くと、さやかは拍子抜けしていた。

「なんだ…。女って、冬枝さんの弟分だった方の恋人だったんですか」

「ん?それがどうかしたか」

「いえ…」

 ――朽木の奴、話を盛ったな!

 さやかを動揺させるため、朽木はわざと「冬枝は俺の女を取った」と話を端折ったのだ。まんまと真に受けてしまった自分が悔しい。

「その弟分さん、今はどうしてるんですか?」

「ああ。足を洗って、今はカタギになってるよ。高根たちとは仲が良かったから、たまに連絡を取り合ってるらしい」

 冬枝は、過去に思いを馳せるように遠い目をした。

 それにしても、とさやかは言った。

「組長さんも言ってましたけど、朽木にお金を払い続けることなかったじゃないですか」

「仕方ねえだろ。弟分のケツ持つのは当然だ」

 しかし、朽木のせいで冬枝の家計は火の車になっていたのだ。督促状の束を見れば、冬枝がいかに無理をしていたかが分かる。

 ――やせ我慢してたんだなぁ…。

 そんな冬枝に呆れるような、いじらしくなるようなで、さやかの胸はむずむずした。

「見栄っ張り」

 さやかが氷のうを冬枝の頬に押し付けると、冬枝が「やめろ、しゃっこい」と顔をしかめた。

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