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女の子はどうやら床に横になっていたらしく、ゆっくりと立ち上がる。
「…人の眠りを妨げおって」
「悪かったよ、どうしても聞きたい事があってな
こいつらはトウヤとユイ、俺のちょっとした知り合いだ
トウヤ、ユイ、こいつはアメリ
召喚士として王家に仕えている者だ」
「召喚士…ってモンスターとか呼んで一緒に戦ったりするあの…!?」
灯也君が目を輝かせる。
ま、眩しい…!ほの暗い部屋が眩しく感じる…!
推しの眩しさに感動していると、女の子───アメリさんがヴィクターさんを睨む。
「…用件はなんだ」
「昨晩、ここで討伐者召喚の儀を執り行っただろ
で、無事に討伐者を喚ぶ事はできた」
「…もう話を聞いているのか」
「待望の討伐者だからな、話してくれたヤツも嬉しそうだったぞ
安心しろ、注意はしておいた
俺以外の外部にはペラペラもらすなよってな」
「まったく…
そうだ、討伐者召喚は成功した」
「討伐者は魔法やモンスターが実在しない所からきたんだよな?」
「ああ、そうだ」
「それはトーキョーって所か?」
「え…東京…?」
思わず灯也君と顔を見合わせていると、アメリさんがため息を吐く。
「…おまえに話した奴は、よほどのお喋りのようだな」
「いや、討伐者がどこからきたのかは聞いてない
俺の憶測が当たっているのか確かめるために質問したんだ」
「…どういう事だ?」
「今日の昼頃、丘でモンスターと接触していたこいつらを見つけた
傷薬も魔法も初めて見たような反応をするし、昨晩トーキョーからきたそうだ
国民薬を知らない、ここにきたのが召喚の儀が行われた昨晩、トーキョーもこの世界にはない所だ
で、討伐者召喚が関係してるんじゃないかと思ってな」
「…なんだと?」
驚きながらこっちを見てくるアメリさんに頷く。
「そうなんです
私達東京にいたんですが、昨日の夜にいつのまにか丘にいて…」
「…まさか…いや、そんなはずは…」
アメリさんは大きい地図を広げると、その上に手をかざした。
すると地図から一筋の黄色い光が浮かび上がる。
「これは…?」
「召喚魔法の光だ
昨夜この城に討伐者がきた事を示している」
アメリさんの話によると、この地図は魔力を自動的に感知して記憶してくれるものらしく、いつどこでなんの魔法が使われたかがわかるそうだ。
ふと、新たに黄色の光が浮かび上がった。
その光を見たアメリさんが目を見開く。
「召喚魔法だと…!?」
「討伐者とほぼ同時刻…場所はあの丘か
間違いないな」
「…この光は俺達がきた事を表してるって事ですよね?」
「ああ、そうだ」
灯也君の質問に頷いたヴィクターさんは、続けて口を開く。
「おまえ達は討伐者召喚の儀に巻き込まれたってところか」
巻き込まれた…?
…確かにヴィクターさんとアメリさんの話を聞く限り、討伐者は別にいて、灯也君と私がここにきた事は想定外みたいだけど…。
「…巻き込まれたって…なんで…?」
聞いてみると、アメリさんは額を手で覆いながらも口を開いた。
「…わからない
…討伐者を選ぶ際、魔力を多く持っている事が絶対条件の1つになっている
…見たところ、おまえ達にも魔力が備わっているが…」
…え…まりょく…魔力…?
「俺達魔力あるの!?」
「ある
だが微々たるものだ、本来なら討伐者に選ぶ事はない
…召喚の儀に間違いはなかった…なのになぜ…?」
顔を青白くさせたアメリさんが考え込みながら呟きはじめる。
この状態のアメリさんに呼びかけてもしばらくの間は反応しないからと、ヴィクターさんはアメリさんが落ち着くのを待ちながら討伐者について教えてくれた。
まさかの巻き込まれた事や魔力がある事など、次から次へと衝撃的な事実がわかって私の頭はパンクしそうだけど、なんとか話を聞こうとヴィクターさんの話に耳を傾けた。