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「着いたぞ、お疲れさん」
ヴィクターさんに先導してもらいながら丘を下りて、外壁に覆われている首都ベルテアに着く。
ヴィクターさんとなにかを話した門番が、灯也君と私の手首についているある物を見る。
このある物というのはブレスレットの事で、傷薬を飲んだ後にヴィクターさんから渡された。
魔除けのような物だと言ったヴィクターさんにお礼を言って手首につけた事を思い出していると、門番が中へと通してくれた。
ベルテアは海外のような街並みで、たくさんの人で賑わっている。
その中で1番目が向いたのが、奥に佇む大きな城だった。
「アニメに出てくるような城だ…!」
「すごいですね…!」
灯也君と2人で感動していると、ヴィクターさんがあるお店の前で歩みを止めた。
そのお店は服屋さんだった。
「…ヴィクターさん、もしかして…」
「ああ、その服直してもらうぞ」
灯也君と笑顔で目を合わせた後、2人でヴィクターさんに頭を下げた。
「ありがとう、ヴィクターさん!」
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灯也君の衣装はすぐに綺麗になった。
お店の人が魔法であっという間に直したのだ。
私の服も、少し擦り切れていたところなどを綺麗にしてくれました…ありがとうございます…!
…さっきの雷魔法に、今の服を直した魔法…魔法って本当にあるんだなと、ようやく実感しはじめる。
灯也君が喜びながらお店の人に感謝をしている。
推しの笑顔に舞いあがっていると、ふとお店の人の顔が赤くなっているのに気がついた。
わかる…わかりますよお姉さん…!灯也君最高ですよね…!
心の中で頷いていると会計を済ませたヴィクターさんが戻ってきた。
灯也君とお礼を言うと、気にするなと返ってくる。
ヴィクターさんは本当にいい人だ…感謝しかない。
3人でお店を出ると、ヴィクターさんが私達を見る。
「次は城に行く」
「え、あの城に?」
さっき灯也君と感動しながら見ていた大きな城…。
あそこに行くの?本当に?
「ああ、用があってな
おまえ達にもきてもらうが…まあなんだ、楽にしていればいい」
「はい…!」
歩き出すヴィクターさんの後ろを、灯也君と並んで歩く。
「まさかあの城に行けるなんて思わなかったです!」
「俺も思わなかった!楽しみだね!」
「ですね!」
城の前までくるとヴィクターさんは私達にここで待つように言って、手続きをするために門番の元へ向かった。
至近距離で見る城は本当に大きくて、その迫力に圧倒される。
少ししてヴィクターさんに呼ばれて門の前まで行くと、門番が城の中に入れてくれた。
城内も豪華な装飾が施されていて驚きの声が出てしまう。
広い城の中をしばらく歩き、ある扉の前に辿り着く。
既にヴィクターさんの話を聞いていたのか、部屋の前に立っていた衛兵が扉を開けてくれ、私達は部屋に入った。
中はほの暗く、机や床など至る所に足の踏み場がないほどの大量の本が散乱してある。
「おーい、いるかー?」
ヴィクターさんがそう言うと、部屋の奥でなにかが動いた。
視界に広がったのは、ランプの灯りによって壁に映る大きな影だった。
「…なんだ、おまえか」
声とともに姿を見せたのは、黒いローブに身を包んだ女の子だった。