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推しと私の異世界生活  作者: 桂日
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3

うちわを手に持っていたのがいけなかった。


バッグに入れておけば、こんな事にはならなかったのに…。


そしてやっぱりあの鳥の顔は3つあった…もうわけがわからない…。


地面に手をついて嘆いていると、灯也君が声をかけてくれた。


「大丈夫?ケガとかしてない?」


え、心配してくれるの…優しい…。


「はい、大丈夫です

…でもすみません…灯也君のうちわが…」


「確かに自分のうちわが鳥に持ってかれるのはびっくりしたけど、君は無事だったわけだし…

君は悲しいかもしれないけど、俺はよかったって思うよ」


思わず顔を上げると、灯也君がそれはもう眩しい笑顔になる。


「元気出して」


元気出しまああああああす!


というかもう出ました!出ました元気すごく!


いやうちわの件はもちろんまだ悲しいけど…でもやっぱり本体の力は強い…!


「ありがとうございます…ありがたやありがたや…」


「いや拝まないで!?

とにかくどこか休めそうな場所を探そう、立てる?」


「はい!立てます!」


返事をしながら勢いよく立つと、目の前に広がる森を見る。


さっきは鳥を巻くために森に入ろうとしたけど、こうやって近くで見ると暗くて先が見えない…無闇に歩きまわるのは危険だ。


「…あ、あれ見て」


灯也君が後ろ───今私達が走ってきた所を指差す。


それを辿ると、端にある岸壁に穴が空いているのが見えた。


「あそこで休めるかな?行ってみよう」


「はい」


見たところ、2人ほど座れるサイズの洞穴だった。


もしかしたら小さい動物の住処かもしれないという話になったけど、他によさそうな場所も見当たらなかったのでとりあえず休ませてもらう事にした。


…って、ちょっとまって…灯也君近くない?距離近くない!?肩がぶつかりそうだよ!?


それもそうか、この洞穴2人分くらいのサイズだもんね!わーい、倒れちゃう!


「自己紹介がまだだったよね、藤野灯也です!

アイドルやってます!」


「ぞぞ存じております…!」


「あはは、だよね!

グッズ持ってくれてるもんね、ありがとう!

君の名前は?」


「私は鈴川結衣です…!

大学生やってます…!」


「なんて呼んだらいいかな?」


「お、お任せします…!」


「じゃあ、結衣ちゃん!

改めてよろしく、結衣ちゃん!」


「ぐあっ…!よ、よろしくお願いします…!」


名前呼びの破壊力…!


そしてこの満面の笑み…!


推しと会話できてる奇跡…!


ほ、本当にこんなにすごい事が起きていいのかな…?


「結衣ちゃんは今日のライブにきてくれてたんだよね?」


「はい!素敵なライブをありがとうございました!

もうよかった…本当にすごかったです…!」


「ありがとう!

結衣ちゃんは俺のファン、でいいのかな?」


「は、はい!灯也君のファンです!

もちろんBright Voiceのみんな好きで応援してます!

でも灯也君は特別で、私にとって最高のアイドルで…大好きな推しです!」


「…嬉しい!

すっごく嬉しい!

こうやって応援してくれる人がいるから、俺達ももっともっと頑張ろう!って気持ちになれるんだよ!

本当にありがとう!」


「あ、わ、わたしのほうこそ…いつもありがとごじぇます…」


いけない、いまのとうやくんはほんとうにいけない、はかいりょくばつぐんすぎてちょっとかんでしまった…。


「あ…ライブの後の事なんですけど…外に出たら、目の前のライブ会場がいきなり原っぱに変わって、舞香…一緒にいた友達も周りの人達もいなくなってたんです」


「あ…俺もだよ…!一瞬だったんだ

ライブが終わってメンバーと通路を歩いてた時、パッと景色が変わって俺だけここにいた」


「そうですか…いったいどうなってるんだろう…」


「…わからない…そうだ、連絡…!

…あ、そうか…スマホ鞄の中だった…」


「私持ってます!

…今電源を…あれ…?」


「どうしたの?」


「電源が入らない…」


何度も電源ボタンを押してみるけど、画面は黒いままだ。


「バッテリーはまだ半分以上あったのに…」


「…とにかく、明るくなったら下りてみよう

人に会えればここがどこなのかわかるし、帰れるはずだ」


「…はい、そうですね」


…さっきから不思議な事ばかりだ。


正直テレビのドッキリ企画かとも思ったけど、一瞬で場所を移動したりとか頭が3つある鳥とか、ファンタジー要素でもないと実現できないような気がする…。


でもファンタジーだとやっぱり現実味ないかな…?


いややっぱりファンタジーじゃないとこの状況の実現が…。


そこまで考えてふと隣を見ると、灯也君が壁に寄りかかって寝ている。


………寝ている…!?


えっ…寝顔こんな近くで見ちゃった…!?


か…可愛いいいいいいいっ…!


思わず叫びそうになったけど、必死に抑えてなんとか堪える。


お、推しの寝顔が最高すぎるのですが…。


かっこよさと可愛さを持ち合わせてるの本当に強すぎる…!


とりあえず落ち着こう…興奮よ静まりたまえ…。


何度も深呼吸をしてなんとか落ち着いた私は、この状況について考える事にした。


灯也君はライブの後だし、こんな事になっちゃって疲れが出たのかもしれない。


あの鳥みたいな危ない生き物が出てきた時とか、ここを住処にしてる動物が戻ってきた時とかは灯也君を起こさないといけないけど、それがないならできるだけ寝てもらいたいな。


というわけで、私はなにか起きた時にすぐに対処できるように見張りをする事に決めた。


よーし、頑張るぞー!

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