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推しと私の異世界生活  作者: 桂日
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2

「すみませーん!」


ほの暗くてもわかる。


ライブの衣装の姿で私に向かって大きく手を振るのは、間違いなく推しの藤野灯也だ。


………どうなってるの?


「聞こえてますかー!

おーい!」


…え、えっ…!?こっちくる!?


「ちょちょ、ちょっとまってください!?」


まったをかけると、こっちに駆け寄ろうとしていた灯也君が足を止めた。


いや、うん…すみません!でもしょうがないんだよ!


だって推しが近くにくるんだよ!?


至近距離でこっち見るんだよ!?


無理!恥ずかしすぎて無理!


「えーっと、もうそっち行っても大丈夫ですか?」


「えっ!?

まままって、せせせせめて心の準備ができたらこっちにきて───。」


思わず灯也君の方を見て、ある事に気がつく。


なにあれ…なにかが飛んでくる………あれは…鳥だ。


鳥が灯也君に向かって飛んできてる…え、灯也君に向かって…?


「やっぱり今すぐこっちにきてええええええっ!」


「え………うわっ!?」


鳥が灯也君の頭上ギリギリを通り過ぎる。


ホッとしたのも束の間、空に向かって上昇していく鳥を見て、私はギョッとした。


ちょっとまって…あの鳥、顔3つある…!?見間違い…!?


困惑していると、灯也君が駆け寄ってきた。


「イケメン…!あ、すみません本音が…!」


「逃げよう!」


「は、はい!」


私が持っていたペンライトの頭の部分を灯也君の手がつかむ。


そして走り出した灯也君に引っ張ってもらう形で、私も足を踏み出した。


危ない…灯也君が掴んだのペンライトでよかった、私の手掴まれてたら恥ずかしすぎて倒れてたかもしれない。


それにしても灯也君がこんな近くにいるなんて…。


もしかして私、知らないうちに灯也君主演のドラマのヒロイン役に選ばれてた?


いやもちろんそれはないんだけど、そう思ってしまうくらいにはこの状況が夢のようです。


ふと後ろを見ると、あの鳥が私達目掛けて飛んでこようとしている。


…こっちは悪夢だわ!


「と、灯也君っ、あの鳥がくる!」


「もう少し頑張れ!ほら、前見て!」


言われたとおりに前を見ると、森が広がっている。


「あそこに隠れてあいつを巻こう!」


「うん…!」


頷いて、ひたすらに走った。


息が上がってくる…でも止まるわけにはいかないと、とにかく足を前に出す。


そうして、森の近くまできた。


もう少し…!


そう思った時だった。


「危ない!」


灯也君の叫ぶ声を聞いて後ろを見ると、あの鳥がすぐそこまできていた。


ダメだ…避けられない…!


とっさにペンライトを持っていない方の手で頭を庇う。


…けど、痛みを感じる事がなく不思議に思って閉じていた目を開けて…信じたくない光景を見た。


灯也君が鳥に捕まり、宙を浮いている。


手を伸ばしたけど灯也君に届くはずもなく、あっという間に空の向こうに連れ去られてしまった。


うそ…うそ…うそだ…!


「灯也くーーーーーーーーーーん!!!!」


「いや俺ここにいるけど!?」


横にいる灯也君のツッコミを聞きながら、私は崩れ落ちる。


………うん、わかってる。


灯也君が無事で本当によかったって思う。


…でもこの悲しい気持ちを叫ばせてほしい…私の大切な…大切な…!


「灯也君のうちわ持ってかれたーーーー!」

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