04 幸太
またまた、幸太が変人です。頭は、正常に働いています!
不思議キャラの空気をまとわせるのは、もうすぐやめます。
とりあえず、どうぞ。
放課後、委員会の企画に必要なプリントを作るために、誰もいない教室に一人で残っていた。
カサカサと乾いた紙の音だけが聞こえる。
“挨拶の活性化のために” 題名だけが紙面にでかでかとのり、その下には僕の走り書きの文字が、ぱらぱら並ぶ。シャーペンを片手に持ち、頬づえをついたまま窓の外へと視線をはせて黙っていた。
委員会の企画なんか頭になくて、今日の犬みたいな奴と兄ちゃんの顔がかわるがわる浮かんで消える。
チャイムと、少し悲しげな音楽が教室に響いた。
どれくらい僕は、ぼうっとしていたんだろうか。時計を見ると、完全下校の時間の5時半になろうとしていた。
明るかったはずの空も、紅く染まりつつあり、手元が暗く、プリントに書き込まれた小さな文字が見づらいほどに、暗かった。
とりあえず、プリントを机に突っ込んで、足元にあった鞄を抱えて廊下に出た。
廊下は不気味なほど静かだった。
部活の掛け声すらもう聞こえない。身にしみるほどの静寂が僕を“お前は一人だ”と、嘲笑っているように感じて、僕は足早に外に出た。
ポケットに手を突っ込み、ひたすらまっすぐ歩く。人通りが少ない、小さな川が見えてきた。
幼い頃、兄ちゃんと近所の子達とよく此処で遊んだ。
瞼の裏に楽しかった情景が鮮やかによぎる。
うつむくと、鼻の奥につんとした痛みを感じた。
「あれ?」
声と一緒に、黒い人影が近づいてくる。誰だろう、暗くてよく見えない。
「佐藤……由也……?だっけ?」
声を聞いてピンときた。前、いきなり僕の笑顔に駄目だししてきた変な犬。
「なんで此処いんの」
僕は俯いたまま訪ねた。
「もう夏だね」
犬は、質問に答えず質問とまったく関係のないことを独り言のように呟いた。
喧嘩うってるのか、コイツ。
僕が黙っていると、犬が言葉をつづけた。
「夏の空って、あんまり広い感じしないけど好きだなぁ、俺。」
にっこりと笑う犬。胸の奥がぎゅうぅっと切なくなるような笑顔。
―だから死ぬのは悲しいことだと思うよ。-
なんで先からこいつと兄ちゃんが重なるの?
べつにこんな奴、好きでもなんでもないしどこか遠くに行っちゃっても、寂しくもなんともないのに
“遠くに行っちゃうんじゃないか。”と、強い不安が胸に渦巻く。
「こうやって、季節ごとの空見れてさ。」
犬が、思い切り空を仰ぐ。
「俺、生きてんだよなぁ。今」
凄くうれしそうな顔でそう言った。
心臓が大きく音を立てた。僕の顔が引きつるのが分かった。
「いきなり変なこと言って、ごめんね。」
犬が苦笑していた。
「じゃあ、明日。」
「……っう、うん……。ばいばい」
変な奴。
でも、生きていることがどういうことか知っているんだろうな、と思った。
特に無いです。
次回も、よろしくです。
(テスト期間中なので、しばらく書けないかもです。)