03 出会い
今回は、新キャラ登場します。
サブ主人公になる、幸太っていうやつです。
わけありという設定なので、最初はただの変人ですが、長い目で見てやってください。
それから季節は何度も巡り、僕は14歳になった。
夏。
「行ってきます。」
雨が降りそうな空、晴れている空。どんな空にも兄ちゃんがいるんじゃないか、なんて思って朝、空を見上げて、あいさつするのが僕の癖になっていた。
兄ちゃんが、もう僕のそばにいない。そう思うと、寂しくて、辛くて、少し怖くて笑うことが極端に少なくなった僕。だけど、朝だけは兄ちゃんがそばにいてくれているような気がして自然に笑っている。
春から夏へ。季節は変わり、時間は進む。
“進んでないのは、僕だけだ。”
空には大きく輝く太陽。眩しくて、目を細め、見上げる。
一瞬、ちらりと太陽が、悲しげにかげった。
2時間目は、理科だ。理科室に移動している最中、ぼーっとしていたのか筆箱を落としてしまった。運悪く、筆箱のチャックが開いていたらしく廊下に散らばる、無数のペンたち。
僕の後ろから来ていた、女子2,3人が迷惑そうに眉をひそめて、そこをまたいでいった。
ペンやら消しゴムやら色々散らばった廊下にちらりと視線をはせる。
「最悪だ」
ため息とぼやきが一緒にこぼれた。教科書を片手に持ち直し、かがむ。
そしたら、手の先にあったはずのペンが、何本か消えた。
「え?」
驚いて思わず顔を上げると、ペンを差し出す、犬みたいな人がいた。
「はい、ずいぶんたくさん落としたね?」
そう言って、笑った犬みたいな人。
―ほら、手ェ繋ごう?-
兄ちゃんの笑った顔に重なって、息が詰まる。
「なに?なんかついてる?」
可笑しそうにクスクスと笑う目の前の人の笑い声で、はっと正気に戻った。
「いや、別に。あ、ありがとう、ペン。」
変に思われたら嫌だから、慌てて礼を言う。
「作り笑いなんか……」
「へ?」
いきなり怒ったような顔になる、犬みたいな人。
キッときつめの目つきで睨まれて、僕は顎を引いた。
「作り笑いなんか、すんなよ。下手糞なくせに!」
いきなり、なんだっていうんだ。
いきなりの笑顔への駄目だしで、怒りすらもおぼえる暇がなかった。
少しだけ、首をかしげたままの僕に「遅れるよ。」と、一言残し僕に背中を向けた。
窓ガラスを通した夏の太陽の光に溶け込む背中をただ見つめる。
―辛くても生きて、幸せになってー
果たせそうにない、兄ちゃんとの約束が、何故か頭に響いた。
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幸太はこれだけみると、なんだか一昔前の青春漫画にも出てきそうな、熱そうなうざったそうなキャラですが、これからしっかりいいやつになっていくはずです!
幸太も、私の小説も見捨てないで読んでくださった方。本当にありがとうございます。
次回も、頑張ります!!