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グッドバイ・ピッチ  作者: タンバ
2年目(久松プロ5年目)
54/110

3/15 対総海シーホース(オープン戦)

人生2度目のホーム先発。あと何度あるものかと余計な事を考えた頭を嗜めるように2、3振る。

俺の登板は今日で最後になる予定だ。開幕まで2週間ほど空くが、現状やや投げすぎているのもあり、使わずに調整させたいというのが首脳陣の考えのようだ。

従って、ブルペンもちょっと抜き気味に投げるよう指示があった。

先発として見た場合、そこまで投げすぎている訳でもないので、他球団から訝しがられてもおかしくはないが、昨年までの勤続疲労や配置転換による適応疲労考慮など、一応言い訳はできなくもない。


「あーイイっすヒサさん!ナイスボール!」


いつもならブルペンでは福屋さんに受けてもらうが、今日は一色が来てくれている。なんでも、色んな選手の球筋を見ておきたいらしい。聞けば、こう答えが返って来た。


「いやぁ正直….。打撃で池田さんに勝てる気がしないんで…。プロでキャッチャーとして生き残るにはもう守備固めしかないかなぁと…。だから先発中継ぎ抑え…、ウチにいる選手の傾向や状態は把握しときたくて」


抑え捕手、という考え方だろうか。まだ3年目、高卒捕手にそんな現実的な考えをもたげさせる程度に、池田は圧倒的だった。そう、ここまで気を回せる20歳の心を折る程度には。


「…惜しいなぁ。投手というのは投げるほどにその力を失うのが常だが…。飛ばしていた割に球の力がそこまで落ちていない!実にリリーフに向く体ではないかァ!今からでも遅くはない!俺と守護神争いしようッ!」


いやあんたはあんたで何やってんだ武田さん。


「ヒサさん結局リリーフなんです?あんだけ頭っから投げてて先発じゃないってことあるんですか?」


敵を騙すにはまず味方から。それなりに頭の回る一色がこの感じならまず問題ないだろう。


「小僧ッ!固定観念を捨てよッ!調整というのは個々人の事情やフィジカルに寄り添い初めて成立するものだッ!」

「だからって中継ぎやるならこんな投げないでは…?」


ど、どっか行ってくれ〜!1イニング投げるだけが中継ぎと思うなッとか言いそうで今めっちゃビビったぞ俺は!


「…ふん、まぁ今日に関してはもうよかろうな。久松、あと2、3球にしておけ。総海相手ならば肩は投げながらでも作ればいい。多少調子が良くない程度では、あの打線はお前を崩せんだろう」


2人の会話に口を挟めないでいたら武田さんが凄いことを言う。


「もうやめた方がいいといいますと」


会話の流れに堪えきれず、話を変えたい俺は2番目に気になった事を聞く。

すると、武田さんは俺の肩を軽く摩りこう言った。


「腕が下がっている。今日1番いい球がいった時よりボール1つ分低く、な」


試合が始まる。オープン戦の本拠地初戦も俺が先発というのは、いささかやりすぎではないかと思う。なお、本当に真っ新なマウンドに立つことは無いからと首脳陣の配慮込みでの登板である。もちろん、本拠地開幕云々の想定を絞らせないという作戦込みで。こわいね。


「プレイッ」


アンパイアのコールが耳に届く。

ブルペンで武田さんが言っていた言葉を思い返しながら、俺はモーションに入った。


「ワンパターン?」

「そうだ。お前の頭があれば何を言っているかは分かるだろう」


一言だけではあったが、ヒントとしては充分だった。

ちなみに、武田さんはこのあと自分のウイニングショットであるフォークで、一色をボコボコにしていた。

いつもハーフバウンドをこともなげに捌く一色が、手も足も出ず逸らしまくるというのを、中々拝めないなぁと呑気に思いながら見ていた。時たま喉元や面に当たったりして、逸らすたび、捕らんか小僧ォッ!と喝を入れられていて可哀想であったが。


さて、話を総海に戻す。総海打線の評として、解説者、有識者、業界人は口を揃えてこう言う。

"ハマると止まらない"、と。

しかして、武田さんの言っていたことから、それは翻ってこう捉えるべき言葉だろう。

"ハマらなければ止まる"。


そも、打線というのは繋がるように構成するものである。打者にはそれぞれの特色があり、それを活かしつつ、時には弱点を補いつつ嵌め込んでいくわけだ。

では、ハマると止まらない打線とは如何なるものか。

得意な球種、球速帯が被りまくっている打線であろう。球団のドクトリンやスカウティングの癖など、避けづらいものではある。

もちろん、それだけでそうなるわけではない。対応できる範囲が狭いというのも要素として付け加えられる。


そういう打線を相手にする上で鍵になるのは引き出しだ。幸いな事に、俺は比較的多い方に当たる。おそらく、武田さんが言いたかったのはそういう事だ。

津田さんに確認をしてみると、オーダーのほとんどが落ち球に弱く、ストレートに強い選手で、そこが分かればあとはもう簡単だった。

スタメンで出る事になっていた池田にこれを共有し、徹底的なスラシンカーチェンジアップ祭り。ストレートは混ぜるものの、外目だったり外し気味の位置に投げ込むに留めた。

詰まる。空振る。打ち上げる。

面白いようにさっさとアウトが積み上がり、結果3回42球無失点。

上々の出来に、上振れればここまであると思えたのは収穫だと、俺は素直に結果を受け入れた。

開幕はもうすぐだ。


久松のオープン戦成績

登板数:4 投球回数:14 防御率:1.29

奪三振:9 四死球:4 失点:2 自責点:2 被安打:4 被本塁打:1


能力値(※イメージ)

球速MAX148km/h AVE144km/h

コンD53スタD59

変化球スライダー3シンカー3チェンジアップ1カーブ1ツーシーム

緊急登板⚪︎ 回跨ぎ 一発 ケガしにくさB フライボールピッチャー 軽い球

NEW:ノビC 回復C 球速安定 クロスファイヤー(某ゲーム表記ママ)

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