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グッドバイ・ピッチ  作者: タンバ
2年目(久松プロ5年目)
44/110

2/1〜 春季キャンプ②

巨躯であった。

190㎝を越す背丈と、それに見合うだけの広い肩幅。発達した腕と馬力を生み出す大腿。

何より、その眼。

ぎょろり、という擬音がまさしく合う大きく見開かれたそれは、視線の先を圧するように捉える。

いや、確かにブルペンで投げてるのは俺だけだが、なんでそんなにこっちを見る…?

ま、まぁ初対面だしとりあえず会釈しとくか、そう思ったが、いつの間にか目の前まで来られており、頭の上から声が降ってくる。


「お前か。去年プロ初セーブを挙げたのは」


なんでそんな事を?と思いはしたものの、ひとまず返事をする。


「はい」


なんとも味気のない答え方をした。

しかしながら、相手の質問の意図がわからない以上こう答える他ない。

どう会話が続くのか予想も出来ずに圧倒されていると、向こうがまた口を開く。


「気持ちが良かっただろう、さぞ」

「…はぁ。は…?」


どういう、ことだろうか。


「ンーッ…、俺も若かったあの頃に戻りはじめてのセーブをもう一度感じたいものだァ…。セーブはいい。気持ちが、いい。クローザーは、いい。気持ちがいい。気持ちがいいぞォ…」


この物体は一体…?

俺の頭に宇宙が浮かんだところで、宇多さんが話を割る。


「…武田、やめないか。そんなんだからノーブルから追い出されるんだろう。身内からあれほど歓迎されるFA移籍もないぞ」

「とはいえなァ。俺は事実を、世の中の真理を説いているだけであってですなァ…」

「…もういい。あー…。久松、すまなんだ。こいつは武田克虎。流石に知ってるだろうが洛園のクローザーで、今年から俺と一緒にクロウズのお世話になってる。こんな変態ではあるが…。参考になる部分はすごく参考になるはずだ。よろしくしてやってくれ」


見た事はあったが、こんなのとは聞いたことが無かった。

とりあえず、疑問は置いておき通すべき筋だけ通しておこうと俺は思った。


「5年目の久松です。よろしくお願いします」

「ご紹介に預かった通り、武田という。クロウズのクローザー候補はお前か?いいポジション争いをしようじゃあないか。俺は相手をねじ伏せるのが大好きだが、本気でやって本気で負けるのもそれはそれで好きでね。ぜひ全力でかかってきてほしい。この右腕で押さえ込んでやるからなァ」


こんなガチガチに変なキャラ野球選手でいるのか?と思いつつ、俺はとりあえずでシラを切る。


「え、僕がクローザー候補なんですかコーチ」

「…来たばかりだからその辺は監督とは詰めていないよ」

「…なんだ、つまらんなァ…。せっかく移籍したというのに、競争相手がおらんのではチームを変えた意味が一つなくなるではないか…。まぁ、まぁいいだろう」


正直宇多さんも適当こくとは思ってなかったのでちょっとびっくりしつつ、露骨に萎えた武田さんにも警戒を怠らない。

FAでクローザーが、しかも強いチームから出ていくなんてあんまりないことだし、それなりに競争率も高そうだが、ネイビークロウズという在京である事以外強みがないチームで獲得出来たあたり、扇GMをはじめとした編成部が頑張ったらしい。

要するに、経歴も言動も変な人だけどすごいからとってきたという事だ。

ちなみに、補強は武田さんにとどまらず、アメリカで通算32本打っている大砲候補のアダメス、戦力外からユーティリティプレイヤーの野口さんを獲得するなど野手系も出来る限り行なっている。


確かに参考になるんだろうなぁとは思うものの、その、少々とっつきづらくはある。

レベルアップはしたいが、適切な形で教えを乞うにはどうしたらいいか迷っていると、見かねたのか宇多さんがこう言った。


「…じゃあ武田。お前が相手を作り育てればいいじゃないか」

「…名案だ。名案ではないか宇多さん。そうとなればそこな久松とか言ったか?オ・リーグでセーブ王を取った俺の話をよく聞けィ!お前を守護神として導き育ててやろう!おお…そして強く育てた教え子を打ち倒すか或いは打ち倒される俺!美しい…。想像するだけで気持ちが、いい…」


この人やっぱダメなんじゃないかなぁ。

書き始める前はもう少し人間らしい何かだったような気がします。

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なんか急に濃いキャラが
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