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異世界の歩き方  作者: 葉月奈津・男
11/14

宿題に悩む少女


 「わぁお。ねぇねぇ、あなたがシェルフさん?」

 いきなりハイテンションで声をかけてきたのは、夕焼け色の髪と、同じ色のぱっちりとした瞳をした少女だった。

 百人いたら百人が「かわいい」と思うだろう小柄で華奢な女の子だ。

 年齢は十五か十六といったところ。

 ちょっときつそうな胸元に本を抱え、背中にはマント、それなのに股下10あるかどうかというミニスカート。

 身なりからして、間違いなく魔術師の卵である。

 それ以外で本、マント、なのにミニスカートとはなりようがない。

 魔術師の卵だとしても、これはちょっとアンバランスさがすさまじいけれど。

 というか、すでにサイズが合わなくなっている服を無理に着こなしているのではないだろうか?

 ということはつまり・・・。

 「ま、まさか。君がドバルさんの妹だとでも?」

 「もっちろん」

 大きく頷かれてしまった。

 いや、ありえないだろ?

 似ているところがあるとすれば髪の色くらい。

 それ以外は、どう見ても他人だ。

 「あ、そうそう。お兄ちゃんからの荷物は受け取ったよ」

 全寮制の学校でセキュリティレベルが高く、入れても呼び出ししてももらえなかったので、荷物は守衛さんを通して届けてもらっていた。もし何か問題があった場合を考慮して、連絡ポイントとしてこの宿を指定してある。

 なので、彼女がドバルさんの妹というのはどうやら確かなようだ。

 「中身は?」

 「いつも通りの可愛い系の服だよね」

 えへへっ、と笑って答えられた。

 くどいようだが、彼女がドバルさんの妹で間違いないようだ。

 どうにも信じ難いが。

 やむをえまい。

 そういうことだと受け入れよう。

 オレは悲壮な覚悟を持って、自分の脳に事実を強制入力した。

 「ところで、実はちょっとだけ手伝って欲しいことがあるんだけどなぁ」

 断りもなくテーブルについて、クリっとした瞳を向けてくる。

 人によっては「あざとい」と取りかねない仕草だが、この子の場合は紛れもなく天然だ。

 「お兄ちゃんが、わたしのとこによこすってことはかなり信頼されてるよね。シェルフさんって」

 「あー、ま。そうかもな。協力して仕事をひとつ片付けたのは事実だから」

 あの大男に信頼されているというのは、ちょっとだけ否定したくなるけれども。

 「だよね」

 胸の前で手を開いて、弾けたように無垢な微笑をくれる。

 可愛いじゃないか、この野郎。

 でも、負けない!

 なににだ・・・。

 いかん、どうにも調子が狂う。

 もういい。

 諦めた。

 この子をドバルさんの妹だと無理やり理解しようとするからおかしくなるのだ。

 ドバルさんとは切り離して、この子はこの子として扱えばいい。

 うん。それでいこう。

 「改めて自己紹介すると、わたしはケティ。魔法魔術学校に通う魔導士の卵なの」

 「シェルフ・ボードフロント。冒険者だ」

 こちらも名乗っておこう。

 というか、当然の礼儀だな。

 「おお。冒険者さんならばっちりだね」

 なにがだ?

 って、そうそう。

 何かを手伝って欲しいって話だったか、ようは仕事の依頼をしてくれるわけだ。

 「実は、私の専攻している研究ってのが魔獣の生態なの」

 魔獣、オレのところで言えば『アントン』みたいなものの総称となる。

 ようは、『普通のモンスターよりも生物としてのランクが上の生命体で、そのランクを決定的にしている要因が魔力である獣』というのが定義となっている。

 『アントン』で言えば、普通のモンスターと一線を画している要因が『闇属性』であるので、魔獣と言えるのだ。

 「で、付近にハーピーの営巣地があることだし、ハーピーの生態調査をしたいの」

 ああ、そういうことか。

 理解した。

 「つまり、修学認定用の単位を得るのに必要なレポートを書きたい、その手伝いをってことね」

 よくある話なのである。

 実家がある冒険者ギルドでも、シーズンごとに大量に依頼が舞い込んでいたものだ。

 「でも、そういうのは自力でやった方がいいと思いますよ」

 大量に舞い込む依頼だが、たいていは断られる。

 学生が支払える金額は微々たるものであるのと同時に、意味がないからだ。

 冒険者の手を借りてレポートの完成にこぎつけたものの、自力でできたわけではないため再現性がなく、その後の研究で頓挫したという人間が後を絶たなかったという実例があるのだ。

 他人頼りで背伸びしたあとの挫折は、周囲の評価を下げる。

 実際逆恨みした学生に毒を盛られたという笑い話が大量にあるぐらいだ。

 たいていは、冒険者も本職なので大事には至らない。

 笑い話ですむ。

 それでも、気持ちのいいものではないので忌避される傾向にあるということだ。

 「あー、いえいえ。レポートそのものを手伝ってもらおうということではなくてですね。護衛をお願いしようかと」

 「護衛ね」

 なるほど。

 魔導士とはいえ卵。

 まして術師であるからには近接戦は不得手、魔獣の営巣地に行くのに護衛なしはきついのだ。

 ケティの体つきからしても、魔獣の営巣地どころか普通の森にだって一人で行かせるのにはためらいが出る。

 「色は?」

 ハーピーは、羽根の色で種類分けがされている。

 何色なのかで難易度が違ってくるのだ。

 「白よ」

 白か。

 それなら。

 「まぁ、なんとかなるかな」

 白は弱い方の種類なのだ。

 弱いイコールおとなしいとは限らないが、戦えなくはないだろう。

 言うまでもなく鳥は食材だし。

 そうなると残る問題は。

 「報酬は?」

 やはり、結局はここに行きつく。

 オレは無料奉仕大好きな英雄ではないのだ。

 「あ、うん。そうなるよね」

 困ったような顔で頬をポリポリする。

 可愛いが、ここで折れるほどオレのメンタルは弱くない。

 「お金はあんまりないんだ。研究してばかりでバイトとかもしてないし」

 学生だからな。

 ウンウンと頷いてはやる。

 「それで?」

 あまり冷たくなり過ぎないように気を使いはしても、冷たい声になるのを止めることはできなかった。

 「うぐっ」

 うぅーっとか唸りながらこっちを見つめてくる。

 『睨む』でないところがいじらしくはあるが、こちらも仕事だ。

 甘い顔はできない。

 とはいえ・・・。

 「研究って言ってるけどさ。君もしくは知り合いで新種の植物開発とかしてるやつはいないか?」

 助け舟は出してやろうか。

 「新種植物?」

 「食材にする植物を開発している知り合いがいて分けてもらえるなら、それが報酬でもかまわないんだけど?」

 魔術の中には魔法薬を使うものがあったりして、薬草系植物の栽培は普通に行われているはずだ。

 そこから派生して、新しい野菜や果物の研究開発をしている魔術師がいても不思議はない。

 ・・・と思うのだけれど?

 「ああ。クラスにいたかも。頼んでみるよ」

 ふむ。「いたかも」に「みるよ」、か。

 頼りないがまぁいいだろう。


 「なら、それで」

 サクッと話を切った。

 なぜって?

 飯時だからさ。

 すでに注文も出してある。


 『デクデクのボロボロ』

 『マクマクのハラハラ』

 『タタラのトクトク』

 『テクステクスモク』


 うん。

 まったくもって意味不明のものがあったので、選ぶのは簡単だった。

 いくつか見知った料理がある中で、この四つだけが異彩を放っていたからな。

 「ほえほえ。この辺りでしか食べないものばかり選ぶのね」

 なるほどと頷かれた。

 なぜか、当たり前の顔でケティがくつろいでいる。

 「おごらんぞ?」

 「ふーん。そうなんだ」

 なぜか、意味深な顔で流された。

 何かあるのか?

 まぁいい。

 ともかく、イッツトライ、である。

 まずは『デクデクのボロボロ』。

 「そうきたか」

 無感動に呟いた。

 ボロボロの意味が見たままだったからだ。

 なにを焼いたものなのかは知らんが、焼き色のついたものが皿に乗せられてきたのだが、見ている間にもボロボロと崩れている。

 スプーンなのでいいが、箸だったら一生喰えないかもしれない。

 突くだけで崩れるようでは、どんな達人でも箸ではつかめまい。

 口に入れると、予想通りボロボロと崩れた。

 これがホロホロとだったら、まだ食べ物といえる。

 細かく溶けていく感じなら、素朴な甘みのあるスフレとでも呼ぶところだ。

 それが、大きさの定まらない固まりとして分離するだけというのは食感がよくない。

 変に喉が渇くが、この世界では水も注文しないと出てこないから、飲み物がなくてつらかった。

 こんなもの食べ物といっていいのかとすら思った。

 それでも、オレは必死に考えた。

 これはこれどまりの食材なのだろうかと。

 オレには、この世界にはない料理法の知識がある。

 その知識をもってすれば、何か別のアプローチを試せるのではないか?

 いいところもちゃんとあるのだ。

 素朴な甘み。

 なんというか、美味しいイモの風合いに似ている。

 イモ?

 「そうかっ!」

 「びっくりしたっ」

 思わず叫んだら、横合いから悲鳴が上がった。

 おっと。

 ケティがいたんだっけ。

 さっきからヒルダに話しかけているが、もちろんヒルダさんはすまし顔だ。

 なにを言われているかはある程度理解できていると思うが、「ぴゅい」としか鳴けないからな。

 気になどしないが。

 それどころではない。

 オレは、これが何なのかわかった。

 じゃがいもである。

 煮たり蒸かしたりせず、潰しただけでそのまま焼いたものだ。

 水気を失いパサパサになるところを、もともと持っていた粘り気がかろうじて引きとどめ、口の中で耐え切れなくなって崩れていく。これはそういうことだ。

 焼くのではなく茹でるという調理法を使いさえすれば、マッシュポテトくらいにはなる予感がある。

 そこからさらに揚げるという工程を得られればコロッケになるだろう。

 夢が広がる食材の発見である。

 「それさぁ。ツタ植物であちこち這うんだよ。足が絡まるし、転べばゴロゴロとした実があって痛いの。わたしキライ」

 ヒルダに相手してもらえず暇なのか、ケティが情報をくれた。

 ほう。

 地中ではなく地上に這うものなのか。

 だとしたら、藤棚みたいなものに這わせて空中栽培にするといいかもしれない。

 場所を取らずに大量に育てられる。

 幸先がいいぞ。


 『マクマクのハラハラ』。


 続いて出てきたのは魚料理だ。

 大きさと形はアジフライだが、当然ながらフライではなく焼き魚だ。

 ホッとすると同時にちょっと残念だ。

 魚は外れることがない。

 マズいものにはならないのだ。

 うまいこともほぼほぼないのだけれども。

 ともかく、新発見とはならないだろう。

 カリッ。

 齧りつくといい感じの歯触りがして期待感が高まった。

 が・・・。

 「・・・焼きすぎだろ」

 がっかりだった。

 明らかに火を通し過ぎていてパサパサなのだ。

 いや、わかるんだよ?

 魚と肉はきっちりと火を通す。

 これが常識の世界だから、半生なんてことになってはいかんと火を入れたくなる気持ちは理解す る。

 だけど、だけどである。

 これはダメだろう。

 魚の生食文化を知っている身からしたらあり得ない調理結果だ。

 こんなにパサパサでなかったら・・・。

 もしかするとマグロとかメカジキとかかもしれない魚なのに。

 「それさぁ。ちょっと先の湖いくとうようよいるよ」

 「うようよいるのか?」

 「うようよいる」

 うようよいるらしい。

 ならば、あとで釣ってみよう。

 ちなみに、マクマクというのが魚の名で、ハラハラというのは火加減のことであるそうだ。

 レアとかミディアム、そんな感じの言葉と思えばいいのだろう。


 『タタラのトクトク』。


 続いて出てきたのは、やはり魚だった。

 「ふむ」

 これはわかりやすい。

 タタラという名だからタラを想像していたが違った。

 ならばなにかというと。

 ウマヅラハギだ。

 主に煮付けで食べる魚である。

 それなのに、やはりこんがりと焼かれて出てきていた。

 トクトクとは念入りに焼くという意味合いで使われている言葉だそうな。

 煮てこそうまい魚——オレの中ではすでにウマヅラハギ——だから、これもあまりおいしいとは思えなかった。

 これも、近くの湖でポコポコ釣れるらしいのであとで釣ってこようと思う。


 『テクステクスモク』。


 最後の品が運ばれてきた。

 「ああ、そういうことか」

 ケティの「ふーん、そうなんだ」の意味が分かった。

 頭が痛くなる。

 なんのことはない。

 無駄に大盛りにしたバカな料理だ。

 料理をこれでもかと積み上げた大皿料理。

 下の食材が潰れていようが、ソースが混ざり合って奇妙な味になっていようが、サクサク感を楽しむべき料理がぐちょぐちょになろうが構わず「多ければ文句ないだろ」と積み上げた邪道の極致である。

 オレは昔から、こういう食材に対する敬意と食べる人への愛がない食べ物を心底軽蔑する人間なのだ。

 思わずそのまま立ち去りたくなる。

 「・・・食っていいぞ」

 立ち去りはせず、ケティとヒルダに押し出した。

 食べ物に罪はない。

 作ったやつがクズなだけだ。


 営巣地だという岩壁の下へとやってきた。

 人面鳥とも呼ばれるハーピーたちが見えている。

 ハーピーというと、翼のある愛らしい少女を思い浮かべる方も多いだろう。

 だが、実のところは人型に見えなくもないシルエットではあるが、鳥のモンスターでしかない。

 人間の両腕が翼、脚が鉤爪のある三指。

 膝から下が鱗状の皮膚で、全身が羽毛で覆われている。

 顔はと見れば目が正面を向いていることだけが人間ぽいところで、鼻と口はアヒルのような黄色い嘴になっている。

 んー、まぁ確かに?

 アヒル顔で可愛いと言えなくもないような気がしないでもないと思わなくもないが、鳥のモンスターである。

 ただ、メスのスタイルの良さは抜群だ。

 飛行型モンスターであるだけに、超スレンダーなのである。

 細い脚、小さなお尻、くびれた腰。

 全体がそうであるために、決して大きくないものの目を引く胸。

 うん。

 ここはなぜか人間ぽく乳房があったりする。

 卵から孵った雛を母乳で育てる習性があるためだ。

 前述の通り、羽根の色によって種類分けがされており、白、黄、桃、空、青、赤、黒の順で強く凶暴になるそうだ。

 あと、嘴がどんどんと鋭くなっていき、黒に至っては猛禽類のそれだとか。

 つまり、ここいらに棲息している白いハーピーは、アヒル顔で比較的弱い種類となる。

 「おお。いるいる」

 ふむふむと、なにやらメモを取りながらしきりに頷いている。

 今のところ、ハーピーたちもこちらに無関心でいるようだ。

 しばらく、オレの出番はないだろう。

 そう思って、近くの散策を始めたわけなのだが・・・。

 「なんだ、これ?」

 がけ下に、あれ得ないほど何かが積み上がっている。

 何かが、というのは卵だ。

 大きさで言えばハンドボールのボールくらい。

 けっこうな大きさだ。

 それがすべて割れて、殻と腐れかけた中身が散乱している。

 「ハーピーの卵、だね」

 声が聞こえたのだろう、トタタッと走ってきたケティが、すごく平らな声を出した。

 感情を完全に支配下に置いた学者の声だ。

 「ハーピーって、卵を捨てる習性でもあるのか?」

 確かカッコウだったか、他の鳥の巣に托卵された卵から孵ったヒナは、最初に元からあった卵を巣から落とすという。

 自分だけを育てさせるためだ。

 托卵された鳥は、自分の子供でもないヒナを自分より大きくなっても育てる羽目になる。

 そんな習性があったりするかもしれない。

 「ないよ。ヒナを母乳で育てる種族なんだよ?」

 哺乳類並みの母性があるってことか。

 そもそも自分の営巣地で托卵とかないか。

 なら、これは何なんだ?

 「きっと、なんか別の生き物が入り込んでるんだよ」

 「そいつに食われたか、捨てられている?」

 「うん。理由がわからないけど、食べもしないで投げ捨ててる感じだね。地面に広がってる卵の量から考えて」

 食べているのなら、こんなに大量にはならないという分析だ。

 「食べもしないで投げ捨てる、か。ちょっと理由が思いつかなかいな」

 「そうだね」

 かわいらしく小首を傾げて、ケティは考え込んだ。

 「ぴゅいっ」

 代わりに前へ出たのはヒルダだ。

 ひょこひょこと、異臭を放つ殻と腐れかけ卵の山へと近づいていく。

 「ヒルダ、どうした?」

 ヒドラのヒルダには、臭いなんて気にならないのだろうが、なにを見つけたのだろうか?

 いくつもある山の中から、比較的上の方にあった卵の殻を掴むのが見えた。

 割ときれいに形が残って・・・あ。

 わかった。

 「割れていないのかっ!?」

 そう。無事な卵である。

 「なんで、これだけ?」

 他は全部割れているのに。

 「ああ、それ。有精卵だね」

 「ゆうせい・・・って有精卵?!」

 つまり、新しい命へと変わっていこうという卵ということだ。

 「そ。有精卵は、このあと成長していくからね。殻も丈夫なの」

 「逆に言えば、割れているのは全部無精卵ってことか?」

 「そうだと思う。ハーピーって滅多に有精卵を産まないんだ。産まれる卵はほとんどが無精卵だよ」

 「そうなのか」

 落ち込みかけていた気持ちがちょっと復活した。

 これだけの命が犠牲になったのかと思ってブルーだったのだが、実際は命が宿っていなかったのだ。

 ホッとする。

 「ん?」

 何かに気が付いたらしいケティが、卵を凝視している。

 「どうした?」

 釣られて目を向けると、ドンっとケティに押された。

 「え?」

 なにが?

 思った直後。

 ぱきゃ、と軽い音がして・・・卵が上下に割れた。

 「クック、クック」

 割れた上半分の殻がピコピコ動き、鳴き声らしきものが聞こえる。

 そして、殻が振り落とされた。

 「クック」

 殻の下から出てきた灰色の細っこい変な生き物と目があった。

 「クワッ」

 オレの顔を見たそいつが、元気に鳴く。

 まるで、まるで?

 「インプリンティングかっ?!」

 聞いたことがある。

 鳥の多くは、生まれて最初に見た動くものを親として認識するという。

 こいつは今、オレを親として認識したということだ。

 「パパ、がんばっ!」

 両手で拳を握り、ケティが励ましてくれた。

 ・・・じゃねーよ。

 「人に押し付けるなよ。研究者だろ?!」

 むしろ、自分から親に立候補して育てろよ!

 「えー、わたしまだ学生だもん」

 ママになる気はありませんって顔でそっぽを向かれた。

 いやいやいや。オレだってパパになるつもりなんかさらさらないぞ!

 「あっ!」

 文句を言ってやろうと、半歩前へ出ようとしたオレをケティの鋭い声が制した。

 逸らした状態のままで、目を真ん丸に見開いている。

 「っ!? あれかっ?!」

 視線を追った先にあったのは黒い翼で飛び回る影。

 逆光で細部まではっきりとはしないが、ポッコリとした腹と鉤のある尻尾などの特徴が見て取れる。

 インプだ。

 

 (悪魔の一種とされるが、元は妖精である。環境破壊や、魔術的な失敗によって性格が歪められた個体から繁殖したものだと考えられる。悪魔の一種だというのは、妖精を祖とするエルフたちが自分たちとつながりがあると認めることを拒んだ結果である。レナート。リックス著『妖精にも影はある』より抜粋)


 「卵がっ!」

 ケティの悲痛な叫び。

 ほとんどが無精卵と言いつつ、そこはやはり卵。

 無下に破壊されるのを見たくはない。

 「くっ」

 反射的に投げたのは、緊急時用に用意しておいた魔法球だ。

 即時展開用で、展開は早いが力は弱い。

 物理的に一度叩かれれば割れるような代物だ。

 それでも、一度は守れる。

 「キャイッ!」

 結界にぶつかったインプが甲高く鳴いて、遠ざかった。

 しかし、翼をはためかせて、すぐに戻ってきた。

 邪魔された怒りのせいか、速度も速い。

 「させないっ」

 一瞬で魔力を励起したケティが腕を振った。


 「『炎よ、矢弾となりて降り注げ』!」


 呪文。魔力を込めた言葉が紡がれて、空中に十数本の矢が現れた。

 「いけっ!」

 号令を受け、矢が飛ぶ。

 「ぐぎゃっ!」

 炎の矢が、狙い違わず全弾インプに突き立った。

 直後、爆発音すら響かせてインプが炎に包まれる。

 「お、おお」

 すさまじい。

 卵とか言っていながら、もう十分に魔術師を名乗れる実力があるようだ。

 術師を名乗っている自分が恥ずかしくなる。

 「勝利です!」

 ビシッとピースサインを出された。

 ・・・見た目や年齢に騙されてはならない。

 使い古された警句を、今一度胸に刻み込んだ。

 それはさておき。

 「なんだ、これ?」

 なんか、今回やたらとこのフレーズを口にしているな。

 今度目に留まったのは焼けて炭になりながら落ちてきたインプだ。

 その体に、無傷の首輪らしきものが付いている。

 魔導士(卵)の魔術に直撃されたも無傷というのが驚きだ。

 なにより、こんなものをモンスターが付けているというのもおかしい。

 ケティも、じっと視線を注いでいる。

 「ああ、わかった」

 眉を寄せていた顔から一転、笑顔になって頷いている。

 なにがわかったのだろうか?

 「『従魔ギルド』が従魔につけることを推奨している『獣の首輪』だよ」

 従魔ギルド。

 ずいぶんと珍しい名前が出た。

 名前の通り、「獣を従える者たちのギルド」である。

 『魔獣』、『不死の魔物』、『精霊』、『魔法生物』、『魔導人形』などなど。人でも獣でもないものを支配下に置くことのできるスキルを行使し、従えたものを使役するティマーや死霊魔術師、精霊使いといった者たちの集まりだ。

 『獣の首輪』ってのは、そのままでは野生なのか飼われているのか判断が付きづらい魔獣に装着させることで、いらぬ事故を引き起こさないように考えられた魔法道具だ。

 たとえば、街中へモンスターを連れて入ったところ通りすがりの冒険者に殺されたなんてことも起こりえるし、逆に従魔なのだろうと思われていた魔獣が野生のもので人を襲い始めてようやく退治されるなんてことも起こりえる。

 それらを、この『獣の首輪』が解決してくれる。つけていれば「従魔ギルド」の名のもと保護される。つけていない場合は退治されても文句が言えない。はっきりと区切りを付けられるという点のみであるにしても。

 珍しい名前だと言ったのは、昨今では勢力が著しく低下しているギルドだからだ。

 「・・・はぁ。あとで出頭しなきゃならんかな」

 勢力が減衰しているとはいえ、ちゃんとした組織だ。

 知らぬふりをするわけにもいかない。

 自分から出向いて事情を説明するべきだろう。

 「がんばっ」

 オレに押し付ける気満々のケティに励まされ、オレは盛大にため息を吐いた。


 でっかくて権威を主張しまくる校門を見上げている。

 なんやかんや言いつつも、ハーピーの生態調査はつつがなく行われた。

 なので、報酬の受け取りに来ているわけである。

 ケティを送ってきたのだが、警戒厳重な校舎には入れてもらえなかったので外で待っているのだ。

 「えへへへ」

 校門から顔を出したケティが、にへらへらっと笑みを見せる。

 「・・・」

 この時点で答えは明白だが、オレは踏みとどまった。

 「ウフフ?」

 こっちも笑ってみる。

 「キモっ!」

 「お前が言うなっ!」

 報酬も払わんで笑っていたくせにっ。

 「報酬は?」

 仕方ないので、はっきりと要求した。

 「んーとね」

 一応、困ったような顔をして見せてくるが、そんなんで許してはやらない。

 「なかったんだな?」

 「ううん、あるの」

 「あるのか?」

 なら・・・。

 「ただ、まだ花も咲いてなくてね」

 もしや?

 「種が取れるまで待ってってことなんだけど」

 「うぐ」

 やはりか。

 実験的な植物にはありがちなことだ。

 突然変異を人工的に起こすことで、今までになかった特徴を持つ植物にする。

 たいていは、その個体一つしか世に存在しない植物となるので、種ができるまでは増やせない。

 種ができたとしても、個体の特徴を維持できるかは未知数となる。

 うん。

 理解は可能だ。

 しかし、感情は納得してくれない。

 「クワッ?」

 ヒルダの手の中で、ハーピーのヒナが鳴く。

 ついさっき、キャルナと名付けた我が家のニューフェイスだ。

 何かもう一言、ケティに文句を言ってやろうとしていたオレの気力が、そいつのアヒル顔を見た途端に萎えた。

 もういいや。

 「こいつに免じて今日のところは勘弁してやる。種が取れる頃になったら取り立てに来るからな!」

 「う、うん。わかったよ」

 コクコクと頷くケティに見送られ、オレたちは街へと歩き出した。

 

 

名前:シェルフ・ボードフロント。

種族:人間(異世界転生者)。

職業:冒険者(冒険者ギルド所属の結界師、メインスキルは『調理』)。

スキル:1、『調理』。2、『境界』。3、『収穫』。4、『釣華』。5、『土操作』以下『?』。

手に入れた食材:竹モドキのダイコン、イモしょうが、ニンジンセロリ、チューリップに見えて花がピーマン、バラツタネギ、稲に見えて黄色いイクラ、鶏のむね肉、ヒドラの首ウナギ、木の実だけどエンバク。黄色くて地下になるナス。白い根キュウリ。緑色のカブ。落花生みたいなカボチャ。キノコの牛筋肉。臭い消しの野草と『メーメー』の血で作った『赤コンニャク』。見た目がナスのオレンジ色のはんぺん。青味の強い緑色水草昆布。木になる緑の白身と茶色の黄身卵。木の皮で鰹節、でかすぎシイタケ、束状エノキにヒマワリの種的胡麻。ツタジャガイモ。アジマグロ。タタラウマヅラハギ。

使い魔:闇属性のリクガメ『アントン』、ヒドラ『ヒルダ』、砂金シジミ五匹。ハーピー『キャルナ』。



        閑話休題(従魔ギルド)


 魔法魔術学校を背に進むこと数分、わき道にそれてしばらく歩いた先に建物が見えてくる。

 事前に確認を取っておいたので迷うことはない。

 なにかといえば、従魔ギルドである。

 石造りの堅牢な館。

 高さからして三階建てだろう。

 建物の後ろには広大な放牧場が広がっている。

 かつては所属するギルド員の従魔で賑わっていたのだろうが、今は閑散としていた。

 十数年前までは繫栄していたと聞くが、今の時代は従魔使いが激減しているからだ。

 理由はいろいろある。

 本人は強くなれず従魔依存になりがちなこと。

 従魔を従えてギルドに入会すると、『主従の絆』と呼ばれる関係構築スキルが加わる。

 10のスキルとは別にってことだ。

 これは従える従魔が増えるごとに、魔力を一定数消費し続けるものとなる。

 人気がなくなっている理由だ。

 術師ならば常時魔力を削られているせいで魔力残量が常に枯渇状態となり、自分では何もできなくなる。

 戦闘はもっぱら従魔頼みとなるのだ。

 なら、強く育てればいいとなるわけだが、ここにも問題がある。

 その従魔のほとんどは主より短命であること。

 結果として、長年育て上げた従魔に死なれたりすると途端に何もできなくなるということ。

 他にも、従魔の食費に金がかかったり、健康管理に時間を取られたりとデメリットが多いのだ。

 結果として、従魔系職業は衰退の一途をたどっている。


 カラン。

 木製扉を押し開くと軽やかに鐘がなった。

 「い、いらっしゃーい!」

 パタパタと寄ってきたのは20半ばの女性だった。

 短髪で眼鏡をしているスレンダーな人だ。

 右の髪が変に跳ねているし、手に箒をもったまま出迎えに来てるところを見るに、天然さんかもしれない。

 「うぐっ、ここに赴任して二月。初めての来客ですっ」

 ぐすっ、といきなり鼻をすすられた。

 いきなり泣いているらしい。

 「え、えーと。なにも泣かなくても・・・」

 初対面の女性にいきなり泣かれてもこっちは困るだけだぞ。

 絶対に勘弁してほしいシチュエーションだ。

 「ず、ずびばぜん」

 チーン、と鼻をかんでいる。

 「で、でもでも。ここにもギルド員さんがいたんですねっ」

 晴れやかな笑みが弾けるが・・・。

 「いや、悪いけどギルド員じゃないよ?」

 「え?」

 『絶望』、というタイトルの絵画のような顔で固まられてしまった。

 この人、仕草がいちいち重くてツライ。

 「で、ではなぜこんなところに?」

 自分でこんなところとか言ってしまったし。

 「これなんですけど」

 焦げ目のついた『獣の首輪』を出して見せる。

 ついでに、いきさつも説明した。

 「あぐっ、あぐっ」

 説明半ばで再び泣かれてしまったが、そこはもう無視だ。

 付き合ってられない。

 「ごべんなざいー」

 号泣である。

 「ぞれ、わだじのぜいでずー」

 なんのことかと聞いたところ、要するにこの人——ソレイユという名前だそうだ——は従魔好きが高じてギルド員になった人であるらしい。だというのに、本部から要請を受けて派遣されたこの支部には、赴任して二か月ただの一人も利用者がおらず、失意と寂しさから町で会う人に手あたり次第で従魔の卵を配っていたという。

 当然、中には生まれることなく死んだ卵などもあるし、生まれてもすぐに捨てられたものもある。

 そんな中、何人かが生まれてしまったものはしょうがないと、とりあえず首輪を買ってくれたそうだ。

 もちろん、そこにはインプも含まれている。

 だが、もともと興味が薄かったうえに相性が合わず飼いきなくなり棄てる人が続出、この辺りで問題視され始めているところであるそうだ。

 今回の事件もその一つになる。

 「うっううっ。従魔好きとか言いながら、その従魔の生活圏を破壊させてしまうなんて。サイテーです」

 しゃがみこんでめそめそし始めた。

 いや、まぁ、確かにそうなんだが。

 反省はオレが帰ってから一人の時にしてほしい。

 「えーと、とりあえず報告はしたので、もういいですよね?」

 飼育していたオーナーに謝罪や賠償が必要かと思ってきたのだが、捨てられた従魔で飼育者はギルド員ではないと来た。

 ならば、何の問題もないだろう。

 「うぐぅっ・・・・」

 泣きべそ掻きながらも頷いてくれた。

 よし。

 帰ろう。

 そう思ったオレの腕が掴まれた。

 「まっ、待って!」

 ぐちゃぐちゃな顔で訴えかけてくる。

 なんか必死だ。

 「な、なに?」

 「あ、あなた、従魔ギルドに入会しませんかっ!?」

 ——かっ!? と言いつつ、語調は——しろっ!! だ。

 「な、なんでっ?!」

 思わず叫び返したが、ソレイユの視線がどこに向けらているかを見て失策に気が付いた。

 ヒルダの肩に乗るキャルナだ。

 誰がどう見てもハーピーのヒナだとわかるそれを連れているのだ。

 この時点ですでに、従魔ギルドとは無縁と言い張れない状況だった。

 「そのこ、うーうん。その子たち、従魔でしょ?!」

 ほう。

 ちょっと感心した。

 セシルに擬態しているヒルダを見破るとは大したものだ。

 パッと見では人間にしか見えないが、ちゃんとした観察眼のある人にはわかる特徴がある。

 まばたきをしないとか毛穴がないとか、些細なことだ。

 その些細なことに、泣きべそ掻きながら気が付くというのは並大抵のことではない。

 「従魔ギルドへの加入要件は従魔を三体以上使役していること、よ。あと一体で要件満たすんだから、入会してくださいっ」

 入会してくれるまで離しませんって顔で腕に縋りついてきた。

 腕を完全に抱え込んでいるので、腕が何か柔らかくて暖かいものに挟まれているんですけど?

 気にならないというか、意識が行っていないようだ。

 「いや、そんな簡単に言われても」

 振りほどくことに失敗して、つい反論してしまった。

 うん。

 この感触を振り払えるだけの経験値はない。

 前世でも結局未経験で終わっているからな。

 って、そんなことはどうでもいいんだ。

 重要なのはギルドへの加盟がそんな安易なものではないという点だ。

 個人のギルド加盟に制限はない。

 いくつ加盟しようと基本的に問題にならない。

 動物愛護ギルドと猟師ギルドに同時に加盟するとかもできなくはないのだ。

 微妙な立場には立たされるにしても。

 だが、組織である。

 それなりにしがらみとかがあるものなのだ。

 冒険者ギルドなら、仕事の依頼を斡旋してくれるとか情報の提供とかのメリットがある半面、緊急時には強制的に動員をかけられる可能性があるし、情報の秘匿とかの制限を付けられたりもする。

 行商人ギルドであれば、収支報告の義務や売り上げに一割の還元義務がある。

 取り扱う商品や販売形式にもよるが、儲けた分の一割をギルドに支払わなくてはならないのだ。

 商品の運搬・提供の義務などもある。

 ギルドが必要と判断したときには、強制的に買い上げされることがあるのだ。

 これがあるのでオレは行商人ギルドへ加入していない。

 そして、両方に共通するのが30日に一度の会費納入だ。

 冒険者ギルドなら2000、行商人ギルドにいたっては5000リアン——銀貨50枚——だ。

 市場に商品を下ろすこともあるので、加入を検討したことがあるがこれが理由でやめている。

 金額だけを見るとそう高くもないように見えるが、30日に一度必ず収めるとなるとなかなかに侮れない出費となる。

 ここへ、さらに追加するというのは地味に痛い。

 「会費は2000リアン。だけど、卵やヒナの預かりサービスがあるし、支部間の転移ゲートも利用できるっ!」

 つまり、幼い従魔の育成を代行してもらい、成長したら支部間のみに使える転移ゲートで移動、受け取りが可能いうことだ。

 便利なのは確かだろう。

 だけど、だけどである。

 会費だけで2000、従魔育成の代行やゲート移動もタダではない。

 きっちりと費用を請求されるのはわかりきっていた。

 だいいち、移動ゲートなら冒険者ギルドにも行商人ギルドにもある。

 べらぼうに高い費用を支払わされるが、使用は可能なのだ。

 これ以上増やしたところで旨味はない。

 けれど。

 「従魔の育成、か」

 ふと考える。

 実を言えば一つ不安を抱えてはいた。

 ブルードラゴンの卵のことだ。

 『調理』スキルの収納スペースに置いたままにしているが、育成環境としてあまりよろしくない。

 預けるべきだろうか?

 「三体目の魔獣は何か見繕うよ?」

 棚のほうを指さして言ってくる。

 魔獣の卵のストックがあるのだろう。

 普通のモンスターの卵に孵化を止める機能なんてないが、魔獣に関しては魔力と断絶することで成長を停止させることが可能なのだ。魔力遮断素材で包んでおけば、半永久的に保管できる。

 そうでなければ、行商人が持ち歩いて売れるわけがない。

 「いや、その必要はない」

 溜息を吐いて、『アントン』を呼び出した。

 ヒルダ、キャルナ、アントンで三体の要件は充足可能だ。

 「おおっ!」

 ソレイユさんがスクッと立ってカウンターに走っていった。

 気が変わらないうちに入会させようということだろう。

 アントンを出して見せたのだから、入会してくれると思ったのだ。

 そうなんだけどな。

 銀貨200枚と、ブルードラゴンの卵を用意して手続き終了を待った。

 「お待たせしました—————?」

 ギルド証を手に戻ってきたソレイユさんが目を大きく見開いて固まった。

 「そ、それ。それ————?!」

 「ブルードラゴンの卵です。預けて大丈夫ですか?」 

 「もっちろんよっ! 丹精込めて全力で預からせてもらうわっ!」

 鼻息荒く宣言された。

 うん。

 この人の魔獣への愛は本物のようだし、ちゃんと育ててくれるだろう。

 「よろしく」


 そして、めでたくしがらみができた。

 従魔ギルドでもクエストはある。

 ギルド員がいないこの辺りで、オレはどうやらほぼ唯一のギルド員。

 もうわかるな?

 はい。

 面倒そうな依頼を押し付けられたのでした。




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