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底雪丸の過去  作者: ニビ
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第一話

イラストは渦屋シュウイチ様(Twitter ID:Uzuya_syu)よりいただきました!(掲載許可済)

 

挿絵(By みてみん)




  最初に断っておこう。

 俺は俺の育ちを憐れんだり、憎んだり、そういうことは思っていない。

 世間一般的に見れば、両親に捨てられた可哀想な幼い白イタチが暗い道に引き込まれたという切ない育ちだろう。だが生憎と俺はこの道が向いていたようだ。

 それになにより、俺はあのひとが好きだった。

 仄暗い道を、俺の背中を押しながら、ときには一緒に歩いてくれたあの優しい、血に塗れた手を持つあのひとが大好きだった。


 さっきも言ったように、俺は両親に捨てられた白いイタチだ。両親の顔どころかにおいすら覚えていないから、相当幼いうちに捨てられたのだろう。

 さまざまな獣人からなり、十人の竜王がおさめるこの世界では、金色が至上だ。そしてその次にくるのが白色だった。それほど重宝される色でありながら、俺は捨てられた。それが何を意味するのか、これほど年月を経た今でも俺は分からない。


 最初に覚えているのは、なんだか薄汚れたごみごみした路地を眺めていたことだけだ。俺はぼろきれのような布を体にまとって座っていて、周りも似たような格好の輩が素早く動き回ったり俺と同じようにうつろな眼差しをそのへんに向けていた。

 毎日似たような日だった。ときおり這い回って残飯や硬くなった肉のガラなどを漁り、満足すればまたぼんやりとそのへんを見ているだけ。生きているんだか、死んでいるんだかわからない日々だった。


 あのひとが俺の目の前で足を止めたのは、本当にそんないつもの日常のなかの一日だった。


「白イタチか?」

 最初の言葉はそれだけだった。俺に言われているとは思わず、目の前で足を止めた男をぼんやりと眺めていた。

 男は顔をすっぽり覆うフードで隠していたから、種族は分からなかった。においでその正体がわかるほど、俺は獣人のにおいを学んでいなかったし、なによりその男は薬草のようなすっきりしたにおいで体を覆っていた。何もかも隠したいんだな、と思ったことを覚えている。

「白イタチだな」

 答えない俺に怒るでもなく、納得したようにそう言って、男は俺の腕をひょいとつかんで立たせた。金茶色と黒の斑点がある腕が現れて、周囲のみすぼらしい獣人たちが妬みと驚きの視線を一瞬投げてこそこそ逃げていった。

 驚きで何もできない俺を、彼は麻袋のように担ぎ上げ、上目遣いにこちらを見る周囲の獣人たちをものともせず堂々と路地を歩いていった。








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