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第6話 配信者M/偽りの関係

 百瀬の部屋は、オタクの部屋といえばを想像したらわかりやすいだろう。

 アニメのタペストリーや、アニメ調の画像の抱き枕。虹色に光るパソコンや用途に別れたモニター。


「それじゃあ今から配信開始するけど、私が良いって言うまで喋らないでよね」


「わかってるって」


 一応依頼されてる側なのに、あんまり信頼されてなさそうだ。

 百瀬は椅子に座ると、よくわからないパソコンの画面をいじり”配信開始”という文字にカーソルを合わせてクリックした。


「今からミュート外すけど、あんたを紹介する流れに持ち込むからタイミングいいと思ったら喋りだして」


 なかなか無茶なことを言うなと思ったが、今までも大概無茶なことを言ってきていた。ここまで来たら従うことしかできない。おとなしく言うことを聞いておこう。


「こんもも~! こころももだよ! 今日はみんなに重大発表をしてあげようと思うの!」


 スマホで百瀬のチャンネルを確認すると、真っ黒のサムネイルに『【重大発表】みんなに大事なお知らせがあります』というタイトルの生配信が始まっていた。


 コメント欄を見ると『開始1カ月で引退か?』だとか『ざわ……ざわ……』などと、だいぶ盛り上がっている様子だ。

 高速で流れるコメントをさばいていると、例の龍馬と思わしきアカウントの『もしかして……』という書き込みが見つかった。

 龍馬が変な期待をしているのかと思うと、ちょっと哀れに思えてくる。


「実はもも、彼氏ができちゃいました! お前ら褒めろ!」


 彼氏設定かよ。


 いや、彼氏設定を想定していなかったわけではないが、百瀬は仮にもアイドル売りをしているわけだし、そんなことしたら荒れること間違いないだろう。

 急いでコメント欄をみると『彼氏君可哀想』『類は友を呼ぶって言うよな……』などという、思ったよりネタ寄りのコメントが流れていた。


「それじゃあ紹介するね。ほら、喋って!」


 制服の袖を引っ張られて若干動揺するが、すぐに落ち着きを取り戻した。

 なに、簡単なことだ。不特定多数の人間に話しかけるだけなんだから。


「みなさん初めまして。こころももの彼氏の――」


 言葉を並べている途中で口の動きが止まってしまう。

 そういえば名前とか考えてなかった。もういいや、どうせ1回きりだし、百瀬みたいに適当に名前からもじればいいだろ。


「彼氏の、イアです」


 配信の遅延の分視聴者の反応が少し遅れるが、しばらくすると反応が帰ってきた。

 コメント欄には『彼氏役イケボやな』だとか『エセツンデレの癖してやるな』なんて書かれていた。

 イケボだとか褒められるのは普通にうれしい。この場合はどうせお世辞だろうけど。

 というか百瀬、エセツンデレとか言われてるのかよ、設定崩壊じゃねえか。

 

「最近彼氏とか恋愛関係のコメントが多くなってきたから、ももも思い切って彼氏を紹介しちゃいました!」


 コメント欄をこまめに確認するが、最初以降龍馬と思わしきアカウントの書き込みがない。

 あまりの衝撃で配信からブラウザバックしたのか、何も言えなくなって書き込みができないのか、もしくは俺が見落としてるだけなのか。

 いずれにせよ少しは龍馬にダメージが入ってるはずだ。


「これから時々イアも配信に登場するから、名前だけでも覚えてあげなさいよ~!」


 1回きりのつもりだったのに、何故か複数回登場することが確定してしまった。

 まあ仕方ないか。どうせ視聴者も男のことなんてすぐ忘れるだろうし大丈夫だろう。


 流れでキャラクター紹介のような画面に配信が移る。

 いつの間に仕込んだのか、性格や好きなものが書いてある。

 好きなものとか教えた覚えないんだけどな……それにさっきとっさに出てきた『イア』という名前も画像に入力されている。

 手際の良さも一流というわけか。


 しばらく俺も口をはさみながら配信を続けた。


「それじゃあ今日は2回も配信しちゃったし、短めで終わります! みんな、おつもも~!」


 配信開始から30分経ったかという頃合いで、例の挨拶とともに配信が終了した。


「ありがとね。特別に感謝してあげる。今日はもう帰っていいわよ」


 ボロ雑巾のように雑に扱われている気がする。なんだかやるせない気持ちだ。


「お前はこれからどうするんだ?」


 一応百瀬の行動もある程度把握しておきたい。何をするかわかったもんじゃないし。


「SNSで後処理しないといけないの。あんたは邪魔だからさっさと帰ってよ」


「ああ、わかった」


 鼻につく言い方でちょっとイラっとしたが、飯時なのでさっさと帰ることにした。

 

 その後、メイドさんに案内されて豪華な寿司を食って帰った。

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