表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/19

第3話 Iの転校生/主人公と脇役

「みなさんはじめまして。居合翔太郎です。趣味は人と話すこと。よろしくお願いします」


 仁さんの家を訪ねた次の週の月曜日。俺とシェリフは早速百瀬の通う学校へと潜入していた。

 顔はいつも気に入られるように上の下くらいの顔にしてある。

 高校生からしたらイケメンの部類に入るだろう。

 若者からの好奇の視線にさらされるのも悪くない。

 仁さんのせいで新しい偽名を使えなかったのはきついが、所詮相手は高校生。別にそのくらい大丈夫だろう。


「はじめまして、アンバー・シェリフです。アメリカとの混血ですが、見た目はほとんど日本人と変わりません。よろしくお願いします」


 シェリフは別にアメリカ人でもないが、名前がそれっぽいからアメリカ人と名乗っているらしい。

 本来であれば転校生が二人同時に同じクラスに来るなんてことはないが、警察パワーによって許されている。

 俺たちは好奇の視線に晒されながら、担任から指示された席についた。

 席につくと、早速クラスの人間が俺たちの話をしている。

 いわゆる転校生イベントだ。何かしら彼女たちの関係にも変化が現れるはず。

 俺たちが女子だったらきっと主人公君のハーレムの一員になっていたが、男だからそうはいかない。

 聞き耳を立てるとかすかに声が聞こえてきた。


『転校生結構イケメンじゃない!?』


『もしかしたらリョーマくんより顔整ってるかも……!』


 リョーマという単語が聞こえてきたあたりで、百瀬からもらった資料に写っていた男を思い出した。

 小泉龍馬。今回の事件の主人公ポジションだ。属性はおそらくハーレム。百瀬の幼馴染でもある。

 予想では俺たちは小泉の引き立て役、要するに脇役になると踏んでいる。


「翔太郎。前の列を見たまえよ。主人公君がこちらも見ずに複数の女子と会話をしている。この僕達の空気具合。実に面白い」


 左隣に座ったシェリフから小声で話しかけられた。

 面白いだとか興味深いだとかはシェリフの口癖で、そういう発言をしているときは大体興奮しているときだからそっとしておくようにしている。


 主人公君、もとい龍馬と話しているのは、二人。二人とも百瀬からもらった資料に載っている人間だ。

 一人目は金髪が特徴的な外国人肌の少女。名前は多田(ただ)玲菜(れな)。龍馬とは中学からの知り合いらしく、共通の趣味で意気投合したらしい。ただ、資料のメモの欄に乱雑な字でクソ女と書いてあった。百瀬と何か因縁があるのかもしれない。

 二人目は黒髪ロングの清楚系の背の低い少女。名前は小泉水穂(みずほ)。同じ苗字から察することができるが、龍馬の義妹らしい。小学校の時に両親が再婚して兄妹になったとのこと。百瀬ともそれなりに仲の良い関係を築いているらしい。

 資料に恋愛感情アリと記載されているので、おそらく二人とも龍馬のことを狙っているのだろう。サブヒロインってところか。

 資料にはもう一人ヒロインが書いてあったが、龍馬の近くの席にはいないらしい。


 担任のくだらない長話も終わり、やっと着席の状態から解放された。


「もう疲れてきたぜ。シェリフ、飲み物買ってくるけど何かいるか?」


 飲み物を買うついでにそれとなく俺のシェリフとの関係を周囲に理解させておく。

 転校生同士で知らない関係ではないということを意識させておかなければならない。


「炭酸飲料であれば何でも構わないよ。料金は後で渡すさ」


「了解」


 2階から自販機のある1階に降りると、後ろから百瀬がついてきていた。


「俺に何か用か?」


「あのシェリフ君って子あんたの知り合い? 一緒に転校してくるなんて珍しいと思って」


「まあ知り合いだな。捜査に協力してくれる仲間ってところだ。それよりも俺についてきていいのか? お前の幼馴染が心配するんじゃねーの?」


 龍馬の資料には過保護とでかく書かれていた。なんでもずっと家に引きこもっている百瀬を病弱体質だと勘違いして、保護者気取りをしているらしい。


「いいのよ、あんなやつ。それよりもあんた、どうやって転校してきたのよ。ほとんど冗談だったのに。調べたけど、普通は転校手続きとか市役所でいろいろやってもらわないといけないんでしょ?」


「探偵のやることも人に見せられるものばかりじゃない、とでも言っておこうか。それよりも早めに帰った方が王子様も心配しないで済むんじゃないか? 病弱体質のお嬢様」


「やっぱりあんたって癇に障ることしか言わないよね。仮にも私はお客様なのに!」


 性格の悪さはお互い様だなんて思ったが、口を閉じて飲み物を買う。

 

「お客様はお客様らしく店員の指示に従ってくれないか? 今は出来ればお前の幼馴染の様子を見たいんだよ」


 ストーキング行為といってもどんなことをしているのか見当もつかない。

 配信者をやっているのが何か関係しているのだろうか。その類のことにあまり詳しくないからわからない。


「しょうがないわね。あとでちゃんと連絡頂戴よ?」


「はいはい、わかってますよ」


 そう言って、振り向いたときにはもう百瀬の姿はなかった。

 まあまずは容疑者の身辺調査からだ。資料と実際の人物を見比べないとな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ