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蒟蒻物語集  作者: パンダさん
7/12

吟遊詩人マッツオ氏の旅

人里離れた奥地の細い道を行脚(ハイク)しながらハイク(訳者注:古代ジャパンの超短詩型文学)作品を量産し続け、風雅の技法を極めた吟遊詩人、マッツオ=バーショウ。

旅は聖地巡礼の旅であり、また今は亡き過去の偉大なアーティスト達の鎮魂の旅でもあった。

その代表的詩作品をここに訳出する。

(なお、各詩の表題は原文には存在しないが、読者の便宜の為、訳者の独自の判断により付け加えた。)




☆☆☆




「蛙」


歴史の暗闇のなかに横たわり

何世代ものあいだ沈黙を守りし

古代の沼...

私は蛙の姿に変化し

後先かまわず思い切って

そこに飛びこんだ...

その水の音、

その悠久の時の響きよ!。




☆☆☆




「silence」


silence...

私の魂は私の体から溶けだしていき

山中の苔むした岩(※1)のなかへと

沁みこんでいった…

やがて、蝉がざわめきだす(※2)



訳者注:

※1 ストーン=薬物を示唆する語

※2 世間の良識ある人々の声等を指すと思われる




☆☆☆




「夏草」


夏の草原

大きな雲の影が

ゆっくりと横切っていく

かつてこの場所では

一癖も二癖もある猛者(つわもの)たちが

覇権を争い血みどろの戦が展開された

オタクたちの聖地、アキバハラ...

今ではその廃墟に

夏草だけが生い茂る

何という冥途の土産であることか…

私は地に倒れ朽ち果てたバスケットボールのゴールに腰かけ、

オタク・ドリームの夢の続きを

ひとり見続けている…




☆☆☆




「アサマヤマ・マウンテンにて」


爆風が野山をかき乱し

石ころを吹き飛ばす

ビュウッ!。ゴロゴロ。

私はアサマヤマだ!。

さあ、噴火するぞ!。

人間どもよ、逃げろ逃げろ!。




☆☆☆




「春」


さようなら、

今年の春もまた過ぎ去っていく

すべてのものは過ぎ去っていく

空では鳥たちが

海では魚たちが

涙を流し泣いている

大地を揺るがすその慟哭!。

誰が鳥や魚たちの涙を

拭うことができるだろう?。

(いや、誰にも拭うことなどできないのだ。)

さようなら、

世界のすべての良きものが

声をふるわせ

涙をながしている

そう、きっとあなたも…

もう2度と戻ってはこない

過ぎ去っていった人のために

過ぎ去っていく春のために




☆☆☆




「終わりなき旅」


旅に狂った私の人生も

ついに終わろうとしている

でも私は未だ見つけ出してはいない

私が探し求めているものを

病の床で私は夢を見る

からっ風の吹きすさぶ

草の枯れ尽くした

果てしない荒野を

どこまでも走り続ける夢を

私の人生は終わっても

夢は永遠に終わることはないのだ




(おわり)



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