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蒟蒻物語集  作者: パンダさん
6/12

心なき者たち (The Heartless)

妹が(さら)われたのは5月のある晴れた日のことだった。


わたしたちは眠たげな波に揺られ、春の海をのんびりと泳いでいた。

はるか向こうには霞がかった緑色の岸があり、湘南新宿ラインの列車がゆっくりと走っているのが見えた。


それは一瞬の出来事で、まばたきする間もなく、まさに手も足も出なかった。


あいつらは驚くべき早技で、妹を拐って行ってしまった。津波のような衝撃。泡と渦の轟音が、わたしとわたしの妹を永遠に引き離してしまった。


「お姉ちゃん!、助けてお姉ちゃん!!。」

「妹ちゃん!。」


妹の他にも大勢の罪のない小さな子供たちがあいつらに捕らえられた。


心ある読者諸氏よ、ここから先のおぞましく、吐き気を催す描写をどうかお赦し願いたい。

わたしはただ見たままを語るだけだ。


あいつらは捕らえた小さな子供たちをぎゅうぎゅうに寄せ集め巨大な葦簀(よしず)に並べ、ペシャンコにのしてかためて、平べったい巨大なかたまりにしてしまったのである。


あいつらはそれを餌にするのだ。


何という地獄絵図…

いや、そのまま奴らの餌食となっていたのであれば、所詮この世は弱肉強食、ともしかしたらあきらめもついたかもしれない…


ところがである。

そこまでの犠牲者、数百・数千に及ぶ尊い命を犠牲にしてまで作り上げたものが、…ああ、わたしのかわいい最愛の妹の命は無惨にも、あいつらに捕食されるということすらなく、袋に入れられたまま、やがて賞味期限切れのゴミとして捨てられてしまったのであった。

一体何のための犠牲だったのか。


袋にはこう書かれていた:



おやつやお酒のおつまみに

ぴったり⭐︎

無添加

美味しい畳鰯



…何という心なき者たちであろう。


わたしは緑色にどこまでも広がるあたたかな春の海に揺られ、静かにただよいながら、あいつら、心なき者たちの支配が、いつか必ず潰え、この世界に平和が訪れるよう、心から祈った。



(おわり)



☆☆☆



パンダさん先生多忙につき

しばらく休載します₍ ᐢ. ̫ .ᐢ ₎


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