ショート・ショート
「やったぞ、ついに蒟蒻人間製造に成功した。」
「エヌ博士、おめでとうございます。」
助手はピストルを博士に向けた。
「実はアール国のスパイだったのだ。コンニャクから人間を作るなんて、なかなかマッドサイエンスであることよ。まんまと騙されるとはたいそうマヌケなやつだ。」
「むむ、たしかに。ほんとうに、まんまと騙されていた、ならばな…。」
エヌ博士も拳銃を取りだした。
「お見通しというわけか…。だがしかし、おれだってピストルを持ってるだぞ。そうだそうだ。そりゃそーだ。おれが先にお前を撃つぞ」
「いや、わしがさきに撃つ」
「いやいや、おれが先だ」
「いやいやいや、わしが先だ」
「じゃあお先にどうぞ?。」
「ぐぬぬ…」
「ぐぬぬ…」
ふたりは睨みあったまま勢力拮抗し、動かなくなってしまった。
その瞬間、
パリーン。
ガヤガヤガヤ。
窓が割られ、警察の特殊部隊が突入した。
「武器を捨てて手をあげろ!。2人とも銃刀法違反で逮捕しまあす。」
「ウッソー。」
2人は逮捕、蒟蒻人間製造マシンは証拠品として押収された。
これにて一件落着、と思いきや、マシンが輸送の途中でドサクサにまぎれ運転手とともに忽然と消えてしまったのである。
しばらくして、博士の国でもスパイ氏の国でもない第3の勢力であるエス国において、蒟蒻人間が次々と製造され、安価で美味しい労働力としてエス国の莫大なる利益となったのであった。
「まさに、漁夫の利ってやつか…。」
エヌ博士はとても残念そうに呟いた。
(おわり)