表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒟蒻物語集  作者: パンダさん
12/12

エピローグ

晩秋の夕暮れ時、台所でFM放送のロッシーニにあわせて口笛を吹きながらスパゲッティーを茹で、トマトソースを煮ていると、お勝手口のチャイムが鳴った。


ドアを開けると、蒟蒻が立っていた。


木枯らしがさっと枯れ葉を散らして吹き過ぎていった。


「ええと、どちら様で…。」


「ご覧の通り、蒟蒻です。えー、ゴホン。(と、コンニャクは咳払いをひとつした。)たまたまお宅の前を通りかかりましたところ、いやはや何とも非常においしそうな匂いがするもんで、私もひとつ、そこに混ぜてもらえまいかと思いまして。」


「混ぜてもらえないか、とは…?。」


「はい。つまり、(コンニャクは少しもじもじしつつ、)食材として、私を使ってはいただけますまいか…?、えー、突然、不躾なお願いとは存じますが、ぜひ、あなたのようなお料理名人の手で私めを料理してもらいたいものだと思いまして。」


「はあ…。」


といった話で、突然の押しかけ蒟蒻だっただが、お料理名人とまで言われてしまっては、そいつを料理に使わざるを得なくなってしまったのであった。


僕は少し予定を変更し、おでんを作ることにした。


蒟蒻といえば、やはりおでんであろう。


冷蔵庫にはちょうどおでんのための食材が揃っていた。ちくわ、はんぺん、がんもどき、つみれ、こんぶ巻き、そしてちくわぶ等である。スパゲティーは、しらたきとして使用することとした。


と、またしてもお勝手口のチャイムが鳴り、いつもの面々、おしるこ犬と黒豆猫があそびにやって来た。


「やあ、君たちは本当に鼻がきくんだねえ。」


「はい、もうおなかぺこぺこなんです。」


かくして、6畳間の炬燵にておでん鍋をかこみ、晩秋の夕暮れ時、ささやかなるおでんの宴となったのであった…。


蒟蒻は、ぐつぐつ煮えるおでん鍋に浸かり、ほっとひと息、安心立命、といった感じのほがらかな顔であった。



おわり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ