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革命せよ、革命せよ、革命せよ  作者: 望月喬
第一章 アストリア編
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第2話 「For children」

 家に帰ると、ヴァルターの惨状を見たアリアがまるで天変地異でも起きたかのように驚いていた。

 彼女はヴァルターに対して本当の子供と同じように接してくれており、とても良い母親なのである。


「何だってこんなになるまで殴られたの? 本当に逃げようと思えば逃げられたでしょ」


 アンナが治療を施しながら尋ねる。それに対してヴァルターは少し悩んだあとで、


「力が……欲しいんだ」


「へ?」


 アンナは答えになっていないヴァルターの返答に戸惑った表情を浮かべた。それを見てあまりに飛躍した発言だったことを自覚し恥ずかしくなって、言葉を付け足す。


「力がない自分を理由にして逃げたくなくて。だから」


 アンナはそれを聞いて、ああ、と頷く。自分の言いたいことを理解してもらえたらしい。


「ヴァルター、トレーニングしてるのに全然筋肉つかないものね」


 本当に理解してもらえたのか疑いたくなるような、痛いところを突く容赦のない発言に思わずたじろいでしまう。すると奥のベッドで寝ていたアリアが、


「パクス=グレイツの宝玉」


 と呟いた。


「ヴァルターがたまに言ってるやつよね。あれって本当にあるわけ?」


「わからない。でも父さんはアインハルト家に伝わる伝説の宝玉だって」


 小さいころ、父親から聞かされた話。おとぎ話のような類のものだ。

 パクス=グレイツの宝玉。

 この世界を形作ったと言われているアレンという名の一人の男が、死ぬ間際に残したらしい四つの宝玉の名称である。

 父親によれば、どうやら宝玉を手に入れた者は強大な力を手にすることが出来るらしい。


「アレンの伝説はみんなが知っていることだけど、その宝玉のお話はアインハルトさん以外誰も知らなかったのよね。あと――」


「ハザの話」


 アリアの言葉を遮ってヴァルターが続ける。

 この世界はアレンによって作られた、という伝説はおそらく全国共通と言ってもいいほどの常識だが、アインハルト家にだけそれに加えて二つほど独自の話がある。

 ひとつが今の宝玉の話。そしてもうひとつが、「ハザ」という男の話である。


「不思議なこともあるものよね。ヴァルターの言うハザって男と同じ名前の人間が王になるなんて」


 包帯を巻いてくれているアンナが言う。そのぐらいは自分で、と包帯を取ろうとしたらはたかれた。

 ハザという男の伝説。アインハルト家に代々伝わる伝説ではアレンが命を賭して戦ったいわゆる悪役がハザということになっていた。

 そしてその後アレンが死ぬときに作ったのがパクス=グレイツの宝玉。


「ハザ王が即位したときは本当に驚いたよ」


 伝説上のハザとアストリア王のハザ・エシルガ。どうにもヴァルターはこの一致がただの偶然であるとは思えなかった。

 勿論、そんな疑念をぶつけたところで誰も理解してくれないのだが。そもそもハザの伝説自体がアインハルト家にしか伝わっていないわけで。


「はい、おしまい」


「ありがとな」


 アンナが傷の治療を終えて椅子に腰かける。それを見てアリアが思い出したように、


「だから、パクス=グレイツの宝玉よ」


「え?」


「ヴァルター、力が欲しいって。パクス=グレイツの宝玉なら叶うんじゃないの?」


 アリアは少し夢見がちなところがある。

 普通の人間ならこんな片田舎の家にしか伝わっていないおとぎ話なんて信じないのだろうが、彼女は昔からこの手の不思議な話が好きだった。

 しかし、かく言うヴァルターも人のことを笑える立場ではない。初めて父に宝玉の伝説を聞いたときからその実在を信じている節がある。


「ああ。でも場所がわからないんだ」


「ちょっと待ちなさいって」


 当然のように会話を進める二人に、アンナが割って入る。彼女はいつもこうである。

 ヴァルターとアリアが楽しそうにスピリチュアルな談義を交わしていると必ず現実的な意見を出してくるのだ。母と娘でどうしてこうも違うのか。正直、つまらないやつである。


「何よその腹立つ顔」


「別に。もう慣れたさ」


「私は少しもその顔に慣れてないわよ」


 手持ち無沙汰なのか、アンナはさっき椅子に座ったかと思えばもう立ち上がって暖炉の火を調節していた。いや、単にこの顔が見たくないだけかもしれないが。アンナは暖炉の前でため息をつくと、


「妄想に逃げたくなるのはわかるけど、そのぐらいにしておきなさいよ。本気で考えることでもないでしょ」


「俺は本気だ」


「何を言って」


「本気だ。力が欲しいって俺の気持ちは本気だよ」


 アンナが木をくべる手を止める。振り返って、ヴァルターの目を見る。


「だからって、場所もわからないんじゃどうしようもないじゃない」


 沈黙に耐え切れなくなったのか、アンナはふと目をそらしてそう言った。暖炉の熱とは裏腹に冷たい響き。


「――王城なら何かわかるんじゃないかしら」


「お母さん!?」


 出来上がってしまった気まずい空気を少しも読むことなくぶち壊す女、アリア。話題提示の威力が一人だけ飛び抜けている。


「王城の書庫って凄いらしいわよ。前の王様が結構な読書家だったみたいで、アストリア国内の本はもちろん世界中の本が集められているって聞くわ」


「そうか、それなら宝玉の情報もあるかも……!」


「ヴァルターッ!」


 必死とも言えるアンナの叫びに、さすがのアリアも息をのんだ。今日は何だかおかしい。いつも以上に話させまいという意思を感じる。

 いや、多分、ヴァルターも今日は普段よりアリアとの会話に乗り気なのだ。なぜか――先ほどの山賊たちとの事件が関係していることは言うまでもない。

 こわごわと前を向くと真面目な顔をした彼女が視界に入る。場違いな感想ではあるが、アンナのその真剣な表情には凛とした貴人のような魅力があった。ついじっと見つめていると、


「……なによ」


 きりっとした顔が崩れ、何故だか照れたような表情になる。目を合わせてくれない。

 これ以上彼女を怒らせるとまずいことになるので、ヴァルターは咳払いをして弁明を試みる。


「すまん。でも、俺は本当に力が欲しい。このままじゃ嫌なんだよ」


 ヴァルターの言葉を聞いたアンナはしばらく黙っていたが、やがて俯いたままポツリと呟くように話し始めた。下を向いているため彼女の表情は見えず、弱々しい声だけがこちらへ届く。


「……心配なの。あなたは弱くて、昔から私が守ってあげないとダメで。お母さんが宝玉の話を出したときはね、今日のこともあったからその気になっちゃうだろうなって思ってた。男の子のくせに昔から夢見がちだったし……だから、そんな根も葉もない伝説の話に夢中にならないで、もっと建設的なことを考えてほしいの。私は家にいなきゃいけないし、あなたが宝玉探しになんて出て行っちゃったらどう守ればいいのよ」


 ――正直、驚いた。さっきまで自分が彼女を守らなければならないなどと心の中で豪語していたくせに、その守りたい本人にそんなことを言われるとは思いもしなかったのだ。

 しかもアンナの言葉によれば彼女は昔から自分のことを気にかけていたことになる。格好悪すぎて話にならないではないか。


 知らず知らずのうちに忘れていた呼吸を何とか取り戻して、アンナを説得しようとする――が、なんと言えばいいのか、一言も頭から浮かんでこない。

 アンナも喋りきってしまったのかまた黙ってしまった。どうしたらいいのかわからずあたふたして視線をせわしなく動かしていると、


「王城に入るなら深夜がいいかしらね」


 ベッドの上から予想外の助け舟が来た。いやこれは助け舟というより海戦用の軍艦かなにかではないか。さすがにぶっ飛びすぎだろう。

 病気が悪化したのかと心配になり部屋の奥のアリアを見る。が、彼女はいつも通りその穏やかな優しい顔で微笑みを返してくるだけだった。


 恐る恐るアンナに視線を移すと、可哀想なぐらい困惑している。当然だ。自分は思いの丈をぶつけたのに実の母親にそれを思い切り無視されたのだから。

 涙目になっているアンナがあまりにも哀れなので、ヴァルターがアリアに聞いてみる。


「あの、おばさん? おばさんはその、俺とアンナどっちに賛成なの?」


 いや、正直聞かなくともわかりきっているのだが。

 と、アリアはヴァルターの問いかけに対してにこやかに、


「ヴァルターよ」


 答えた。いよいよアンナは泣き出しそうである。

 しかしアンナも母親には負けたくないのか目を服の袖で擦ってアリアを睨みつけると、


「何でヴァルターに賛成なの? お母さんだって心配でしょう!? なのにどうしてわざわざヴァルターを危険な目に遭わせるようなこと――」


 堪え切れなかったのか、言葉の最後にアンナの髪色と同じ色の透き通った目から一筋涙が流れ落ちた瞬間、ベッドから立ち上がったアリアが彼女に抱きついた。突然のことにアンナもヴァルターも言葉を失う。


「ごめんなさいね」


 アリアが言った。ヴァルターからは彼女の顔は見えないが、なにか心の奥から気持ちを精一杯込めて絞り出したような震えた声だ。唐突な謝罪に対してまともに返答出来ないアンナを気にする様子もなく、アリアは言葉を紡ぐ。


「私はね、この通り体が弱いでしょう。そのせいで、貴方たちを縛っていた。私の介護があったしお父さんも早くに死んでしまったから、どこかへ行くことも街の外へも連れ出してあげられなかったの。だからね」


 息継ぎをする音は、暖炉で木が燃える音にかき消される。


「――前から、貴方たちが何かをしたいと言ったら、どれだけ危険でも笑顔で送り出してあげようって思ってた。少しでも貴方たちのしたいことをさせてあげたかったの」


「お母さん……」


 アリアはアンナを抱きしめていた手を離しこちらを向く。それでやっと気づいた。

 彼女の目は真っ赤に染まっていた。でもそれはベルネット家特有の赤さではなく、涙によるもの。さっきの絞り出したような声音は泣いてしまうのを耐えていたのだと、ようやく察する。


「心配よ。ヴァルターのこと、すごく心配。本当は宝玉探しには行ってほしくない。でもね――それが、親だから」


 アリアの目からこれでもかと言うほど澄んだ水玉が流れ落ちる。それはまるで真珠のようで、しかしそんな無機質なものではなかった。


「おばさん……ごめん、俺おばさんの気持ちなんにも考えてなかった……」


「いいのよ。こっちこそごめんなさいね、笑顔で送り出そうって、思ってた、のに」


 言葉の途中でしゃくり上げるほど、アリアの涙の勢いは強くなっていた。彼女は娘と同じように服の袖でその目を拭くと、涙を流すアンナに微笑を携えて、問いかけた。


「だからね、アンナ。私はあなたがしたいことをしてほしい。あなたが本心から望むこと。あるでしょう?」


「私は……」


 少しの沈黙。ほんの少しの間でも、アンナの表情はコロコロと移り変わった。悩み葛藤しているのがよく伝わってくる。しかし、やがて彼女は口を開いて、


「私は――ヴァルターの側にいてあげたい。……お母さんには申し訳ないけど」


「うん」


 ヴァルターからしてみれば、目の前でそんなことを言われては小っ恥ずかしくて仕方ない。

 しかし、アリアは彼女の答えを聞いて満足そうに頷いた。柔らかい雰囲気を壊すことなく彼女は、それでも申し訳なさげなアンナをフォローしようとする。


「いいのよ。貴女はもう17年も自分を抑え込んでたんだから。ヴァルターを守るのが今一番したいことなら、思う存分してきなさい」


「けど……お母さんは」


「私なら大丈夫。お隣さんも良くしてくれてるしね」


「うん……わかった」


「アンナ、いいのか? 本当に」


 遠慮がちにヴァルターが問う。そもそもこの論争はヴァルターを発端として起こったものなのだ。アンナとアリアに対する申し訳なさは少なからずあった。

 しかしアンナは、ヴァルターの不安を晴らしてくれるような、母親によく似た柔らかいその笑みを浮かべて、


「うん。それが私のしたいこと。――あなたが本気で行くのなら、私もついていくわ。宝玉探し」


「アンナ……ありがとう。おばさんも、本当にありがとう」


 パクス=グレイツの宝玉。強大な力を手に入れることが出来るという伝説。どこまで本当かはわからないが、探そうともせずにこのまま死んでいくのは御免だった。


 ――そこまで必死に生きて、一体何がしたいのかとつくづく思うが。


 ついさっき、ヴァルターの心の中をよぎった言葉が舞い戻ってくる。

 したいことはずっとあった。気づかないフリをしていただけだ。


「俺行くよ。絶対宝玉を見つけて、強くなってここに帰ってくる」


「ええ、楽しみに待ってるわ。きっと無事に――」


 と、そのときだった。


「――!?」


 突如がなり立てて開いた扉。ヴァルターが咄嗟に振り向く。


「……兵士?」


 家の扉の向こう側――そこには、軍服を身にまとった兵士ふたりが立っていた。


「――ふむ。君か。それに、君も」


 兵士は部屋の内部をじろじろと観察したあと、ヴァルターとアンナに目を止める。


「アストリア兵士の方が、何か御用でしょうか」


 アリアが遠慮がちに尋ねる。彼女の言う通り、今も家の前で仁王立ちしている彼らはアストリアの兵士だった。その証拠に、胸にはアストリアの国旗が描かれている。

 と、アリアの質問に対して、片方の若い兵士が顎に手を当てながら答えた。


「ええ、まあ。先ほどね、外で騒ぎがあったでしょう。どうやらイスニラムの山賊を負傷させた者がいるようで」


「……!」


 兵士の言葉に、ヴァルターの心臓が打ったのがわかった。奴らは、自分たちのことを言っている。


「……それがなにか」


「――わーァかっているでしょう!?」


「ッ!?」


 アンナの声を遮って、兵士がどかどかと家の中に入り込んでくる。そうして彼らはヴァルターたちの目の前までやってくると、目線を落として三人を見下ろした。


「君たちがやったのは知っているんだよ。君たちがイスニラムの山賊を危険な目に遭わせたんだ。そう通報を受けた」


「危険な目って、俺たちはあいつらに絡まれて」


「危険な目に遭わせたのは事実だ! そうだろう!?」


「――っ」


 中年の兵士の脅すような話し方。ヴァルターはそれに身を縮こまらせて、反射的に頷いてしまう。

 すると、その反応を見た兵士は満足そうに口角を上げて、


「よし、逮捕だ。おい、この男を拘束しろ。ああ、そっちの若い女も」


「な!?」


 もう一人の若い兵士が懐から縄を取り出す。それを見てヴァルターは思わず立ち上がって後退した。


「な、とは何だ? お前たちは逮捕だ。アストリア兵士が身柄を預かる」


「ちょっと待ちなさいよ!」


 アンナが声を張り上げる。いつの間にか後ろにいたアンナとアリアも立ち上がっていた。


「いきなり逮捕ってなに? どういうこと? 私たちは襲ってきた山賊を返り討ちにしただけ。正当防衛よ」


「正当防衛もなにも、お前たちはイスニラムとの情勢を悪化させかねないことをしたんだ。国家へ不利益をもたらす可能性を鑑みて、逮捕せねばならない」


「そんな詭弁……! そもそもあなたたちは軍人でしょ!? 逮捕の権限は警察機関にしかないはずよ!」


 アンナが声を荒げて主張する。が、兵士は聞く耳を持たないらしい。どこまでも面倒くさそうな表情で、こちらを呆れたように眺めている。


「……はあ、もういい。抵抗はやめろ。お前たちは逮捕される。決定事項だ。おい」


 中年の兵士が再び指示する。と、隣で待機していた兵士がまたヴァルターに接近してきた。その手に持った縄で拘束するのだろう。


「ふ……ふざけんなよ」


「ああ?」


「ふざけんなよ。襲ってきた山賊を撃退しただけで逮捕? 意味がわかんねえよ。だったら俺たちはどうすれば――そうだ。それこそあんたたち軍人が何とかすべき事態だったんじゃねえのかよ。あんたらは国民を守るのが仕事だろ」


 声は少し震えている。予想だにしない状況に、恐怖を抱いていた。

 しかし、それでも、ヴァルターの述べていることは正しいはずだ。軍人とはかくあるべき。国民の非常事態には、命を賭して戦わねばならない。それを放棄したのは彼らだ。

 だが、中年の兵士は衝撃的な一言を間髪入れずに放った。


「は? 嫌だよ、だるっちい」


「は――――――?」


「嫌だって言ってんだ。わざわざ自分の命を危険にさらしてたまるかっての。くだらねえ」


「お前、何を言って――――?」


「耳、どうかしてんのか? それなら聞こえるように言ってやるよ。――文民どもなんて、どう、でも、いい!」


「貴様――――――――!」


 ヴァルターの脳が支配される。落胆に。怒りに。激情に。

 それらに惑わされたヴァルターは、自身の行動を抑えることが出来なかった。


「ヴァルターッ!」


 後ろからアンナの制止の声が聞こえる。しかし、すでに振りかぶった拳が止まることはない。


「抵抗か!? 軍への抵抗か! ハハハハハハハ!」


 中年の兵士が一歩踏み込んだことで、距離が詰まる。そしてそのあと繰り出された鉄拳は、ヴァルターのそれの速さを軽く上回った。


「ぐあッ!」


 兵士のパンチをもろに食らい、床に倒れ込むヴァルター。

 痛い。頬がじんじんと痛む。まるで焼かれるようなその痛みに視界を揺らしながら、ヴァルターは前へ向き直った。

 ――と。


「ヴァルター!」


「――な」


 刹那、目の前に迫っていたのは、銀色の光。

 先の尖った鋭利な刃物――槍の先端である。


「ハザ王の国家に従わない非国民は、死ね――――!」


 槍が迫る。迫って、ヴァルターの顔面を貫く。

 ヴァルターは目をつぶった。否、つぶろうとした。それではなぜ目を閉じることが出来なかったのか。

 それは、完全に視界を閉ざす瞬間、何か映ってはならないものが映ったからである。


「――え」


 ごしゃり。

 普通に生活していればまず耳にすることのない気味の悪い音。

 その音が、今ヴァルターの目の前で鳴った。

 ぶれる焦点。揺れる視界。ヴァルターの前に立っているのは、見慣れた弱々しい背中だった。


「……おば、さん?」


「――キャアアアアアアアアッ!?」


 瞬間、アンナの叫び声が轟いた。

 対するヴァルターは、現状を理解できない。


「あ……え?」


 貫かれた背中から覗いた槍の先。そこから、ぽたぽたと血が垂れている。それが尻餅をついたヴァルターの顔面に着地するたび、全身に鳥肌が立った。


「なんでだよ。なんで……なんで、おばさんが?」


 アリアは、ヴァルターをかばって、その腹を槍で穿たれていた。


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