第13話 「(Sky:True)Thing」
「――俺はあの滅びた村の生き残りだ」
「滅びた村……って私たちがさっきいた村のことよね」
「俺もよくは知らないが、あの村は空間を歪ませる能力で存在を隠匿していた。でもある日」
――あの村は世界からその姿を隠していた、”何らかの集団”が暮らす村だった。
情報の漏洩を防止するため、レオのような子供には、あの村が一体何の集まりなのか、そして何を目的にその姿を森林の中に潜ませ続けるのかを教えられることはなかった。
大人になればわかるはずだったが、その日がレオにやって来ることはなく。
ある日村は、黒い布を被った謎の集団に襲われた。
闇色の集団は能力で隠していたはずの村への入口をいとも簡単に見つけ出し、無理やり侵入してきた。彼らは畑を荒らし、金品を強奪し、村の人々を思い思いに殺害した。
「走った」
――レオが呟く。
「両親は気づいたらいなくなっていた。多分俺を捨てて逃げたんだ。村を出る前に、両親が八つ裂きにされて倒れているのを見た」
「――――」
脳裏に浮かぶのは朱色に染まった室内と、荒らされた村の情景。
しかし最初にヴァルターの体を駆け巡ったのは最早吐き気などではなく、あの場にこんな子供がいて、自分がかつて体験したことのない死屍累々の光景を彼が目の当たりにしていたことへの恐怖だった。
あるいはそれは哀れみと言ってもいい感情だったのかもしれないが、そんな細かいところまで自身に気を配れるほどの余裕を保つことは難しかったろう。
「無事に村から逃げ出せたのは俺を含めてたった三人だ。五十人ぐらいの村民がみんな殺されて――俺以外の助かった二人もこの森から脱出する前に心臓を抉られた」
「何故……貴様だけが生き残れた?」
イグナーツが問う。
「村の子供は全員戦いの訓練を受けていた。その中でも俺は抜きんでて優秀だったから奴等とも戦えた」
確かに、そう自負しても疑う余地などないほどレオは強かった。
しかし、子供であるレオが、あそこまでの武力を持っているというのはやはりいささか信じ難い。
あれはきっと人間が一生を費やしても辿り着けない者がいるような極地のはずで、それに軽々と足をつけているイグナーツはおろか、この若さでイグナーツと同程度の能力を有しているとは何たる才能だろうか。
そして、そこまでの才能を少年に開花させた、“訓練”を施したという村の大人たちは一体何を目的にそんなことをしていたのか。
「訓練とは何だ」
イグナーツも同じ疑問を抱いたらしく、ヴァルターの思考と一字一句違わない質問をぶつけた。
しかしレオは変わらず目つきの悪い不機嫌そうな表情で、
「ただの訓練だ。王城の兵士がやるような訓練。……何でそれを俺らに課したのかは教えてくれなかった」
「水平線か」
「……村から逃げて追っ手も返り討ちにしたあとは、この森の中で息を潜めていた。数日経って奴等が村から出てきてどこかへ帰っていったから、村に戻って一人で暮らした。それで五年だ」
「そして貴様は、私たちをその闇色の襲撃者だと勘違いした――そういうことか?」
「……そうだ。俺が食料を探しに外に出ていたら、お前らが能力で隠されていたはずのあの村から出てきたから、俺を探して戻ってきたんだと思った。まぁ途中から違うとはわかっていたが、もう貯蓄されていた食料も底を尽きていたし、殺して食おうと思った」
「お前やっぱり子供じゃないだろ」
子供の皮を被った殺人鬼ではないのか。いやというか、大人でもまともな人間ならそんなことは口走らない。
「ああ。俺は子供じゃない。――俺の中の時間があそこで止まったとは、絶対に思いたくない」
感傷のこもった呟き。不機嫌で気が強そうに見えて、彼は心に大きな傷を抱えている。
いや、抱えないはずがないのだ。同胞を殺されて、八つ裂きにされた両親を目にして、平穏な生活を壊されて――。
「そんなチビで子供じゃないわけあるかよ」
「あ?」
心情を隠したヴァルターのからかいに、レオが苛立った声で反応する。目を釣り上げてこちらを睨むその瞳は、小柄でやせ細った少年には似合わない、達観したようなものだった。
「まぁ、そういうことなら、もう私たちに危害を加える気はないんだな」
「ああ」
「では、私たちは行く。とは言ってもあと少しテオスの街にいるが」
「……ああ」
言い残して、イグナーツは【城砦】を解除しさっさと立ち去ろうとする。しかしヴァルターは踵を返さずに、
「――お前、俺たちと一緒に来いよ」
「は?」
レオが素っ頓狂な声をあげてこちらを向く。
その反応を見て、ヴァルターもさすがに唐突過ぎたと自省しつつ、
「いや、な。俺らが行ったら、またお前は独りになるんだろ。俺も父さんと母さんを失って、辛かった。でも俺にはアンナやおばさんがいてくれた。でもレオ、お前は本当に独りだ。それに、そんな年で」
「それが何だ。俺はもう五年も独りでいたんだ、今更気にもしない」
「食料がもう無いんじゃないのか」
ヴァルターの問いかけに対してレオは沈黙。すると後ろにいたイグナーツがこちらまで戻ってきて、
「ヴァルターは何故そう考えた?」
「……こいつの言う事を信じるなら、こいつにはもう家族も仲間もいない。食料もないし、これから生きていくのは難しいだろ。それに、また村を襲った集団がこいつを狙ってくるかもしれねえ。そう考えるとテオスで預かってもらうより、俺らみたいに場所を転々としている方が安全なはずだ」
ヴァルターが説明し終わる。しかし、イグナーツは返事をせずに黙ってこちらを見ているだけだった。何故か――多分、まだ彼を納得させる理由が足りていない。
ヴァルターの理由は完全にただの善意である。偽善と言われればそれまでだが、ヴァルターと同じ天涯孤独の少年に心を揺さぶられた。このまま放っておけないと素直に思ったのだ。
しかし、その善意のみではイグナーツを説き伏せられない――。
「ああ、そうか」
小さく呟く。彼が自分に言わせたかった、もう一つの理由に気づいた。
「レオが俺らと来れば、必然的に目的を共有して一緒に戦うことになる――レオほどの戦力が加われば、大きすぎるメリットになる」
早口で述べると、イグナーツはにこりと笑って、
「ああ」
と言った。やはりこの男、最初からレオを連れていくつもりだったのだろう。そうなれば、レオに伝える必要の無いこの後の行程をわざわざ教えたのも説明がつく。本当に食えない男である。
つまり、レオの加入は善意によるものだけではなくこちらにも利益があるということ――まさにウィンウィンだ。
しかし、イグナーツは自分に花を持たせるために敢えて気づかせたのか――ポジティブにそういうことにしておく。
「確かに、イグナーツとやり合えるレオがいれば、騎士が二人いるってくらいのレベルよね」
アンナもレオを連れていく案に賛成らしい。
「私たちに危害を加える気はないようだし、仮にまた暴れ出しても次は勝てる。安全だ」
「オイ、どういうことだよ」
「君のルガル――【威武】だったか? それの弱点が把握できた今、もう負ける気はせんさ」
「知られようが結果は変わらねぇよ。黙ってろオッサン」
イグナーツとレオの間に一瞬だけ火花が散る。
「どういうことだ?」
「それについてはまた後でだ。それで、レオ。私たちの旅に同行するか?」
イグナーツが問いかける。
対してレオは目を細ませながら考え込んでいるらしい。しばしの沈黙に、木の葉が風に揺れて、そのさざめきが主張を強める。やがて、レオは納得したように小さく頷くと、
「わかった。同行する」
それを聞いてヴァルターも頷く。その朱色の瞳がヴァルターではなくフィリーネを見つめていたのが引っかかったものの、特に深い意味はないだろうと判断して、答えた。
「よろしくな、レオ」
*
「――俺たちは、アストリア国王であるハザを倒すために旅をしています」
テオスの街に戻り、ヴァルター一行はセドリックの家にいる。効率がいいので、そこでまとめて自分たちの目的について話そうということになった。その第一声が今のヴァルターの言葉である。
「――」
フィリーネとセドリックは驚いたように目を見張る。
レオは特別動揺した様子を見せずに、槍を立てかけた隣で腕を組んでいる。
「――まさか、本当に」
セドリックが息を吐く。少し不思議なのは、この初老の男は緊張した面持ちをしているだけでなく、どこか期待のような感情がその皺に刻まれているように見えたことだ。
「はい。私たちはハザを打倒する――つまり革命を起こそうとしている」
イグナーツが繰り返す。
「そう、か」
セドリックは深呼吸して、ヴァルターの両肩を掴む。至近距離で目が合い、思わずのけぞりそうになるが、彼の眼光がそれをさせなかった。
「――成し遂げてくれ。絶対に、成し遂げてくれ」
ただの一国民のものとは思えない、なにか執念のようなものがひしひしと伝わってくる。
彼はハザと、何か関係があるのか?
「あの、セドリックさんは、ハザとどんな関係なんですか?」
同じ疑問を抱いたようで、アンナが問う。セドリックはヴァルターの肩から手を離すとうつむき加減で、
「……言えん。すまない」
歯噛みするようにそう呟いた。「だが」と続ける。
「――俺は、ハザを憎んでいる。毎日、毎日、奴の惨たらしい死を祈るくらいに、ハザを憎んでいる」
憎悪。遠慮のない、剥き出しの憎悪。目は血走り、歯冠を噛む音が口内で共鳴している。
包み隠されることなく発露した彼の憎しみは、ヴァルターの隣に直立するイグナーツでさえ黙らせた。
「……お、お父さん」
フィリーネが気まずそうに呼びかける。娘としては複雑な心境だろう。それを察したのか、セドリックは申し訳なさそうにいつもの無愛想な表情に戻って、
「すまん。取り乱した」
と弁解した。いえ、と首を振るヴァルター。
「……それでですが、彼女の希望もあり、私たちはフィリーネを連れていこうと考えています。今言ったように、命の保証はない大変危険な旅です」
フィリーネが強く頷く。ヴァルターらの目的を知っても、彼女の決意は揺るがないらしい。
父親であるセドリックは、再び俯いて考える。
「…………これも運命なのだろうな、ロイネ」
そう呟いて、セドリックは顔を上げる。娘と同じく、決断した。
「わかった。連れていってやってくれ。おそらくは、このまま俺の家にいるよりは安全で、フィリーネのためになるから。だが、もしフィリーネに何かあったらすぐ俺の元へ来るんだ。おそらく、俺なら対処できる」
「わかりました」
「フィリーネ、気を付けて行ってきなさい」
「うん。行ってくるね、お父さん」
フィリーネの声は震えていた。涙をこらえているんだろう。強い子だ。
最後の挨拶を済ませて、家を出ようとする。と、
「待て。……レオ、といったな。君と二人で話がしたい」
*
セドリックがレオと話している間、近くの食堂で待つことにした。
ヴァルターの前にイグナーツが座る。……わざとだろうか。深く息を吸って、手のひらを開いたり閉じたりする。
――わざわざ述べるまでもなく、緊張していた。
「何でだろうなあ」
「随分緊張しているようだが」
イグナーツが茶化してくる。この男、楽しんでいるのだろうか。
ヴァルターの隣に座るアンナが心配そうにこちらを窺っている。これ以上彼女を不安にさせるわけにはいかない。
都合よく出来た半端な時間、出発前の切りのいいタイミング、ヴァルターとイグナーツの確執にけりを付けるなら今しかないのだ。だからヴァルターはレオをセドリックの家に残したあと、イグナーツに「大事な話がある」と切り込んだ。
「え、えっと、あの……?」
何も知らないフィリーネは、獲物に狙われた野ウサギのように縮こまっている。
イグナーツと並んで座るだけで威圧感に竦みそうになるのに、今やヴァルターとイグナーツの間にある微妙な空気も加わって、脳がパンクしているに違いない。
このまま膠着していても埒が明かない。ええいままよ、とヴァルターが口火を切る。
「イグナーツ。――俺は王になる気はない」
イグナーツが目を見開く。アンナも見開く。フィリーネが会話の冒頭から置いてけぼりなのは可哀想だが仕方ない。
ここで自身の考えをぶつけなければ、ヴァルターとイグナーツが分かり合うことはこの先ずっと無理だろうから。
「…………そうか」
イグナーツはやはり、残念そうに言った。目線を下げ、男にしては長い睫毛が瞬きに沿って揺れる。
「でも、お前はそれじゃ納得しない」
「?」
「――だから、選挙をしよう」
勢いよく言い切る。思わず立ち上がってしまった。自然上を見上げるかたちになったイグナーツは、何を言っているのか理解できないというふうだった。周囲の眼が気になったのですごすごと座り直す。
「あの森からテオスに帰って来る途中、街の人が話しているのを聞いたんだ。――あんな悪政をするハザはきっと、警察に賄賂を渡したから王に選ばれたんだ、って」
「警察に賄賂……?」
アンナが呟く。それをチラリと見たイグナーツは頷いて、
「ハザが実際に賄賂をしていたのかどうかは知る由もないが、警察機関が王政を牛耳っているのは確かだ。いや、どちらかというと王政が警察を飼っている、という方が正しいか」
「つまり、ハザ王は警察を味方につけて臨時の王に選ばれたってことですよね。圧倒的な支持で即位したのにはそういう裏があったんですか」
フィリーネが会話に参加する。そういえば、フィリーネやレオにはまだハザの正体を明かしていない。この話に方がついたら、宝玉の伝説と一緒にきちんと説明しておかなければ。
「あのハザのことだ、その可能性も十分にあるだろう。前国王マクシム様は改革として警察機関との癒着をなくすことを考えなさっていたが、望みは叶わなかった」
「……それでヴァルター、選挙って?」
アンナが促す。
「つまり、警察が裏で手を引いているってことは、本当に国民が選んだ王ではないってことだ」
ヴァルターの意見に、三人が同意する素振りを見せる。
「だから俺たちがハザを倒したら、もう一度ちゃんと選挙をするんだよ。候補者を募って、警察にも関わらせない」
「なるほど。今と同じ選挙王政、しかし透明性の高い選挙か」
イグナーツが顎に右手を添えて考える。それなりに印象は良いらしい。
「民衆が選ぶ本当の王様、素敵ですね」
「そこで本題だ。俺はその選挙に出る。そうでもしないとイグナーツは納得しないだろうからな。だけど俺からも条件がある――イグナーツ、お前も立候補するんだ」
「イグナーツも?」
予想しない方向から疑問の声が上がる。アンナだ。当の本人の元騎士は、気難しい顔をして少し悩んだ後、
「君は私が王に相応しいと考えている――そうか。つまり、王とは今ここで誰がなるかを決めるものではなく、国民が選ぶものだと言いたいわけか」
どうやら思惑が伝わってくれたらしい。今イグナーツが述べた通りで、ヴァルターはテオスの住民が唱えていた陰謀論を耳にして、“民衆が王を選出すること”が最も国にとって良いと考えた。
そのために必要なのが、警察機関が関与しない選挙であり、そしてヴァルターとイグナーツが立候補することでお互いの要望も一応満たせる。
「そうだ。もしそれでイグナーツじゃなく俺が選ばれたのなら、そのときは受け入れるよ。勿論俺たち以外の第三者が選ばれる可能性だってある」
「なるほど。血統による統治ではなく、民衆が王を選ぶ――新しい考え方だな。国民のことを考慮した、政治。そうか、王の考え方はこういうことだったのか」
「イグナーツ?」
「いや、何でもない。いいと思うよ」
「だろ」
目線を合わせて微笑み合う。わかってくれたらしい。安心して、自然と肩の力が抜ける。
「ああ。よし、わかった。君の考えに乗ろう」
イグナーツが強く頷く。
隣ではアンナが嬉しそうにヴァルターを見ていた。嬉しいというよりは、どちらかというと彼女も安心しているのだろう。本当にアンナには気を遣ってもらったし、心配をかけた。
あとでしっかりお礼を言おう、と誓ったところで、
「そして、最後に一つだ」
ヴァルターが声を落として、続ける。自分にとっては、これが一番の決意表明となる議題である。
「――ハザを倒す軍のリーダーを、俺にやらせてほしい」
述べる。革命だとかクーデターだとかは、その行為自体に大変なリスクが伴う。成功すれば英雄になるし、失敗すれば反逆者として首を切られる。あっさり首を切られる方がマシだ、なんて死に方をするかもしれない。
畢竟、そのすべての栄誉を受け、そのすべての責任を負うのが、“リーダー”である。
肉親を間接的に殺され、人生を狂わされた。ハザと遭遇したあのとき、体内のあらゆる臓器の底から、憎しみが湧き上がるのがよくわかった。セドリックのように。
殺してやりたい。強く思った。そしてそれと同時に、生まれてこの方一度も外に出ることなく暮らしてきたアストリアを、失いたくないと思った。
「軍の指導者っていうのは士気に関わる重要な存在だ。それはわかってる。でも、これは俺が始めた戦いなんだ」
だから責任を負いたい。だから一生を賭けたい。
ほとんど初めてと言ってもいい、ヴァルターが自身で選択した「やりたいこと」。
それと添い遂げる覚悟が、既に彼の中にあった。
「――賛成だ」
あっさり。発言者は目の前の男。
「特に何の異論もない。そもそも私は、王に推薦したぐらいだからな」
「私も賛成。不安がないと言ったら嘘になるけど、あなたの頑固さはよく知っているし大丈夫だと思うわ」
イグナーツに続いてアンナも首を縦に振る。残るフィリーネを見やると、
「私は皆さんのことがまだよくわかっていないので、他の皆さんがヴァルターさんを選ぶのならそれでいいと思います」
と、はにかんで言った。あまりに難なく認められて、何だか肩透かしを食らった気分である。
「そう、か。ありがとう。――わかった。軍のリーダーは俺がやる」
「さしずめアインハルト軍、だな」
「そうね」
こうして、ハザ打倒を掲げる革命軍――もとい、アインハルト軍は動き出した。
*
「君はあの村の生き残りだとヴァルターたちは言っていたが」
「そうだ。突然アストリア軍が襲ってきて――王は家族を庇って殺された」
「――――」
「あれから俺は、一人で村に残って生き延びていた」
「ああ、そうだ――。君は希望だ、もうひとつの」
「……」
「だが」
「――?」
「なぜだ? その色はどういうことだ」
「その剣を、離してくれ」
「君は希望か? 俺たちの信じていい希望なのか?」
「その剣を――」
「答えろ!! 俺とて君のような子供の喉を抉るのは忍びない――真実を言え」
「俺は――テオスの民で、王の近衛兵だったクライヴを父に持つ、レオ・エーレンベルクだ。そして俺はテオスと、ただのアストリア人である母との間に生まれたハーフだった。これは、そういうことだ。……忌み子ではあったが」
「使命の秘匿は絶対だったのではないのか。そんなことは――」
「真実だ。これ以上も以下もない。だが――」
「……」
「――姫が無事で、本当に良かった」
「……テオスの意志は、使命は消えてなどいない。ヴァルターたちには詳しいことは言えなかったが、祟りなどは本当に存在しない。あるのは、意志のみだ。そして、もし君がその意志に反した者なら、テオスの執念がそれを許さない。が、しかし、今はその言葉を信じよう」




