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153話 鎮魂歌+紅の魔力(1)

 可憐がハルたちと会話をしている時、光たち男性陣もまた、大部屋で会話をしていた。既に猛が魔力を使い、壁の監視カメラやジンの腕時計型の機械を操作していた。



「可憐、大丈夫かな……」



 可憐たちの部屋と同じ、中央に白い丸いテーブルと椅子が五脚置かれた部屋で、光と猛、ジンは椅子に座っていた。


 可憐を心配する光の言葉は既に三、四回は口から無意識に漏れていた。



「だから、何回言わせんだよ。オレのヨメとムスメがいるんだからヘーキだって」



 光の隣に座っているジンがため息混じりに答える。既に数回足を組み直しているジンは、光の弱々しい言葉に苛立ちを覚える。そして、軽く光を睨みつけていた。


 それを見ていた猛が、これ以上ジンの怒りを光に向けさせないように口を挟んだ。



「で、光。磯崎が居ない今が、言いたいことを言える機会じゃないのか」



 遠回しに可憐と別れる前に、光が魔力を使って猛に伝えた事の催促をする猛。彼の意図を理解した光は、両肘をテーブルに触れさせ、顔を交差させた両手に軽く置いた。



「んだよ、恋バナかよ」



 先程の文脈でしか情報を入手していないジンが、再度ため息をつきながら口を開く。足を組み直し、両手を組む。


 そんなジンに光は視線を移し、否定を表現するかのように一度だけ、ゆっくりと(まばた)きをした。




「違うよ、ジン君。これは、君の話なんだ」



「オレ?」




 光の予想外の言葉に、ジンの目が見開いた。思わず組んでいた足を解き、顔を光の方へ向ける。



「うん。単刀直入に言わせてもらうね。君からルビーレッドの魔力……ウリエルの魔力が見えるんだ」



 光が自分の目にオレンジ色の魔力を灯す。そのあと、指先にも魔力を灯し、隣に座る猛の目元にも指先の魔力を塗った。


 二人の視界には、ほんの僅かだが、ジンの身体からルビーレッドの魔力がこぼれていた。



「オレが……魔力……? しかも、ウリエルの……?」



 ジンの言葉に頷く光。顔を乗せていた手を一度テーブルの上に置いた。指先で数回テーブルを優しく叩く。



「まだ、確定した訳じゃないんだけどね。ガブリエル(ぼく)だから辛うじて見えるくらいの、僅かな魔力なんだ」



 猛もまた、光から借りた魔力でジンを見る。Eランクで暮らしていた時から見えていた悪魔の魔力。そこに上乗せするように、ジンの肩や手のひらに見落としてもおかしくないくらいの微量なルビーレッドの魔力が漏れていた。



「なるほど……。こんなに少ないから、俺はまだ分からないのか……」



 光と猛だけが納得しているような会話をしているので、ジンが舌打ちをした。再度足を組み、光を軽く睨みつける。



「どーゆー事だよ。確かに、オレは他の人間と比べたら天使とか悪魔の知識はある。だけど、それは、弘孝がオレと一緒に暮らしていた時に教えてもらったウケウリなんだぜ?」



 再度舌打ちをするジン。そんなジンに光は張り付いた笑みを向けた。



「物凄い微量なんだけど、君からウリエルの魔力が溢れているんだ。可憐と初めて会った時も、ウリエルの魔力が彼女から見えていたけど、それは弘孝君と長い間一緒にいて、弘孝君の想いが加護を与えていた影響だったみたい。だけど、ジン君はジン君の身体から溢れている。これは、君自身がウリエルの魔力を持っているって事なんだ」



 張り付いた笑みの隙間からジンを見る光。僅かに開いた目から見える黒い瞳は、確実に目の前の顔に傷のある男を捉えていた。



「ったく、誰がオレにいつ、ウリエルになる事を決めたんだよ。ってか、オレが持っている魔力は悪魔の魔力だっただろ? 消えたのかよ、その魔力は」



 ジンの切れ長な目が光を捉える。悪魔の魔力は消えていないよ、と張り付いた笑みのまま答える光。何度目か分からない足を組み替える行為を見た猛が、二人の会話に口を挟んだ。



「契約者になる運命を決めるのは神だ。例え人間がこの事実を知っていようがいまいが、神には関係ない。ウリエルの魔力が弘孝から消えた今、ジンがそれを受け継いでいても、おかしくないという話だ」



 神。その単語を聞いた時、ジンは思わず笑みがこぼれた。それと同時に口から漏れた乾いた笑い声。一人だけ笑い声をあげるジンに、契約者二人の視線が集まった。



「ははっ。全部決めるのは神かよ! オレが悪魔になるかもってなのに、ウリエルのカノウセーもあるのも、神が決めてんのかよ! んじゃぁ、オレたちは、神のオモチャにすぎねぇなぁ!」



 ジンの高らかな笑い声と神を侮辱するような言葉。それを聞いた猛は、思わず立ち上がり、ジンの元へ歩いた。そのまま有無を言わさず、ジンの胸ぐらを掴んだ。



「ちょっと! 猛君!」



 猛の予想外の行動に光が驚きの声をあげる。そんな光を無視して、猛は掴んでいるジンの胸ぐらをそのまま持ち上げた。やや身長がジンより高い猛により、ジンは足が床から数センチ離れた。



「いくら人間でも、神を侮辱するな……!」



 猛がジンの胸ぐらを掴む腕に魔力を込める。コバルトブルーに近い紫色をした魔力が、そのままジンの首を襲った。


 悪魔を切り裂くその魔力は、ジンの身体から漏れる悪魔の魔力を次々と打ち消す。それと同時にジンの心臓を食らいつくような勢いで、苦しめていた。

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