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116話 鎮魂歌+熾天使(1)

 可憐と別れたレフミエルは、Sランク独特の服にあるフードを被り、可憐たちが住むものとは違うとある施設へ足を運んだ。


 左手首に埋め込まれている機械を使い、白で統一された無に近い空間の扉を開く。白で統一はされていたが、天井がガラス製だったので、月光が優しく彼女を照らしていた。


 扉の先には同じく白い服を着た男と女が一人ずつ立っていた。



「遅かったじゃない」



 先にいた女が口を開く。レフミエルはフードを取り、視界を明るくした。美しい金髪がなびく。



「まずは初めまして、じゃないの? アリエル。」



 アリエルと呼ばれた女もまた、フードを取った。フードから現れたのは、顔や身体に沢山の傷や火傷のあとが残る少女。




「そうだった。随分Eランク人間として生きた時間が長くて、そこら辺の礼儀を忘れてしまっていたわ」



「私はまだ、契約者……熾天使レフミエルとしては転生したばかりで記憶しか引き継いでいない。そして、あなたたちが先輩なのも理解しているけど、熾天使としては同じ立場、でしょ」



 小さく笑うレフミエル。アリエルは彼女の笑みに軽い舌打ちをした。それを見た白服の男がフードを取った。長い金髪が美しくなびく。



「まぁまぁ。喧嘩はそこまでにしましょう。彼岸花のように強い契約者と、マーガレットのように慈悲深い契約者」



 二人を花で例えながら仲裁に入る。レフミエルと同じ金髪の男は、両手に二人を例えた花をどこからか取り出し、渡した。反射的に二人が受け取ると、男は微笑んだ。



「花の契約者。いえ、ここでは熾天使ヘルエルと呼んだ方がいいの?」



「ご自由に。私は熾天使ヘルエルでもあり、東城春紀でもあり、花の契約者とも呼ばれている名の多い契約者ですから」



 儚く笑う春紀。レフミエルはわざとらしいため息をつくと、ふと何かを思い出したかのように口角をゆっくりと上げた。



「そう言えば、今日、可憐様から名前を頂いたわ。フミ。これが私の人間としての名前だって。とても美しい響きでしょ? あそこまで慈悲深い御方だなんて……私は幸せ者よ」



 まるで優美と同じ口調と声色。可憐がその場にいたら重ねていたであろうレフミエルのその仕草だったが、優美を知らない二人の前だった為、それはレフミエルでしかなかった。



「それは良かった。私は自身でつけた名前だから少し羨ましいよ」



 アリエルが微笑しながら返事をする。無数の傷痕の一部である手の甲の部分を無意識になぞった。



「私はリーダー……ウリエル様をお守りするのが最高の幸せ。それなのに、私を数年間、人間として、一人の家族として接してくれた……。あの方も慈悲深い方だわ」



 ふと、アリエルの脳内に弘孝やジンたちと過ごした日々が鮮明に蘇る。誰も契約者だと疑わず一人の人間として接してくれた日々は、劣悪な環境でもアリエルにとって熾天使という立場を忘れて過ごせる夢のようなものであった。



「二人とも、それぞれの大天使様をお慕いしておりますね。私は、今のガブリエル様から嫌われていますし、長く契約者として生きていますので、特にこれといったものはありません。……。とりあえず、自己紹介は終了しましたので、本題に入りましょう。可憐さんの魂の件は二人ともご理解していますか?」



 話を切り替えるように二人から一歩離れる春紀。フードからこぼれる金髪は月光を反射し、美しく輝く。


 春紀の言葉に、レフミエルとアリエルがそれぞれの考えを口にした。




「ラファエル様とサタンの魂を引き継ぐ器。それ故にあの方は契約をまだ完了していないのに、あれだけの魔力を持っている。それがどれだけ危険なことかも可憐様は自覚してる。ならば、可憐様の魂がなるべく不安定にならないように支え、悪魔からお守りするのが熾天使の役目じゃないかな」



「レフミエルと同じ意見よ。可憐はウリエル様の想い人。それを守るのはウリエル様を守ることにもなるし、結果的にサタンの復活を阻止できる。可憐が本気で叶えたい願い事を早く見つけてくれるのを願うだけとしか私は言えないかな」



 頬の傷に触れながら話すアリエル。傷痕よりも火傷の痕のほうが多い頬の部分は、生前、彼女がどれだけの仕打ちを受けていたのか説明しなくても第三者に理解させることができる。



「なるほど。二人の意見は私も賛成です。可憐さんを守る。それが今の私たちにできる最大限の仕事です。そして、あと五日程で悪魔たちが攻めてくる予定です。癒しの大天使ラファエル様のお力が必ず必要となるでしょう」



 可憐をイメージした紫陽花の花をどこからが生み出し、光りに変える春紀。二人は紫陽花を知らなかったのでそれが何を意味するのか理解できなかった。



「アリエル。バエルの件があります。恐らくまたあの人間のもとを訪れるでしょう。その時は、よろしくお願いしますね。私はルキフグスをもう一度、仕留めます」



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