手紙
私の友人たちへ
やあ、〇〇。君にこうやって手紙を書く、なんて。想像もしなかった。君と馬鹿な話をしたことが、遠い昔のように感じるよ。
君は今、どうしているかな。学校に行けなくて、つらい思いをしているかな。それでも、君のことだ。案外、喜んでいたりするのかな。ふふ、研究が進まなくて、いらいらはしてそうだ。
そうだ。私はよく、君を怒らせていたね。愚鈍で、何回も、同じ間違いをする私に。そんな時、君は無口になるんだ。いつもはよくしゃべる君だから、君の機嫌はすぐに察していたよ。
今だから書くけれど。私は、君が嫌いだよ。君はいつも、私をバカにするから。笑って流していた私だけれど。傷つかなかったわけじゃ、ないんだ。少しなら冗談だなって、気にしなかったけど。傷ついたとき、しゃべることが少なくなって。笑顔が少し、変わったことに、気づいていたかな。
ねえ、〇〇。君が私を見て笑っていたとき。私を映す君の眼に。優越が浮かんでいたのは、私の見間違いかな。君がいきなり笑うのをやめたとき。彼を見つめる顔に。嫉妬が浮かんでいたのは、私の気のせいかな。
ねえ、〇〇。君が欲しかったのは、なんなんだろう。私という友人、ではないよね。それなら友、だろうか。もしくは、生きてるかかし。あるいは、友人がいる君、かな。
ねえ、〇〇。それでも、君がいなかったなら。私はずっと、一人だったろうね。君がいたから、私は救われた。君がいたから、新たな友人に会えた。君のおかげで、素敵な恋ができた。
ねえ、〇〇。私の友人。私を友と、呼んでくれた。最初の友人。ありがとう。君の長寿を、願っている。
やあ、△△。君に一度書いた手紙は、思ったより短くて。この手紙を、見せるわけにはいかないけれど。あそこに書けなかったこと、今まで言えなかったことを、ここに記すね。
前にも言ったかな。君とまた縁がつながったこと、本当にびっくりなんだ。あの時、切れたと思った縁を。もう一度つないだのは、間違いなく彼だった。あのときはまだ、お互いに興味も少なくて。それが今はこんなになった。人生の不思議を感じるよ。
君と深くかかわっていくほどに、君の脆さは私に重なって。君が弱るたびに、私は心を痛めたよ。それは今も、変わらない。そんな君はそれでも、立ち上がって。ぼろぼろのまま、逃げたいといいながら。戦う君は、私の憧れだ。
ねえ、△△。傷ついた君は、私を理解者と呼んだけれど。私は何一つ、君を理解しちゃいないよ。私が君に、共感したって。君の感じるそれとは、違うのだから。
ねえ、△△。人はみな孤独だって、よく言われるけど。私は君じゃない。君も私じゃない。寄り添いたいと願っても。君じゃない私は、君の苦しみを知らない。私じゃない君は、私の憧憬を知らない。
ねえ、△△。いつか君が、理解者と呼ばなくなったとき。少しは君の苦しみを、知っていたいと思うんだ。だから私は今日も、戦うよ。憧れに向かって。
ねえ、△△。私の友人。私を理解者と、呼んでくれた。憧れの友人。ありがとう。君の幸せを、願っている。
やあ、◇◇。先日、会ったばかりだというのに。こんなものを書くというのも、変な感じだ。変わらないその姿に、やっぱり安堵したよ。少し疲れていた君の隣は、相変わらず居心地がよかった。
思えば君が、一番私を見ていた気がする。野心家な君は、いっそ冷徹なまでに私を映していたね。こともなげに君は通り過ぎて。私は嫉妬もしたし、無能に落ち込んだものだった。そんなとき君は。なんでできないんだといいながら、私を引っ張ってくれたね。
ねえ、◇◇。君の眼に、私はどう映っていたかな。何よりまっすぐ、私を見ていた君には。私にすぐるところは、あったのだろうか。
ねえ、◇◇。無能ばかり晒していた私を、君が対等に接してくれたこと。私は何度も、救われたんだ。だから今日も、立ち上がれる。
ねえ、◇◇。今の私は、君が誇れる友人だろうか。私が君を誇るように、君が私を誇ってくれたなら。一つ、恩返しにはなるだろうか。
ねえ、◇◇。私の友人。私をまっすぐ、見てくれた。対等の友人。ありがとう。君の栄達を、願っている。