さくら さ・く
『さくら さ・く』
さくらは どうして あんなにきれいなのでしょう
まぼろしのように うつくしく
かげろうのように くるおしく
ひとのこころを ゆらゆら ゆらす
さくらの はなびらは
いちまいでは はかないばかり
でも はなびらたちは いっぱいあつまって
「さくよ」
「さくよ」
「きれいに さこうよ」
そうねがって さくので
だから あんなに きれいなのです
あふれているのは はなびらたちのねがい
こぼれてくるのは はなびらたちのつぶやき
さくらなみきをとおるとき
みみをすませてみてください
「さいたよ」
「さいたよ」
「きれいに さいたよ」
よろこびのうたを ささやきながら
さくらのはなびらたちは
かぜに ながれていくのです
『葉桜が揺れるころ』
葉桜が揺れるころ
胸ポケットに飛び込んできた
恋を抱きしめていた
葉桜が揺れるころ
揺れるまなざしで
あなたの背中を見つめていた
季節が巡っても
葉桜は心の中で揺れ続ける
風のように 陽光のように
あなたへの想いはざわめき続ける
葉桜が揺れるころ
舞い落ちた花びらの中に
あなたの心を探して立ち尽くしていた