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見えない者


「父上も母上も仕事が落ち着き次第、顔を見せると言っておりましたので、近日中に訪問すると思います」


「そうですか、申し訳ない。陛下やルイズ殿下によろしくお伝えください」


あまり長居をしても大神官が気を使うだろうと、少し話してすぐに退出。早々に王宮へと戻った。


王宮に帰ると、使用人の人たちがいつものように綺麗に一列で出迎えてくれる。これは何度見ても慣れない光景だわとライアーはビクリと肩を震わせた。


ロマードたちに、聞いた話を早く伝えるべきなのだが、あいにく二人は用事で外出中。仕方がないのでライアーたちはロマードたちの帰りを待つ事にした。


ミハネやスミネにお茶を用意してもらいながら、イアルと共に部屋の椅子に腰をかけた。せっせと準備をする二人を眺めていると、すぐに暖かいお茶が運ばれてきた。


「ところでつかぬ事を聞きますが、婚約者候補の方は何人ほど居たんですか??」


出されたお茶を飲んでいたイアルは盛大にむせた。ライアーはそんなに変な質問だったかと慌てながらむせる彼の背をさすった。


「きゅ、急になに??」


「いえ、聞いてみただけです」


他意はないですよというものの、彼はまったく納得してはいない様子だった。


「確か母上から、かなり押されていたのは三人かな。シュトガーネ公爵家のルイーナ、レイレーン公爵家のメリア、ルトラドフ候爵家のイルナかな」


「ふむ」


ミハネたちが用意したお茶請けのお菓子を摘みながら、こくりと相槌を打つように頷いた。どんな人たちなのか知りたいなと思いながら、もうひとつお菓子を口に入れる。


「急に、そんな事聞いてどうしたの??」


「なんでもないないですって。はいどうぞ、美味しいですよ」


話をそらすように、イアルの口元に焼き菓子を持っていくと不満そうにそれを食べた。何で話してくれないのという不満が顔に表れている。


だが、言えるわけもない。


今回の事件の犯人はその婚約者候補やその血縁者に居るんじゃないのかと考えたからだなんて。


性格の悪い女ね私は、証拠もないのに。ライアーはため息交じりの笑みをこぼす。


ティーカップを手にしたとき、ドアがノックされた。入ってきたのは、ロマードたちだった。


「お帰りなさいませ」


椅子から立ち上がり頭をさえると、二人は共に疲れたような表情で笑った。ライアーもイアルも何事だと目を丸める。


「レオディール伯爵夫人に会ってきた」


また何故??とイアルは首をかしげた。夫人は、あの日のうちに伯爵が迎えに来て帰ったはずだが何かあったのだろうか。


椅子に座るロマードたちに、お茶を出すようミハネとスミネに頼む。疲労するほど遠い場所に住んでいるのかと思えばそうではないようで、ロマードは困ったよう腕を組んだ。


お茶の用意が終わったミハネやスミネ、近くで控えていた騎士たちも全て、ロマードはいったん退出させた。あまり外に出てはいけない話ということは、彼の行動で察しがついた。


「どうやら、レオディール伯爵夫人は誰かに脅されて騒ぎを起こしたらしい。話せば殺されると頑なに犯人の名は口にはしなかったが」


何処かで聞いたような話に、イアルとライアーは顔を見合わせた。


「その、僕たちも同じような話を」


大神官から聞いた話を、ロマードとルイズに話せば二人は驚いたように目を見開いた。


どうやら大神官の言うとおり、裏で何者かが働きかけている可能性が高い。重々しく四人は同じ机に視線を落とした。


「なんにせよ、大神官に手を出すのは大罪。犯人を早急に見つけなければならないのですが」


困ったように綺麗に整えられた眉を寄せるルイズ。犯人のめぼしがつかなくては、動こうにも動けないのだろう。


犯人を知っているものは皆、頑なにその名を口にしようとしない。


他に証拠となるものは出てきていない。


どうしたものかと、ライアーは柔らかな湯気の立つお茶に目を落とした。



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