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まさかの事態




◇◇◇◇




翌日の早朝。


起きてすぐにその知らせを聞いたライアーは、頭が真っ白になった。


「結婚式が中止??」


報告をした者は重々しい顔をつきで頷いた。近くで話しを聞いていたミハネとスミネも衝撃で言葉を失っている。


昨夜、司式を勤めるはずの大神官が何者かによって階段から突き落とされ、両足を骨折するという事故が発生したのだ。


大神官は高齢で幸い命に別状はないがすぐに体は動かせない、挙式は難しいという話になったのだ。


「大神官は神官職の長であり、我が国の王族の結婚等の司式を務めるのが慣わしでして」


話を聞いたライアーは察しがついて頷いた。


「ただでさえ私は人間。それに加え大伸官が司式を勤めない式を挙げれば、不安視する声が増える可能性が高いという事ですね」


「はい。それで、その件を含めお話があると陛下が」


「わかりました、用意をしてすぐに向かいます」


すぐさま着替えをすると、ロマードとルイズの待つ部屋へ向かう。部屋の前につき、入室すると部屋の中はかなり重々しい雰囲気になっていた。


「おはようライアーさん」


「おはよう御座いますライアーさん、朝早くからお呼び立てしてしまってごめんなさいね」


「陛下、ルイズ殿下、おはよう御座います。いえそのような事は、お待たせしてしまい申し訳ありません」


頭を下げるライアーに、ロマードとルイズはいやと首を振って見せた。


ドアの傍に立っていたが、イアルに呼ばれ彼の横に立った。


「おはよう、ライアー」


へらへらと笑うイアルには、まったく気力がなく。早い段階で話は聞いていたのか、目の下に薄っすらと隈がみえた。


「おはよう御座いますイアル」


全員と挨拶を交わし、本題へと入った。


「大神官殿の回復は早くても二ヶ月ほどかかるようだ。ハードなスケジュールでも、我々としては挙式は早くと考えていたのだが、こうなってしまうとどうにもならぬ」


ロマードは眉間に皺を寄せた。人間であるライアーに少しでも早く国に馴染んでもらいたい、そのためには早めに挙式をしたいと考えていたのだ。挙式をすぐにあげれば、その後は落ち着く事が出来ると。


「ライアーさん、君をここへ来てもらったのは。君の今後についてを聞こうと思ってなんだ」


「今後、ですか??」


あぁとロマードは頷いた。


「挙式までの間、この国に滞在するか。あちらの家で過ごされるかだ」


「……そういうことですか」


婚約したが式を挙げていない。実家に帰ろうと思えば帰っても良いのかと考えた。しかし、答えなど決まっているようなものだった。


隣からの視線が引き止めるのだ、帰るの??帰って欲しくないと。本人は気付いているのいないのか分からないが、見えないはずなのにへにょっと垂れた耳が見える。


「ご迷惑でなければこちらに滞在したいと思います。勿論ご迷惑なら帰りますが」


「迷惑なわけないよ!!」


手を握り食い気味にいうイアルに、ライアーは目を白黒させた。


(わたくし)も大歓迎よ!!娘がずっと欲しかったの!!お洋服の話やお菓子作りでしょ??それから!!」


嬉々としてやりたいことを指折りに言っていくルイズにロマードは咳払いをした。


「まぁこのように、息子も妻も大歓迎だ、勿論私も。挙式まで我が国で過ごしてくれ」


「ではそのお言葉に甘えさせていただきます。お世話になります」


頭を下げるライアーに三人は微笑み。重々しかった部屋の雰囲気が少し明るくなった。




挙式は大神官の回復後執り行う事となり、挙式に参列するため、王宮に滞在していた来客者には説明をしお帰り頂く事となった。


勿論、ライアーの父であるデレク、それからエリナもだ。


昼前、馬車に乗り帰る二人をライアーは見送りに出ていた。


「お父様、病気には気をつけてくださいね。顔は童顔でも、歳は歳ですから」


「童顔って言う必要あった!?」


いつも通りのやり取りに、ライアーもデレクもホッと息をついた。


「ライアー何処へ行ってもお前は可愛い僕の娘だ」


ギュッと抱きしめられる暖かさに、ライアーは目を閉じた。ひとしきりハグをしたデレクが先に馬車に乗りこむ。


「お姉様」


例えガラガラで誰だ??と思うほど声が変わっていても、姉と呼ぶのは世界中探しても一人だけだ。視線を向けると、エリナがムスっとした顔で立ってた。目は泣き張らせていて、少し痛そうだ。


「なに??エリナ」


「私やっぱり、お姉様のこと嫌いよ。でも、でも、いっぱい嫌がらせしてきた自分はもっと嫌い。……ごめんなさい、いっぱい酷い事して」


ライアーは、笑みを浮かべるとムスッとしたままのエリナを抱きしめた。


「私!!公爵家に奉公にいって、いっぱい知らない事を知ってくるわ!!お姉様より良い女性になって!!幸せになってやる!!」


ギュッと背に手が回され、ライアーは目を閉じて頷いた。


「うん、私なんかより良い女性になって、幸せになって」


エリナはさっとライアーから離れ、馬車に駆け込んでいった。


全員が乗ったのを確認した御者が鞭をうとうとしたとき、イアルが走ってやってきた。デレクは止まる様にいうと馬車から降りた。二人は少し話をして、今度こそ馬車が動き始めた。


頭を下げ手を振るデレク、その奥では小さく手を振るエリナの姿が見えた。


「お父様!!エリナ!!お気をつけて」


馬車は徐徐に小さくなっていく。その小さくなっていく馬車に精一杯に手を振った。無事家に着くことを願って。



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