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ケツ顎王子



準備が終り早々にリチャード王子の居る王家の別邸へと馬車に乗り向かった。着いた先は王族ですッッ!!と主張の激しい金色の煌びやかな建物。ここに入るのかぁとライアーは顔を歪めた。


「ようこそおいでくださいましたクレフィング伯爵、そしてライアー嬢」


頭を下げたままの王家の使用人の横を通り中に入ると、大柄なケツ顎が現れた。彼は華麗にステップを決めライアーに薔薇を一厘手渡した。


「急にお伺いしてしまい申し訳ありません」


ペコリと頭を下げるデレクはキリッとしていて普段とは大違いだ。父親の凛々しい顔に吃驚するが、それ以上に目の前の彼に驚いた。この状況が恥ずかしくないのだろうかと真顔で問いたい気分になる。


「あ、りがとうケツ……あのリチャード王子。お会いできて光栄です」


「僕も君にあえて光栄さ」


ギュッと手を握られ、ゾワゾワゾワッと背筋があわだった。馴れ馴れしすぎるとやんわり押しのけたが彼は頑なに離そうとしない。


「あの、恥ずかしいので手を……(訳:誰に許可とって手を握ってんだよ燃やすぞ)」


「恥ずかしがりやなんだね??可愛いな」


誰か、針と糸を持ってきてくれ。


リチャードの口を縫い付けたい衝動に駆られるライアーは、プルプルと震える。そんな震えすら、彼からしてみれば緊張して震えてるんだな可愛いやつめッ!!くらいの認識だろう。


彼は王族、彼は王族、危害を加える=重刑、危害を加える=重刑と何度も何度も呪文の様に脳内で唱え、イライラを沈めようと深呼吸を小さくした。


リチャード王子の噂は小耳に挟んだことがある。女関係で揉め事を数回起こされた事があるらしいと。中でも酷かったのは、彼のフィアンセだと言う女性同士の取っ組み合いの喧嘩が勃発したことだろう。止めに入った人も巻き込んで結果数名が負傷した大事件だ。


そんなやつと結婚とか嫌すぎて吐きそう。


「さぁ、こちらへ温かいハーブティを用意しているんだ」


手をいまだに握ったままのリチャードはライアーの手を引き部屋へと案内した。豪華絢爛、ライアーはシャンデリアが高い天井に飾られたの部屋に入り眉間に皺を寄せた。


デレクは基本ゴテゴテ、キラキラしたものを好まない。なので、クレフィング家はかなりシンプルな作りをしているのだ。いつも過ごしている屋敷とはまったく違う空間に、居心地の悪さを感じた。


高そうな花瓶や高そうな絵、名高い家具職人に作らせたものだとリチャードが自慢げに指先で撫でる机も、すべてがゴテゴテ、キラキラしていて目が疲れる。


家に早く帰りたいと心で吐露し、ライアーは仮面のような笑顔でリチャードの話し相手を勤めた。


話は基本聞くだけ、というより彼がずっと話し続けている。ずっと彼のターンでライアーは返事でしか声を出していない。数分ならまだしも三十分近くはさすがに堪える。


いい加減、殴って良いか??というライアーの視線にデレクはブンブンッと首をふった。


「リチャード王子、話に花が咲いているところ申し訳ありませんが、今日の所はそろそろ」


スッとリチャードに近づいたデレクに彼は「おぉ」と声を漏らした。


「……もうその様な時間か。すまないな、自分の事ばかり」


頬を小さくかいてリチャードは笑い、それを見たライアーはフフッと手で口元を隠しながら上品に笑った。


「いえ、お話が聞けて楽しゅうございました(訳:どうでもいい話を、一生喋ってるのかと思いました馬鹿王子)」


今すぐにでも「もう絶対会わない!!」と猛スピードで馬車まで走って帰りたいが、品がないとグッとこらえる。


今回は簡単な顔合わせ程度の訪問だったため滞在時間は少ない、帰れると嬉々として玄関まで向かった。

リチャードは最後の最後までライナーを「泊まっていかないか??」と引き止めたが彼女が泊まるはずもなくさっさと屋敷に帰る馬車に乗り込んだ。


パタンッとドアが閉められ、まだ外にいた王子に手を振り会釈をした。


御者が馬に合図を送り、カタカタと馬車が動き始める。ニッコリとした仮面を貼り付けていたライアーはスッと真顔に戻りデレクに顔を向けた。


「……知ってます??お父様、遠い国にはストレスを発散するために大きな筒、なんでしたっけ??……あぁ、サンドバッグというものを殴ると聞いたことがあるの。この国どころか近隣の国にもないからちょっとお父様なってくださらない??」


「馬車に乗った瞬間、無茶苦茶だよ!!父親を殴る娘が何処に居るの!?!?」


身の危険を感じたデレクは顔面蒼白で、声を荒らげるがニッコリと微笑を浮かべたライアーに口を瞬時に閉じた。


さて、あの色ボケケツ顎王子との縁談をどう阻止するか……。


馬車の中の窓から外を眺めつつライアーは、策を練り始めた。



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