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撃沈した



「私をですか??」


自分に指を刺して再度確認するが、彼から返ってきた返事は変わりないものだった。いやいやと冷静にライアーは首を振ってありえないとすべてを否定した。


彼は客間から、様子を伺っていただろう。ということは実の父親にあんな態度をとっていた事も聞かれたはずだ。エリナもライアーもそろって外面だけはいい、ゆえに狙ったわけではないが騙される男性が続出している。が、あれを見ればどの男だって興ざめするだろう。しかし、彼はまったくその様子が無い。


変人なのか??とライアーはイアルを見上げた。


「だめかな??」


「だめって、そういう訳ではないんですが」


通常モードでのらりくらりと逃げ切れないのは、彼のフワッとした雰囲気としゃべり方だろう。なんだか調子が狂っていく。ライアーは、押され気味になっている自分の現状に頭を抱えた。


「先ほどまでの父とのやり取りをお聞きになりました??」


「うんよく聞こえるね、君の声」


「自分で言うのもなんですが、私は口も性格も悪いんです。どう考えても私と、貴方は釣り合いません。釣り合うような女ではありません」


自分自身で、性格や口が悪いと豪語できる。そんな女いやだろう、品もあっておしとやかな女性が世の男性は好きなはずだ、理想の女性像とは程遠い。さぁ、無かったことにしよう円満に終わろうとライアーは笑みを浮かべた。


「そんなことは無いよ、それに僕は君がいいんだ。性格が悪かろうと、口が悪かろうと気にしない」


何で気にしないんだと、ライアーは真顔になった。彼は仏なのか??神様なのか??心が寛大すぎじゃないか??何でも受け入れますオーラが強すぎる。強敵すぎてても足も出ない。


今までは口の悪さをお見舞いすれば、相手は興ざめしたとばかりに縁談を取り消した。そのおかげで、この方法は万人に対応できると高をくくっていた。その結果がこれだ。


「僕の妃として我が国へ来てくれないか??何度でも言うよ、僕は貴女がいい」


捨てられそうな子犬のような目を向けられると、もう何もいえなくなった。今の彼は狼ではない、子犬だ。雰囲気でわかるシュンと尻尾を耳も垂らして不安げに見つめてくる彼に、「いや結婚したくないんで」と頑なに自分の意志を貫けるだろうか。


「……わかりました。その縁談、謹んでお受けいたします」


少なくとも、ライアーにはそれができなかった。完敗だと白旗を揚げた。


「本当に!?……嬉しい。君がお嫁さんになったら、きっと毎日楽しいだろうな」


ふふっと笑って見せる彼の周りに一気に花が咲いた。錯覚か、いや触れそうなほどにくっきり見える。その花を凝視しつつ、コホンッと咳払いをした。


「あの、とりあえずその花をしまってもらえますか。あとそのフワフワオーラも」


彼のフンワリ穏やかそうな喋り方と雰囲気は和む、すごく和む。が、一方的だが負けて悔しいので和みたい気分ではない。ふて腐れてなんていない決して。


「オーラ??花??」


小首を傾げキョトンとするイアル。彼はムキムキマッチョというわけではないが、しっかりとした体格をしている。そんな彼が小首をかしげる仕草をしている。可愛いはすが無い、可愛いはずが……と脳内で長々と語っていたライアーはイアルを見上げて机をたたいた。


「いや、可愛いかよッッ!!」


誰だ小首を傾げても可愛くないっていったやつは!!私か!!と脳内でツッコミを入れつつライアーは撃沈した。


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