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それはそれは美しい



「いいですかお父様、別にあの二人が結婚しようが、破談どうしようが正直私は興味ないですし。あんなケツ顎欲しけりゃくれてやりますよ!!」


怒りで普段以上にスラスラと言葉を並べるライアーに、おぉっとデレクはたじろいだ。言いたい事は山ほどあるが、なによりあの男が妹に取られメソメソしていると思われるの(しゃく)にさわる。


「ライアー君の気持ちは良くわかった。気を取り直して次の縁談だ」


パンッと手をたたき話を買えたデレクだったが、ライアーは鬼のような形相で彼をにらみあげた。彼女がここにやってきた理由がそれだったからだ。


「そうですその話をしに来たんです。どういうおつもりなんですか??お父様ったら、暗殺者じゃなくて私に命を狙われたいんですか??」


ライアーはデレクの胸倉を掴むと、満面の顔を近づけた。


「愛娘に命駆る宣言された。怖い」


今にもどこからか短剣が飛び出してきそうな娘の威圧感に父としての威厳なんてものはなくただガクガクと震えた。


「いいんです私はこの家で干乾びますから、お気にせず」


「ぜんぜん良くないんですねど!!!!」


この家で結婚もせず生涯過ごすと言う娘の発言に、ダメダメッとデレクは頭を全力で振った。


バンバンッと机をたたきライアーは講義するが、父親として娘に幸せになってほしいと切に願うデレクもそう簡単に引けないのだ。


デレクは愛した人との間に生まれた二人の娘を溺愛している。本心は口が裂けてもいえないが、嫁になど本当はやりたくない。目に入れても痛くないほど可愛い娘たちなのだから。


それでも父親の役目はこれなのだと、例え嫌われようともこれが役目なのだと無理に笑った。


「先方も良い方でね。きっと、君も気に入るよ」


口角が上がり、明るい声のトーンでデレクは話すがどこか悲しさが見え隠れしていた。それを感じ取ったライアーの怒りの炎は、鎮火され静まった。


「……わかりました。お会いいたします」


渋々といった様子で頷くライアーに、デレクは良かったとホッとため息をついた。


「実はもう来てもらってるんだ」


「は??」


えらく低い声が出たとライアー自身驚きつつも、無の表情でデレクの顔を見上げる。自分に向けられる深い深い闇のような彼女の瞳に、デレクは命の危機を再び感じ、生まれたての子鹿のように震えた。


クスクスとライアーは意味深に笑った。


「こう見えて売られた喧嘩は買うんです私」


「こう見えて??まんまそうじゃ……すいませんでした」


満面の笑みで首をかしげるライアーの威圧に、デレクは視線をそらした。しかし、逃れることなどできなかった。どこを向いても彼女の顔がある。しばらく続いた攻防戦、戦慄の時間に耐え切れなかったデレクは叫んだ。


「いいよ入ってきて!!娘を紹介します!!」


どうやら縁談相手を客間に待機させていたようだ。客間はデレクの部屋を経由した先にある。ガチャリとドアノブが回る音がし、チッとライアーは小さく舌打ちをして振り返った。


部屋から出てきたのは、美しい銀色の毛に、切れ長な目のそれはそれは美しい。




大型犬だった。




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