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いきなりバディ学園!  作者: らいず
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 剣士は、束の間の平穏を過ごしていた。

「それで昨日、マジであったま来てさー」

「いつも言ってっけど、ゲームでしょ?」

「あー価値観が古い古いっ。おばさんかなー」

「はー??」

「飽きないねお前ら」

「………」

 特になんでもない、一つのグループで交わされている会話。その中で、剣士はただ黙って笑顔のまま座っていた。

(いいね。こういう距離感って大事だよやっぱり。なんだかんだで、一年以上になるしね)

 クラス替えが無かった影響で、そのまま変わりない日々を送れる。本来は、こうした日常が続くはずだった。

(そもそも、よくわからない部分が増えてるんだよね。始業式早々に言われた内容からすると、要は社会で上手くやっていく力を身に付けて行く為のバディ制度。それなら、俺みたいに上手い事コミュニティに入って、適当に結果を上げられるならそれで良いはずなのに。何が悪いって言うんだか)

 突如導入された新制度のせいで、いらぬ労力を強いられる日々が続いていた剣士であったが、ここ数日は花子との絡みが随分と減り、平和な日々を送っていた。

「平城はどう思うよ?」

「んー…。どっちもそれぞれ良いんじゃないかな。仲良く行こうよ」

「ほら平城もこう言ってるだろ? 人が全力で取り組んでるものを、馬鹿にしちゃいかんぜ」

「いや、そんなこと言ってないっしょ」

(ほら、こうやってたまに受け答えだけすれば充分。このままずるずると、何も無い日々が長引いて欲しいね)

 結局剣士にとって、花子とのあれこれは煩わしいものでしか…。

(でも、何だろうね。どうにも落ち着かないのは…)

 そんな自分の胸中の違和感に、苛立ちを感じている時だった。

「そうじゃないの…っ!」

 クラスの注目が集まる。彼女が注目を集めるのは、もう何度目になるだろうか。そこには花子と、数金、八社宮の姿があった。

(まったく…何やってるんだろうね)

 他のクラスメイトに紛れて、剣士はそんな彼女に視線を向けた。

「皆どうして…! どうしてそんなに普通に話しかけてくるの?」

「いやいや、普通に話しかけるのは普通でしょ」

 そんな少々頭の悪い言い数金の回しも、今は間違っていない。

「でもあたしは普通じゃないわ! 皆を恐怖で支配しようとして!」

「えっ」

(わあ…)

「自分の身勝手で、皆を遠ざけてた!」

「それはそうかもだけど」

「別にそれくらい誰でもやるって花子」

「私はお前が気に入らねえ! みたいなね」

「…? え、え?」

 ここへ来てようやく、花子は気付いた。

 あまりに…。あまりに違う、自分と周りの空気に。

 何か、自分は根本的に勘違いをしているのではないのか…?

「…っ。剣!!」

「…はい?」

 その渦中に、剣士は一瞬で巻き込まれた。

(いやいやいやいやいや)

「平城ーがんばれー」

(こいつら面白がりやがって…)

「剣なら…剣なら知ってるんでしょ? どう言う事なの? お願い教えて」

「おー…」

「感動のワンシーン…かな?」

「い、いやあのさ」

「もう、あたし罪悪感に耐えられないのよ!」

「…!」

 ここで今度は、クラスの皆が気付く番だった。この状況が、思いのほか花子を追い詰めていた事に。

「平城…」

「答えてやれよ」

「平城君…」

 急激に、しっとりとした雰囲気へと変わる教室内。

 その中心には自分。

 剣士は、即行動が今はベストなのだと悟った。

「…花、あのね」

「…うん」

 覚悟を決めた眼差しで見つめる花子。それは感動のワンシーンのようで…。

「最初から、誰も怖がってはいないんだよ」

「…うん?」

 当然ながら、そうではなかった。

「ど、どういう事!?」

「いやうん、花ちゃんさ…うん」

「まあ…平城?」

(これ、俺が続けなきゃ駄目なのかな。というかこんな一大イベントみたいな状況で続けなきゃ駄目なのかな…)

「え、え…?」

「あー…うん。確かにみんな避けては居たよ? でもそれは、恐怖に怯えてたとかそういうのじゃなくてね…」

「とりあえず引いてただけ」

 スパリと。剣士が言いあぐねているところに、珍しく長谷部が、騒ぎに口を挟んでいた。

(なんで知らないけどナイス! 俺はこれでも穏健派で通ってるからね」

「そ、それってつまり怖かったんじゃ…」

「あー…すが、ここはスパッとどうぞ」

「ずばり、花はぽんこつが表出てるから」

「……え」

 教室内がシンと静まり返る。しかし凍ったというよりは、空気が呆けていた。

「いやー最初は確かにね? 私達の中においてもクレイジーな奴来たかと思ったよ?」

「だからあんたはもうちょっと言い方をさ…」

「スパッとって言ったじゃん!」

「それはもう終わったでしょ」

「えー!」

「ま、待ってよ! 剣これどう言う事!?」

(どうしてまた俺に戻す?)

「ねえ、剣もわかってるんでしょ? ねえ!」

「………」

(あー…もういっそ)

「あーほら、花子さ? つまり…私達から見れば、こう…。ちっちゃい子が頑張ってる程度にしか見えてなかったんだよ」

 全てがどうでもよくなりかけたところで、八社宮の声に助けられた。

(…危ないまただ。どうしてこんな)

「え、え? ええええええええええ!?」

「野村さーんそう言う事だから気にしないでねー」

「大丈夫大丈夫。うちらもどっかかしら変だから」

「こらこら、それは言わないお約束でしょー」

「まあそういうのすぐ教えなかった私らにもさ――」

 こうして転校初日から、随分と日を空けて…。ようやく花子は、それらしくクラスに馴染む事になった。

「剣! ねえ剣!」

 女子達の輪の中から、花子が呼びかける。

(…だからなんで俺を巻き込)

「あたしこれでやっと、もやもやが晴れたと思うわ…。これでバディの方に集中できるわね!」

「……………」

 結局のところ、剣士が落ち着きを得る為には…。それを決着させる必要があるようだった。


 しかしこの二人の問題は、まだ根本的な部分が解決してはいなかったのだ。

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