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教室での雑談。大抵は、いつも決まったメンバーで集まり、そのグループが変動する事は無い。独立したコミュニティだ。
それでも、変わる時は変わる。このクラスでも、先日から一つのグループに変化があった。
「いやーそれにしてもこれでもかって金髪だよね」
「ま、まあね」
「染めてるんだよね? それにしては大して痛んでないって言うか」
「ま、まあね…」
「んー…。でも黒髪の方が似合いそうだよね花ちゃん」
「ま、まあ…えっ」
「こらすがー。私とは違うんだから、少しは気を遣えっての」
「えー」
「い、いいのいいの! 平気だから…うん、平気なのよね…」
花子はすっかり、数金と八社宮の二人と一緒に居る事が多くなっていた。その姿はまるで借りてきた猫のようで、転入初日のキャラはすっかり薄れてしまっている。
(どうして…こんなに……。気になってしょうがないわ)
花子はずっと考えていた。どうしてこんなに、普通に話しかけてきてくれるのか。数金達二人だけなら、まだ納得も出来た。
「野村さーん」
「っ! な、何?」
しかし彼女達と一緒に居るようになってからと言うものの、花子は他のクラスメイトからも、普通に声をかけられるようになっていた。何かしらの用事でクラスメイトに声をかける事など、ごくごく当たり前ではある。しかし花子にとっては、いつ振りかわからないほどの珍しい事だった。それはこの学園に来てからも同じ。また何か、傷つく事を言われるかもしれない。それを回避する為に、自分がずっと周りを怖がらせ続けていた。身勝手な事をしていた。その後ろめたさがある花子は、話しかけられる度に萎縮してしまっていた。そしてわからなかった。どうしてこんなに、なんでも無い様子で話しかけてくるのか。確かに数金達と一緒に居るようになったとはいえ、自分はあれだけ滅茶苦茶な事をしていたのに、怖くはないのか。
そうして用事が終われば、周りには今も数金達二人が居る。
(納得できない。わからないから…今はそれがちょっと怖い)
真意を測りかねて、逆に花子の方が警戒してしまっていた。
「えーそんなの変だってー」
「あんたも結構ずれてるって自覚しなよー?」
「えーっ!」
(それにどうして…。どうしてこんなに…)
「大丈夫大丈夫! ねー花ー!」
「うっ、ふっ、う゛っ」
バシバシと、数金が花子の背中を叩いて笑う。
(なんで―――!?)
「どうして…」
「ん、どしたの?」
「ああ花子ごめんな? すがも悪気は一切無いんだ。だから許してやって欲しいんだけど…」
「…そうじゃないの」
「あ、あれ…? ほ、ほんとにごめんね? ノリだよ? ノリ」
「そうじゃないの…っ!」
それは、いつかの叫びほど大声ではなかったが…。教室内の注目を集めるには十分だった。




